07 ミエード開放
さて、今日も今日とていい天気・・・
って土砂降りなんですけど?
こんな中で作戦決行とかモチベ上がんないな~
寝付けたのはいいが熟睡できなかったのか
早朝に目が冷めた俺は外の音で雨だと理解した。
恵みの雨
雨雲を晴らすこともできる俺が、領民を困らせるわけにも行くまい?
そういえば・・・田畑ってどこかにあるのかな?
見て回った限り見当たらなかったけど
まぁいい。領主の仕事は領主になってから考える。
今からあれこれ悩んだ所で今日どこかでミスをすれば台無しになる可能性も高い。
「早くから目覚めていらっしゃいますのね?」
セリナはいつも早起きのようだ。
「雨だからね~どうしたものかと思ってさ」
なるようになるって結論だけど。
「雨の日なら好都合ではございませんの?
普通王宮や城貴族の邸宅に至るまで
緊急時には抜け道を作っているものですのよ?」
そうなの!?
「ですが、雨に寄って水かさが増した状況で水路などを歩けるわけでもございませんから
楽になったとお考えになられたほうがよろしいですわ」
なるほど。でも、そんな事はありえない。
「デスタが絶対に逃さないからそんな事は問題じゃないよ」
??と首をかしげるセリナ
と、後ろから殺気が
「何でコルタ君がスパイと楽しげにお話してるのかな~?」
ベッドで抱きしめてって言われて抱きまくら状態で寝ることがどんなに大変だったことか。
ドキドキして寝られるかっ!
そんな事はゴミ箱にポイのマリンであった。
「マリンちゃん?俺、昨日、マリンちゃんのベッドで一緒に寝たよね?
それなのに、話してただけで怒られるってショックすぎるよ?」
「あっ!ごめん、そうじゃないの
コルタ君は私とお話する義務があるの!
スパイが抜け駆けするのは良くないからコルタ君のせいじゃないよ?」
必死に弁解するけど要約するとセリナが話してる事自体が悪い、セリナは悪者だってことか。
あまり深入りするべきじゃないな。
朝食にするか
実は時間停止には欠点がある。
雨の日には使えない。
時間を止めることで雨も止まる。
止まった雨は存在がそこに固定になっているわけだから
動かないし自分も雨に囲まれては動けない。
雨を消すことはできる。(神の力)
すり抜けることは出来ない。
同時に神の力を使うことでものすごく疲れるのだ。
42人と外でとなると、勇者の力(デスタの一撃で死ぬレベル)で戦うしか無い。
「作戦の変更を伝える」
「ハリス、魔法の同時操作は可能か?」
「もちろんです。」
「ならいい、とりあえず、セリナの姿を隠しながら、42人全員を目隠し状態にしておけ。
分かるな?暗闇を目にまとわりつかせるだけでいい。
その間に捕縛しろ。」
「わかりました。」
ってことで、俺は戦闘することもなくただ降伏勧告をするだけの役割になった。
神様なのに不要な感じ・・・不要
デスタのトラウマが蘇るわっ!
では、作戦開始、城に向かうぞ
城には当然門番がいる。
「何の御用で?」
態度が悪い。ごろつきみたいな感じ。
全てがムカつく門番だ。
「ハゼル王より信書を預かっている。
領主殿に直接手渡せという勅命を受けている。
領主殿に会わせてもらおう」
勢いで言ったもの勝ち
門番はすぐに呼んでまいりますと城の中に消えたが勝手に入っていく。
既にここは俺の城だしな。
眠そうに出てきた領主は俺に向かって
「このような時間に呼び出すとは何事かね?
仮にも王族のこの私に向かっていい度胸をしているな。
王の名であっても先触れくらい出すのが常識だろう?」
あ~先触れとか人を支える余裕ないわ。
ってか、呼んでくるって言った門番無視して入り込んでるのに余裕だな。
「そんなことより領主様?
ハゼル王からお聞きしたところによると何やら面白い遊びをしているようですね。
街の出入りに税を取り、領民に重税を課して奴隷にしたり侍らしたり。
ハゼル王から領主追放の命を受けてきましたが、生死不問だと言われましたが?」
真っ青になる領主と憎しみの目で見る領主の娘セリナ
「そんなでまかせを
ハゼル王は耄碌したと見えるな?
私を貶めようとその様な策を弄したか!
近衛隊! この者を今すぐ処刑せよ!」
「少々お待ちを
ハリス、セリナの魔法解除だ。」
「かしこまりました」
すると俺の後ろからセリナが父に向かって一歩進む。
「お父様。貴方を私はお父様と認めません。
勇者コルタ様の仰る通り、祖父は既に貴方を処罰しろと命令を下しました。
王族に弓引くものは反逆罪ですが、その男はもはや父でも王族でもありません!
それでも立ち向かうなら、勇者様が薙ぎ払うことになるでしょう」
慈悲もなにもない。悪党となった父に
気丈に言い放ったその姿はまさしく王族なのだろう。
それでも、引き下がらない者はいる。
「悪いんですがねー王女様?
こんな楽しい仕事は他のどこにもないんだわ
王族殺し? 構いやしない。
お前ら!俺に続け~」
こういう展開なの?
時間停止無しで剣を振ったら真っ二つって感じに設定しよう。
そして剣を振るう
当たるはずもない空振りが
遠くの敵を両断した。
ピタっと動きを止める近衛団と領主
弱肉強食。
弱いものは強い者の前にひれ伏すことしか出来ない。
飛びかかった数名は息絶えている。
「この場から逃げるものは容赦なく処刑することになっているので動かないように」
俺の声が響き渡る。
「さて、領主様?
貴方はこれからどうします?」
「た・助けてください。
何でもしますから」
ほほ~う
「何でもということは地下牢にある白骨死体のように
飲まず食わずで白骨化をご所望ですか?
それならいいでしょう」
「いや!そうではなく」
「デスタ、元領主を地下牢へ」
「かしこまりました。」
残ったのは盗賊団?
近衛団だっけ?
「残ったものは全員ハゼルで証言していただきましょうか。
ミエードで面倒を見る気もありませんし、住民に恨まれていることでしょうね?
殺されないだけマシだろ?」
ガクリとうなだれる近衛団
無事に城の占拠と領主の処分、近衛団の処分が決定した。
作戦は、門番に止められた時用だったので
それも不要で無血開城とはいかなかったが馬鹿3名を絶命させただけでこの場は収拾がついた。
玉座に座る趣味はないので宴会用なのかな?円卓に5名だけで座り
「今後のことなんだけど、ハリスはセリナが書く手紙を持ってハゼルへ行け
近衛団とかいう連中を忘れずに連れていけよ?」
「わかりました」
「セリナは手紙を書いてくれ。
王家への手紙の書き方などわからんし、見たままを書いてくれればいい。それと、領内への御触書も頼む」
「わかりましたわ」
「マインは俺と買い物だな?」
「え?本当に? いいの?」
断る理由なんてありません。
「で、デスタ、お前に最重要任務を与える」
「はっ!光栄でございます」
「スラムの人や家や食料で困っている人をミエードの街全域から王城に集めろ
老若男女は問わん
食料庫から食料を与えて困りごとを解決してやれ。
その後でミエード領内全域から困っている人をギルタの街に移動させろ。
馬車台は俺が持つ」
「かしこまりました。」
当面の予定はこんな感じでいいだろう。
今考えていることは2つある。
知恵の実を食べて楽園を追放されたのは
知恵をつけられて自分より上に立たれることを恐れる恐怖心だ。
そんな些事に拘って領土発展と運営はうまくいかない。
当面は俺とセリアでまとめるがそこからは勝手に回せるようになっていくだろう。
次に税金問題だ。
はっきり断言しよう
税金は撤廃する。
ハゼル王には特産品でも作って渡すことにしよう。
そして税金で兵力増強をしなくても
こちらには魔族と神がいる。
攻めてくれば痛い目にあうぞと思わせれば攻める気もなくす。
学校では勉学、魔法、剣技の全てを教えるつもりである。
学校教育の一環として農作物の管理もさせる。
富国強兵だな。
問題なのはやる気のない大人たちだが・・・
頑張れば自分の金が増える上に税金支払が免除される。
やればやるだけ自分の金になるならやる気も起きるだろう。
出入り自由の街にすれば
楽市楽座のようなもので入国希望者も増える。
最終的にはハゼル王の国民と領土が広がるわけだから
信用もされることだろう。
「そういえば・・・セリア。
ミエード地方ってどのくらいの領土があるの?」
「特に決まっておりませんわ?
ハゼル王都との国境のギルタまでがミエードで
そこからミエードまでの距離をぐるっと円で書いたような領土になりますわね」
アバウトすぎた。
兎にも角にもミエード地方で貧困者が出ることは許さない。
俺はこれから領民に感謝の気持ちを売って
見返りに街が発展すれば数年後には大きな街になるだろう。
セリアは領主代行として街にお触れを出した。
1,領主が勇者コルタ様に変わったこと
2,税金の免除
3,街の出入りが自由で無料になったこと
4,これまでの領主は数々の問題を起こし、領民の皆様へ負担をかけたことへの謝罪
この4つとなった。
今度は時間を巻き戻したりしなくても世界が平和になればいいな~
そう思うコルタはマインに買い物につきあわされてへとへとになっていた。
お触れで歓喜した領民が大安売りをしていたからだ。
流石に疲れたよ~