最初の試練?
ーコウ視点ー
初めは、些細な事だった。
やたらと好き嫌いが激しいなぁとか、会話が減っているようだとか。
でも、決定的だったのは牙だ。
ある朝、ミゲルのあくびに俺が驚愕したのが最初だったかな?
いやだってね。あればちょいと人間の牙レベルじゃなくて猛獣系だし!
それはやがて、耳になり尻尾が出るように変化して。
遂に、獣人の誕生だよ!
お?
テーレント全体で獣人化か?
スッゲーよ。
あーー。
これが興奮せずにいられますか?
俺の魂が叫んでる!!
獣人…それは正義!
獣人…それは我々の夢!
しかし、俺の感動はだーれにも理解されず何故だか皆んなは獣人化をやたらと怖がっていた。
えーーー!
本能が蘇るから??
そんな理由で獣人を拒否るなんて、そう、
何かの血が許さないぞ!!
たぶん…。
そしたら、長老が。
「でも、もし猛獣の本能に目覚めて貴方に食らいついたらどうします?」
おー?
何かイライラしてるね。
カルシウムだな。
長老に俺は主張した!
「じゃあ、本能を抑えたらいいじゃん!!」
そしたら「それが出来たらば。」と。
ほぞを噛む勢いのミゲル?
カッコいいのに、な!
うーん…。
あー!そうだ。
確かヨーゼストの最古の図書館で見たような?
「これこれ!
これさえあれば!」
俺が取り出したのは、山羊のミルク。
これをチーズにしたもの。
確か…。
『この世で最も栄養豊富なのは、間違いなくミルク。しかもそれは山羊に限る。
それは○○を伸ばして○○を助ける。』
だったよね。
因みに○○は、破けて読めなかった所。
当てはめれば分かるよ!
『それは身長を伸ばして人間を助ける』に間違いない!!
獣らしくて困ったら、人間を助ける程のものなら獣っぽいのを人間にできるはず!!
その上、身長を伸ばせば二本足の人間っぽいだろ!
ほーら。
皆んなが一斉に黙ったよ。
思いついた俺を見て固まってるだろ!!
まーね。
身長こそ、命。
この言葉は、前世の絶対的正義。のはず…。
とにかく食べろよ。と。
表情が何となく腑に落ちないけどまぁいいや。
食べた、食べた!
どう?
ん?
耳は…ほら!!
見てみろよ。あれ?
ある…な。
おかしいなぁ。量が少なかったのか。
尻尾もある。
うーん。。。
「いいえ。コウ殿。
確かに獣の本能が消え失せました。
これさえあれば、自分で立っていられます!!」
おー?
立っていられますって??
なんと!四足歩行まで行くつもりだった?
いや、獣人は耳と尻尾のみが良いんだ!
俺の本能がそう告げている!!
何となく呆れ顔の太郎が、クスリと笑った気がした。
うーん。
太郎に悪かったかなぁ。
でも、太郎はその姿が良いんだよ。
モフモフ。
何となくそれも正義!な気がするし。
とにかく、山羊のミルクに感謝しつつその日はそのままキャンプとなる。
山羊のミルクに広がる夢を見ながらその晩は休んだ。
だから、側にいた太郎が独り言を呟いていたのを知らない。
『ククク。
何という感覚。
デタラメとはコヤツの事だな。
だが…。
これほど思い切りの良いデタラメも気持ち良い気もするな。』
その晩は様々思いが渦巻きながら暮れて行く…。