12 神の戯れ
退屈を持て余しているのはいつものこと
そんな折に俺を神にした別の神から念話があった。
ここらで成長したお前の軍隊と模擬戦をしたいと思っている。
理由は聞くな。
暇以上の理由はない。
日時は明後日
最大最強の勢力を揃えておくように。
世界同士で戦争ってこと?
神の遊びは血生臭すぎてうんざりした。
どうせ、こちらが負ける事を見越して楽しむ気なのだろう。
まぁ、最初から負ける気などないが。
俺は世界中の指導者の夢枕に立った。
ミエードの地に降り立つ異世界人が
世界を滅ぼすべく戦争を企てようとしている。
世界中で手を取り合い軍勢をもってこれを排除しなければ
世界は悪の手に落ちるであろう。
マルタ共和国は世界でも5指に入る大国である。
共和制を敷いているこの国では
ミエードの恐怖が染み付いているのだが
大統領に選ばれたスカッチャーは頭を抱えていた。
夢で語られた事を議会で話して良いものか?
変人として処理されるのではないか?
しかし、事はミエードが関わっている。
何かあれば恐ろしいことになりかねない。
陰鬱と悩む大統領に側近は言った。
「スカッチャー様を大統領に推薦したのは
他でもない議会と国民です。
何も心配することなどありませんので
何かあれば議会で議題に上げてください」
と
スカッチャーの意思は決まった。
議会では馬鹿げているといった批判が半数
何かあればマルタは滅びかねんと言った意見が半数
「仮に本当だったとして大統領はどうするおつもりですか?」
聞かれて困るのはスカッチャーだ。
手伝う義理はないし、滅びてほしいと思っているミエードだ。
しかし、問題は世界の最悪になるというお告げ
「世界が滅びる可能性がある以上、座視すべきではないと思っている。
強いては各国に使いを出し情報収集に努めた後
他国の情勢に合わせて判断しようと思うが如何か?」
議会は決着した。
完全に他国に丸投げをするという形で
情けないことこの上ないが大国マルタは
議会で反発することも多いため愚鈍な政治体制しかしけない
残念な国となっている。
結果としてシードの様なアホな大統領が誕生してしまうのだった。
世界は概ねミエードを助けて戦後処理に金品を奪おうという考えで一致していた。
富める街ミエード領の名は世界で噂になっていたので
欲にまみれた指導者達はこぞってミエードに参戦すると
使いを出した。
当然この動きに呼応する形でマルタも参戦を表明した。
当日集った兵数は約3000万人
ミエードは王都からの救援だけは受けることが出来なかった。
何とかするだろうと言って突っぱねた。
ミエード陣営が指揮を執る為
剣、魔法の手合わせをさせてみたところ
ミエードの精鋭に各国の精鋭は刃が立たなかった。
ハリス、デスタという隠し玉は使っていないのにこれである。
ミエード領主である俺は
弱すぎる兵力を送ってきた各国に恨みつらみを言うつもりはないが
仕方ないのでミエードで鍛えられた精鋭を中心にする作戦しか
考える余地はなかった。
剣士、魔法師は二人一組で対峙せよ。
魔法の支援を受けて剣士が切りつける。
ミエードの魔法師が他国の剣士と組んでいる場合は
剣士が注意をひきつけて魔法でとどめを刺す。
こうしてこちらの陣営は整った。
そして時間になるとどこからともなく
お寺の鐘の音のような音が鳴り響いた。
「世界の終わりだ~」
そんな声が聞こえるが
何もしない神が見守っただけの軍勢など恐れる必要があるものか
気にもしない俺。
終焉のラッパが吹き鳴らされとはヨハネの黙示録だったか
ある意味神を選別するという意味では核心をついていることになる。
そして巨大なゲートが顕現した。
中から現れたのは
戦車、戦闘機、トレーラー
いや・・・反則じゃないっすか?
神はこの場には現れない。
「どうじゃ?わしの世界の文明はすごいもんじゃろう?」
そんな念話が聞こえてくる。
無性に腹がたった。
「ふっざけんな~~~~~!!」
極大火炎魔法発動!
一瞬にして蒸発する兵器群
「待たぬか!神の力を使うのは反則じゃ!
お前はわしと見守るだけで手出ししてはならん」
そんなふざけた声が聞こえてくる。
すると、俺の意識は宇宙に飛んだ
隣で問題の神が下卑た笑いを口元にたたえていた。
「やり直しじゃ」
さっきの記憶を持ったままやり直す神
これで相手に油断はなくなったと考えていい。
一方こちらは指揮官が居ない状況でどこまで戦えるかといったところか
見るだけは性に合わないが、神にも格があるようで逆らうことは出来なかった。
開戦すると砲弾が雨あられと降り注いだ。
「マジックシールド!」
数名でシールドを張るが物理攻撃に対して無意味なマジックシールドを砲弾は易易と貫通する。
爆発に巻き込まれて人の命が消える。
「二人一組はなしじゃ!魔法師はわしについて来い!」
ハリスが空を浮遊して戦闘機を相手取る。
敵のバルカンを風魔法を応用して避けきり
俺が使った極大火炎魔法の劣化版である火炎魔法を主体として戦っていた。
(あのデブ意外にやるな~)
ハリスの評価がマイナスからプラスになった。
「剣士の諸君は私についてきなさい
あの機械は繊細なようです。
一部でも破壊すれば止まるでしょう」
そう分析したデスタが戦車に突撃して排気板や
キャタピラ、脆そうな部分を重点的に切り刻んだ。
ついでに歩兵部隊も銃弾の雨を躱しながらみねうちで倒し続ける。
その光景を前に俺は見過ごさなかった。
震えて棒立ちになっている各国の兵士たち
戦闘に参加せず阿鼻叫喚に陥る各国精鋭部隊
仕方がない。
これが終わったら世界の危機に震えて何も出来なかった者達を
喧伝して回るか。
戦闘開始から10時間で勝敗は決した。
ボロボロになった異世界の兵隊はゲートに逃げ帰っていった。
歯ぎしりが隣から聞こえてくるが俺の怒りはそんなもんじゃない。
「お前の世界は戦争ばかりしてるのか?
やたらと戦闘用の兵器ばかり見受けられたが?」
「っっっっ!!」
悔しさのあまり声も出ないようだ。
「まぁいい。
次にまた何か仕掛けてきたらその時は
お前の世界に殴り込んで殲滅してやるからそのつもりでな?」
こうして決着はついたが俺には大事な事後処理が待っている。
3000万人は誰も死なないようにしていた。
死んだ者も復活させたのだ。
神の戯れで人が死ぬなんてことはあってはならない。
「さて、各国の皆様。ご助力に感謝する。
と、言いたいところだが・・・
無様に逃げ惑っていただけだったな?
何か申し開きはあるか?」
ここには各国の首脳を集めている。
戦後処理と賠償は必要なのだ。
「ミエード領の者だけで事に当たり
全てを解決してみせたわけだが
ミエード領を分割統治など言い出すものは居ないだろうな?」
言えば逆に滅ぼされる。
脳裏に焼き付いた鬼神のようなあの強さ
尋常ではない!
「各国を代表してマルタ共和国から提案がございます。」
スカッチャーが裏返りながらも言葉を紡ぐ。
「マルタ共和国の中で東のサミラの大森林から
古都キャルクまでを割譲いたします。
代わりに兵の練度を上げるため訓練していただけませんでしょうか?」
すると各国から様々な条件で取り入ろうとする案が出された。
目の色が変わっている。
まぁ、どのみち暇を持て余して今でもたまに学校に赴いては
ボロ雑巾のように鍛えて(?)いるハリス、デスタがいれば
逆らう気はお気もしないだろうということで
割譲の件と学校に人を派遣してくることは了承した。
学費は国内の二倍に設定しているがそれでも構わないということだった。
飛び地になるような国からの申し出は却下したが
その代わり3倍の学費を支払うと取り決めがなされた。
ますます、ミエードは発展することだろう。
神のアホなお遊びにつきあわされて以降
学校の増築工事で更ににぎやかな街となった。
マルタを含めた領土の割譲をした学費2倍の生徒のための寮
3倍の学費を払う生徒のための寮が
それぞれ別に建設中である。
編入は認めなかったので
公式に入学してくるのは来季からになる。
不公平感や差別意識が育たないように釘を打たないとな。
神の代行者であるコルタが
正式に神の座につかれたことをここに宣言いたします。
今後コルタ神はその叡智で持ってますます人の発展に寄与されることを
神々は望んでおられます。
その名に恥じぬよう精進していただきたい。
頭に直接届いた声は
突然俺が正式に神になったと言った。
考えればすぐ分かることだ。
神は自分の世界が最も素晴らしいことを見せつけようとゲームを挑んできた。
つまり、ゲームで勝てば相手の神より格上として見られるっと
面倒なことに巻き込まれている気がして仕方ないコルタは
気分を入れ替えに外へ出た。
大通りは賑わっていて
領主様と声をかけてくる。
寮の建築も順調のようで何よりだ。
買い食いをして歩きながら思う。
神の頂点目指して何になるのか?と
バックアップ機能あってよかった~
投稿したはずなのに全て消えてて
一気にやる気が失せてました。
ありがとう。なろうサイト様