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行き詰まり?

 ーコウ視点ー


 翌朝、皆んなの話し合いの結果を聞いて愕然とする。


 名案は廃案になっていたからだ。

 この世界の月は滅多に出ない。と、言う事は日蝕など数百年に一度のもの。

 暦を見て検討するも、全くその予定は無いとの事。



「ですが言い伝えの意味は理解したのです。きっと何か他の方法があると」励ますように話すヘレの言葉を俺は遮った。

 腹が立つ!

 レイバンが、レイバンが大変なのに。

 こんなのんきに構えていたら、間に合わない!!


「そんなの!そんなの無理だよ!急がなきゃダメなんだ。絶対、早く…」

 俺は俯いて唇を噛み締めた。


 皆んながどんな風に俺を見ているかも気がつかずに。


「コウ殿。もしや長について何か知っているのでは…」恐る恐る聞くミゲルの声のトーンに気づかない俺はまたもや怒鳴る。


「急ごう!とにかくあの風を止めるには日蝕が必要で。あーー。どうしたら。。」


 ミゲル達の青白い表情を見ていたらもう少し違う言い方が出来たかも。

 でも、俺はどうしてもと、焦っていたのだ。


 長い沈黙を破ったのは、驚いた事にラゼだ。


『馬鹿め。焦っても無駄だと其方が皆に言っておったのにな。とにかく、事情を皆に告げよ。』


 太郎が…喋ってる?

 だが、それよりも振り返って我に返った。


 心配は当たり前だ。

 ミゲルもヘレも…もちろん長老だって同じだったのに。


 俺…。


「コウ殿。まだ告げてない事があります。

 それは今の長の状態についてです。

 昨日の話には実は続きがあります。

 それはテーレントの民に時折生まれる獣の姿を持つ者です。

 それはたった一人の選ばれた者。

 生まれた時に獣そのものの姿で生まれるのは意味のある事なのです。もちろんその後、人間の姿に変わりますが。

 もし、再び獣の姿になっても心を失わない者があれば、その者こそがテーレントを統べる者だと。


 そして長こそが獣の姿で生まれた者なのです。」


 ミゲルの話には不十分な箇所がある。

 獣の姿で生まれた者ってどうなるんだ?

 再び獣になった場合は?


 俺は思わず呟いたようで、ミゲルが答えてくれた。だがその表情は非常に苦々しいものだった。


「生まれた時と同時に捨てられます。

 それほど、獣そのものの姿とは我がテーレントの民にとり忌避なるもの。

 そして再び獣となれば、二度と人間には戻れません。その昔は…」


 言葉を濁すミゲル。

 俺…皆んなの苦悩を甘く見ていたのか。

 どれほど、焦る気持ちでレイバンを心配してたんだろ。

 レイバン。



 落ち着きを取り戻した俺は、再び会議の仲間となるも行き詰まったままで。


 こんな時は、これ!


 甘〜いココア。

 俺が皆んなに配っていたら、袋がちょっと重くなる気がした。



 え??


 だって、この袋は全く重さ無視じゃないの?



 袋の中を探ると原因っぽい石発見!!



 こんなのあったなかぁ?


 確か琥水に似てるからって、あの山から持ってきたヤツで。


 うーん。。


「そ、それはーー!!」


 ん?長老どしたの?

 疲れで叫んでるのか?



 どうやら俺の持つ石を指差している?



「『月石』と呼ばれる伝説のもので、どこにあるかも、どうやって出来るかも不明です。

 でも、月を呼ぶと言われる伝説があります。

 今!!この時にこれが見つかるなんて!!!」



 お?これって月を呼べるのか??

 


 よーし!!

 俺はそのままテントから飛び出して叫んだ。


「おーい。お月さま!!

 頼むから出てきて、太陽に影を!!」


 精一杯手を伸ばして空高く掲げた『月石』は、そのまま手から離れて上空へと登って行く?


 えーー??


 やってみたよ。

 みたけど…非常識な!


 こんなのって無いよ。



 呆気に取られている俺や皆んなをよそに『月石』はどんどん上空へと登って行くし…。、


 あまりの急展開にあたふたしてると、2つの山の間に吹いていた風が止んだ。

 おー!いよいよか?

 やがて、急に日が陰って暗くなる。


 見上げれば夢見ていた『日蝕』なのか?


 真っ先に立ち直ったミゲルが叫んだ。


「あの山の間に行けば、長の元に行ける筈。

 さあ、コウ殿。行きましょう!!」と。


 え?

 どうしよう。

 あんなに急げとか行くぞとか言ってたけど、どうしても進みたくない。


 んー。なんでだろう。

 でも無理!

 絶対嫌だと何かが叫ぶ。


「あれって、何ですかね。」

 ミゲルと俺の主張の違いに皆がオロオロしているのにヘレがのんきな声を出す。


 一斉に指差した方向を見れば、日蝕の影なのか?

 地面に黒い丸がいくつも出来ていた。


 妙な影だ。


 穴のように見えるが、その真っ黒な影の中を何かが走るように見えて目を擦る。


 何?

 疲れ目か?


 ジッと見て驚いた。

 影に昨日夢で見たあの獣の姿が見えた気がした。

 真っ黒なのに、見える?

 俺…遂に幻が見える痛い人か??


 よくよく見ようと俺がその影に近づくと、影の形が急に変化した。


 レイバン!!


 影の中にはっきりとレイバンの影絵が見えた。

 間違いない!!

 思わず、俺がその真っ黒に触ろうと手を伸ばしてその時!


「危ない!!」と、ミゲルが叫ぶ。


 だが、遅かった。


 なんと、俺はそのまま。影から伸びた手に引き摺られて影の中へと落ちてゆく。


 ええーー!!

 影の中って??


 どこへ?



 大混乱するも、俺の意識はそのまま真っ暗闇に溶け込んでいった。




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