14 恋愛事情が発展しないコルタパーティー
ずっと思ってました。
この話って会話があまりないよな~と
会話し放題の回を作りたいな~と
そうして今回のお話に結びつけました。
人間関係が明確にわかるように
会話に力関係をほのめかすような言葉を入れてあります。
ある日王から書状が届いた。
ミエード領主コルタの貢献に対し
両親を王都に呼び、貴族としての地位を与えたと。
この書状を握りつぶして炎魔法で消し炭にした俺の気持ちがわかるか?
勇者の血族だからとまともな装備も渡さず死にに行けと送り出したバカ親父に対する
この俺の怒りが!!
そして領主邸で集まって会議が行われた。
「お祖父様はおそらくコルタ様に対しての人質として
コルタ様のご両親を貴族に祭り上げて功績をたたえ
そうすることによって貴族達がコルタ様に接近することを封じようとしたのですわ。
なにせ。王都には貴族であり、コルタ様の親族がいらっしゃるのだから
攻められるはずがないと。
我がお祖父様ながら今回は大変申し訳ございませんでした。」
俺の意見は少し違う。
俺の両親を矢面に立たせることで王は自分の下に俺がいることを喧伝したいのだろう。
人質の価値がなくても一度した宣言は取り消すこともできない。
政治とはそういうものだ。
「なによそれ~
コルタ君のお父さんとお母さんは私からしたら近所のおじさんおばさんで
無視できないし王様がそんな事していいわけ?」
とセリナを睨むマイン
「それにしても人間はややこしい謀が好きですな~
魔物はこの力が全てだからシンプルでいいですぞ?」
「その割に戦闘を私に任せるために全魔力を注いでおりませんでしたか?
それも謀と言えませんかね?」
ハリスに続けてデスタが皮肉で返す。
「いや、別にさ?うちの家族がどうなろうと別にいいんだけどさ?
とりあえず会う度にいがみ合うの止めないか?お前等」
伝統として剣術学院と魔法学院は仲が悪い。
俺が間に入って仲裁してもくすぶっていてしょっちゅう揉めている。
それもこれもハリスとデスタの教育の賜である。
「それで俺にどうしろって言ってきてるの?」
手紙をセリナに渡す。
「いえ・・・私にもわかりませんわ」
結果どうしろとか書かれてない書状にどうすべきかを悩んでいたから
ここに集めた結果
やたらと喧嘩が始まる始末。
「あなたそれでも王女様なわけ~?
おじいさんが送ってきた手紙の内容わからないとかプププ」
挑発するマイン
「ではマインさんにはおわかりになるんですの?」
反論するセリナ
「放っておいて良いでしょうな。
どうせ何かしようとしてもうちの優秀な魔道士たちが相手になりますのでな」
「線の細いへなちょこが私の鍛えた弟子たちに魔法であれ剣であれ
当てられるものでもないでしょう」
「いや、だからな・・・喧嘩すんなよお前ら」
といって少し思った。
色恋沙汰が根幹に有るマインとセリナの喧嘩は犬も食わない。
しかし、剣術と魔法でどちらが優れているかは模擬戦をすればわかるんじゃないかと
「とりあえず、書状については置いておくけどお前らの喧嘩については
ちょっと解決法を思いついたんだけどさ~?」
ニヤついた表情に思うところがあったのかマインちゃんはブルッと一瞬震えた。
「今度の日曜日に決闘させようと思う。
剣術学院のトップ5と魔法学院のトップ5で模擬戦をさせる。
その時に興行にして客に賭けさせて集客を増やして
その中で決闘するんだ。
負けたら超かっこ悪いから覚悟しとけよ?」
ハリスとデスタが燃え上がった。
あのような解決策を思いつかれるなんて
さっすがコルタくん面白かっこいいね
二人の恋心も燃え上がった。
現在世界最強の経済都市ミエードでは
文武両道の猛者が各国の精鋭10人程度なら軽く捻れる強さを誇っている。
経済、学問、武道全てを兼ね備えた最先端都市であり
先の戦争における回収物から科学技術までもが抜きん出ている。
そんな都市の興行を行うのだから世界各国から見物客が集まるだろうと踏んだ。
4日後当日に各国から書状が届いた。
しかも一斉に
うちの精鋭も参加させてほしいという言葉と
期日を一月伸ばしてほしいというのが共通して書かれていた。
祭り好きなのかとも思ったが、戦争以外に娯楽と呼べるものの少ないこの世界では
こういうことで盛り上がりたいのだろう。
一ヶ月が与えられコロセウムの設計はセリナに任せた。
人力についてはマインがひと声かけただけで通常の何十倍もの力を発揮して
人力でバカでかい石の塊を運んでいた。
ピラミッドも作れそうだ。
こういうのをギルドが仕切ってるあたり
シード達アホ連中が張り切っていることだけはわかる。
そんなわけで
ミエード剣術学院生5名
サントス
ミルラ
ケークス
タスカ
ヒート
魔法学院生5名
ハミード
キース
メックス
タケミ
カーク
指揮官はサントスとハミードが行うようだ。
各国は国の威信を賭けて最精鋭を連れてきたようだった。
試合は総当たり戦で行われた。
第1試合は剣術学院対魔法学院
ハミードが
「速度重視!範囲魔法を味方に注意しながら撃ちつつ間合いに入るな!」
と檄を飛ばす。
身体強化魔法を用いてスピードが少しアップするが
剣術学院生のスピードの方が早い。
サントスは
「範囲魔法は良ければ気にする必要はない!
剣風で術者をはじき飛ばせ!」
魔法が飛び交いながら爆音の中でも聞き取れる覇気のある声が響く
剣術学院生は速度で味方と連携を取りつつ敵の範囲魔法を味方に当てないよう注意して動き回る。
魔法学院生は風の術を操り剣術学院生を押し戻す。
常に向かい風に曝されながら走り続ける剣術学院生の体力も
常に魔法を発動し続ける魔法学院生の潜在魔力量も尋常ではなかった。
「どうやら俺等のほうが有利のようですな~」
ハリスがニヤける。
「そんなやわな鍛え方はしておりません」
デスタが反論する。
「なぁ、ハミード! 次で終わりにしないか?」
「いいだろう。後悔するなよ?」
とサントスが答える。
「全員魔力全開で爆炎魔法用意」
「全員密集隊形で一点突破する」
剣術学院が集まり魔法学院は魔力をチャージする。
「全力放射~!」
「突撃~!」
両者がぶつかり合う。
決着は一瞬だった。
一陣の風のように駆けた剣術学院は一筋の光を率いるように
巨大な炎の魔法にぶつかり
そして剣が折れた。
魔法が消滅した。
「そこまで!
両者引き分けとして次の戦いに備えよ!」
俺の声が響き渡った。
魔力が尽きた魔法学院生が肉体言語で剣術学院にはかなわない
しかし、剣士の魂をおられた剣術学院生は敗北と同義だ。
見どころのある試合はこの試合だけだった。
ここから、両学院生チームの全勝1引き分けで両学院の優勝が決まった。
「剣が脆いのは剣術でカバーできませんからね」
隠れた言葉は剣さえ良ければ勝っていただ。
「魔法のバリエーションをもっと有効活用する方法はあるのじゃがの
これは教師陣を鍛えねばなりませんな」
戦術が劣っていたという。
二人の言葉を聞いた各国は震え上がっていたが
最も恐怖していたのは鍛冶屋と教師陣だったという。
結局なかなかやるではないかとお互いの健闘をたたえて両者の同時優勝を
学院生だけが喜びあった。
青ざめた各国はこぞって一緒に感染させていた姫やら娘やらを俺に押し付けようとしたが
領主様とお話が有る方はこちらで伺いますと
受付をしていたセリナとマインが氏名と年齢などを確認してコルタ様にお伝えしておきますと
何かに書き記していた。
そちらは俺が関わるべきではないと本能が警鐘を鳴らしていたので見なかったことにする。
後夜祭で各国精鋭は暗く沈んでいたらしいが
学院生たちは大盛りあがりだった。
両校ともに実は戦術に関して知り合いの大学生に考えてもらっていたらしい。
ふと思う。
こういう結末を予想してセリナが仕組んだのではないかと。
そして巨大魔法で圧倒的魔法力と圧倒的突進力を
各国に見せつけるのが目的でうまく利用したような気がしないでもない。
どちらにせよ結果オーライだ。
各国から更にミエードへの移住者が増えることだろう。
今度フレイムに適当な土地を更地にしてもらって
農耕地を拡大させないといけなくなりそうだ。
またどこぞの神の持つ惑星から侵攻を受けてもいいように
兵器開発やその技術の日常に役立てる研究も進んでいる。
鋼の加工やガラス細工など徐々に経済的侵略を行っているが
実効支配するつもりはサラサラない。
これでハリスとデスタが協力し始めてくれればな~と思う俺だった。
デスタはセリナを訪ねていた。
「どうやら掌の上で踊らされたようですね?
少し不愉快ですよ。」
コルタと同じ結論に至ったであろうデスタは直球で問い詰めた。
「そんなことはしておりませんわ?
コルタ様が喧嘩を仲裁と作られた場で
どちらかが勝てばどうなるかお分かりでしょう?
ですから私もお互いが共倒れになるように学院生に策を求められた場合
このような策をと先に伝えておいただけですわ」
飄々と語るセリナにデスタはため息を吐き
「私をこのように操ったのはあなたが初めてですね。
流石にコルタ様に使える者として優秀ですね。
良いことです。」
満足気に答えて立ち去った。
その背中に向けて
「踊らなくても良い案があれば少しは考えてくださいませ」
慇懃無礼な言葉がデスタを背後から貫いたが
デスタはそよ風に吹かれたかのごとく自然に歩みを進めた。
ハリスはマインに怒られていた。
「何でハリスはそういっつもデスタに喧嘩を売るの?
コルタくんを困らせないでよ~」
「いや、儂は、儂のできることを証明したかったんじゃ
困らせるつもりなんてありませんとも」
「無駄にコルタ君の仕事を増やしてたら、本気で怒るからね」
マインの背中から後光が差し、神聖な光に手の先からチリチリと焼け焦げていたハリスは
「今後は自制するから許してもらえんか?
わしはコルタ様も貴方様も敵に回すつもりはないでな」
ハリスは思った。
コルタ様の次とかいう次元じゃない。
コルタ様もマイン様も儂とは次元の違う存在で
その気になれば一瞬にして消滅するだろう。
決して逆らってはいかんと本能が告げていた。
奇妙な魔王達とコルタに侍る女性達の力関係が決してきた。
結局世の理の通り、女性は敵に回してはいけないと思うコルタ達
勇者パーティーだった。
結局俺の下に女の子は来ない。
全てマインとセリナが丁重にお断りしたんだろう。
俺も受肉して男だからさ~
やっぱ彼女と言うかそういう人欲しいよね?
俺にとって敵はあの二人なんじゃないだろうか?
それとも、あの二人と三角関係?
どうでもいいことに悩むコルタだった。