第三話 九七式"要塞級"戦車
遅くなりました。投下します。
23時00分
「で、なんで俺はまた呼ばれたんだ?」
吉男が中田に尋ねる。
「大隊長、あんたは昔、戦車兵だったそうじゃないか」
「確かにそうだ」
吉男が肯定する。
「戦車を改造するなら、戦車に乗っていた人物の助言があれば助かると思ったからな」
「なら俺じゃなくて、田中とかいるだろ」
「やっぱり、歴戦の兵士に助言を貰いたいんでね」
「はあ、でどうなってるんだ?」
「順調だ。ほぼ終わっている。2両だけ試験的に超巨大化させたけどな」
中田は、2両だけ超巨大化させたと言った。
「巨大化させるのはいいが、大丈夫なのか?履帯とか」
「大丈夫だ、そっちは反重力装置を搭載し、履帯への負荷を少なくして、尚且つ、短時間浮くようにした。
整備が少し難しくなるだろうが、私もいる。大丈夫だろう」
「で、その巨大化させたウチの九七式はどこだ?」
「すぐそこにあるさ。ほら、目の前に」
「なんだこれ…巫山戯てるのか?」
目の前にあった壁が、戦車と分かると、吉男は戸惑いを隠せなかった。
「ちょっと巨大化し過ぎて、移動要塞と化してしまったがな」
その戦車はナチスで計画されていた、P1000ラーテより遥かに大きく、正しく移動要塞だった。
全長約:200m(砲身先まで)
車体長:170m
全幅:50m
全高:60m
武装:八九式四十七糎電磁投射砲
副武装:三十五糎機関砲×2
一式十糎対空砲×6
三八式十五糎砲×20
四十七粍電磁投射機関砲×50
パルスキャノン×150
好戦的な魔物相手には、明らかにオーバーな武装であるが、日本列島の外の国の人間がどんな武器や技術を持っているか不明な為、これぐらいにしないと生き残れないのである。
「これ…車内どうなってるんだ?」
「車内は生活に必要な物は揃ってる。
あと、車体下部は車庫になってて、他の戦車とか入るぞ」
「戦車なんだけどなあ…」
「まあ、コイツはチガとでも呼んでくれ。
正式名称は九七式要塞級戦車。分類上は、移動要塞。正確に言うと、要塞級戦車だ」
「それはいいとして、二両有るって言ったよな?二両目はどこだ?」
「二両目は、すぐ近くにいるぞ。ほら、そこの岩。アレ、チガ」
九七式要塞級戦車チガが岩に擬態していた。
「擬態する機能でも付いてるのか?にしてもあのチガ、なんか違くないか?」
岩に擬態していた、チガは砲塔周りに、戦闘機の様な物が見えた。
「ああ、あのチガは二型。車体に航空甲板を付けてみたんだ。搭載してるのは、汎用対地攻撃機栄天と、輸送ヘリ梨架。誰でも操縦できるように工夫してあるから、歩兵でも普通に運用できるぞ」
汎用対地攻撃機 栄天。
ジェットエンジンを二基搭載しているが、あまり速度は出ない為、操縦が簡単である。
「航空甲板を付けても、武装は変わってないから、上からの攻撃に注意すればいいだけだ。
寧ろ、航空甲板を付けたことで、汎用性が上がって、遠くの敵も簡単に倒せるはずだ。
だが、航空甲板と、格納庫を足した分、車内が狭くなっているがな」
「いや、戦闘員が入れるだけで十分だ。
我々は後30分程で、この屋敷を出発するつもりだ。お前も準備しとけ」
「分かった」
中田は、九七式中戦車チハ改の最終チェックをし、吉男と共に屋敷に戻った。
23時30分
「諸君、中田による、チハの改装が終わった。
これより、探索を再開する。
我々が6時間以上、この屋敷で過ごしていた為、日本列島は以前より格段に大きくなっているだろう。だが、まだ元の世界の物よりは小さいであろう。我々は元の世界の大きさになる前に、探索を終える必要がある。
時間が無い。急がなければならない。
この先、十分に休息が取れないだろうが、あの過酷な戦闘を生き抜いた諸君ならば、耐えられるはずだ。進め、兵士達よ!進め、鋼鉄の怪物よ!」
吉男が号令をかけ、兵士達が雄叫びを挙げる。
「なあ、あんた達って何時もこうなのか?」
中田が大隊本部の吉男達に話しかける。
「まあ、大体何時もこうだな」
「この大隊と一緒に行動するなら、慣れないといけませんよ。私だって、初めはうるさくて敵わなかったですから」
3人がそんな事を話していると、後ろで達夫と光一が話し合っていた。
「なあ、なんで俺達、こんなクソデカい戦車に乗ってるんだ?」
「安全だし、雨風を凌げるし、歩くより若干速いからだろ。それに、運転だけなら1人でも出来るから、その間に他の奴は休めるからな」
達夫が返事をする。
「じゃあ、なんで俺達本部の一部の奴は寝れないんだ?」
「質問があるんなら吉男に直接聞けばいいじゃないか」
「そうか…分かった。聞いてみるぜ」
光一が吉男の近くに行く。
「なあなあ、大隊長。なんで俺達本部の一部の奴は寝れないんだ?」
「光一か。理由はな、大隊本部の腕利きが起きていた方が、襲撃された時に都合が良いからな。俺は大隊長という立場上、どっちにしろ寝れないんだけどな」
「いや寝ろよ。大隊長だからこそ寝ろよ。判断力鈍るぞ」
「俺は夜行性だから寝れないんだよ。寝たいけど寝れねえんだよ」
「レーダーに感アリ!数1!時速150キロで接近中!」
レーダー観測員が、接近中の物体を発見し、報告する。
「総員、対空戦闘用意!敵数1!時速150キロで接近中!敵は一機だ!だが、油断するなよ!未確認機の正体が敵だったら撃て!」
放送を入れ、対空戦闘に備える。
「田中、主砲の準備はいいか?」
「何時でも行けますけど、まさかあの未確認機に当てるつもりじゃないでしょうね?」
「準備はしておけ。奴らが航空機以外の何かだった場合、すぐに撃て」
「隊長、未確認機の姿を見てきます」
「頼んだ」
拓夢が見た物は、浮遊する巨大な要塞だった。
それはチガの様な、移動要塞の様な物ではなく、正しく要塞だった。
「隊長!未確認機の正体は浮遊要塞です!」
「何?交信はできるか?」
「分かりませんが…やってみましょう」
拓夢はチガの上で手を振る。
浮遊要塞は、それを見て友好的な者だと判断して、高度を下げる。
「そこの移動要塞!聞こえているなら、砲身を向けるのを辞め、何らかの手段で交信してくれ!」
浮遊要塞は、敵対の意思はないようだった。
「隊長、どうしますか?」
「ここでやり合ってもなんの利益もない。ここは、通信を入れてみよう」
拓夢は無線機を取り出し、様々な周波数で語りかけた。
「こちら、大日本帝国陸軍、106大隊長。吉男である。浮遊要塞、聞こえているなら通信をしてくれ」
「こちら、古代兵器アルテディア。106大隊、聞こえている。これより其方に乗り込む。準備をしてくれ」
浮遊要塞、アルテディアは無線で、乗り込むと言った。
セリフに改行を加えている所が、多々ありますが、意見次第で前と同じになります。
九七式要塞級戦車って英語にすると、Type 97 Fortress Class Tankになるんですよね。
だからなんだって話なんですけど、ちょっと格好良くないですか?
チガと栄天の詳しい性能と設定は何時もの設定で書きます。次いでに、ほぼ空気だった九七式中戦車チハ改も設定で書きます。輸送ヘリ梨架は要望があれば書きます。
追記:四十七粍電磁投射機関砲を50門に変更。
追記2:チハに重機関銃(7.7mm)が付いてたのを思い出したので、三十五糎機関砲を追加。