雨の道へと。
ーコウ視点ー
いよいよ、あの雨の道へと進む事になった。
新種が見張っている可能性も含めて急ごうと言う話になったのだ。
先頭はミゲル。最後尾はヘレ。
俺はゼンさんの真横で雨の真ん中に空いた不思議なこの道へと。
想像は、水族館の水槽のトンネルだった。
でも、普通の道で雨も無いし、トンネルも作られてない。要するにあまり変化はない。ちょっとガッカリした。
あるとすれば、空にあるのが『星』な事。それも結構な不格好な形だ。
ソロソロと進む俺達は突然、パッと真っ暗闇になる。
思わず叫びそうになったよ。まぁ、ほんの一瞬だったから大丈夫だけどさ。
まぁ、有り難い事にほんの一瞬でまた明るさを取り戻したから良かった。
はー。ビビるぜ。
やっぱり、長老の言うようにこの空間は不安定なのかもしれない。
そうとなればいい、急がなきゃな!!
俺が振り向いて皆んなに声をかけようとして気がつく。
あれ?
ゼンさんは?
ラオとかナット君だっていないし?
「戻るべき道が消えました。進むしかありません。ここから消えた皆様はこの空間に弾かれた可能性があります。恐らくはスタート地点に戻ったと。」
えーー!
皆んな大丈夫かよ。
「ミゲル殿。点呼をお願いします。恐らくはトラッデの皆さんは全員この場にいると考えます。」
長老の言葉に重々しく頷くミゲルは、慎重に数えて答えた。
「長老。貴方の言われる通りだ。」
とにかく再び前へ進もうと俺達は決めて、一歩踏み出したらどうよ!あれよあれよと景色が変わる。
そう、走馬灯のようだよ。ぐるぐると空間自体が回転したいるようで…。
当然、酔いましたよ…。
気持ち悪い…。
俺が吐き気と戦ってたら、ミゲル達が急に走り始めた。
おーー!!
雨が!雨が追いかけて来る??
とにかく、俺達は先に見える明かりのようなものに向かって走り続けた。
よし!ゴール!!
はー、はー。息が切れるよ。
あれ?
ここどこ??
俺達は、豊かな自然の森って題がつきそうな場所に出ていた。
テーレントなのか?
遠くにあるの背の高い山は、二つ並んでいてその間には夕焼けが見えてそりゃあ綺麗だった。
思わず見とれたからな。
でも、まずは目の前の場所はどこかって事や。いや、その前にこの場所にレイバンがいるはずで。
振り向くと…。
「こ、これは!!」と、
さっきそう叫んだままで固まっている長老もようやく動き出したか?
おー、ギシギシ動いてる。ロボットみたいだな。
全員の目が長老を見つめたよ。
恐らくこの場所が分かってるからの、ギシギシだよな?期待を込めて見ていたら。
「これは太古の昔のテーレントに似ています。
しかし、あの山。
恐らくは、あの言い伝えの山かと。」と長老。
おーー、さすがだよ。
これぞ!長老。
まだ『約束の地』かどうかを調べるとか、レイバンを探すとか問題山積だけど、だんだんと沈む夕日には勝てず今晩はここで野宿となる。
と、なれば料理だな。
俺の出番だ!!
結局、火を使うのも今はやめて以前作ってしまっておいたおにぎりを食べた。
この袋…良いよー。
入れたらずーっと作ったままの姿だからな。
その夜、遠吠えを聞いた気がして夢を思い出した。全部は覚えてないけど、大きな狼に会わなきゃいけない。
それだけは覚えているんだよ…何故か、な!
ールスタフ視点ー
雨の道…聞いたこと無いし。
マジ、おっかない。
本当は入りたくないが…仕方ないよな。
俺も嫌々ながらバリーの後をついて入る。
おや。。。
意外にも雨は一粒も当たらず、快適!!
これなら、楽勝かも。
あーー。
そう思った俺が馬鹿だったんだ。。。
一瞬の暗闇の後…雨の道は消え失せて俺達はびちょぬれに。
ほら見ろ!バリーに言いたいけど言えないが。
とにかく体験した事もない雨で必死に来た道を戻ったところでバリーが叫んだ。
「コウ殿は?ミゲル達も居ないぞ!!」
えーー?
キョロキョロして辺りを見ればテーレントの皆んなとコウが消え失せていた。
青ざめるバリーに落ち着いた声がかかる。
「大丈夫です。コウ殿達はあちらの空間へと入りました。我々は選ばれなかったのです。
落ち着いてここで待ちましょう。」
アーリア様の一言でテントの設営が始まる。
それは、長い待機の始まりだった。