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メルバ村で炭火焼パーティ?

山脈の麓の町で山越えの支度をするんだとレイバンから聞いた。

そこまで2日の距離だから今晩は近くの『メルベ』村で泊めてもらおうと言う話になった。

ちょっと人数は増えたが泊めてもらえるだろうか?小さな村らしいからな。


「いやぁ、コウ殿と旅が出来るなんて超嬉しいよ。」とはしゃぐナット少年。

故郷は山の向こうらしく少年一人では心許ないから是非ご一緒にと俺が勧めた。

喜んだナット少年に俺も笑顔になる。

でもウェスさんも一緒にどうぞってレイバンが勧めるとは思わず、ちょっと驚いた。

常連客同士の付き合いってヤツか?


こう見えて大食いのナット少年に野営でホットサンドを作った。

パン種を仕込んで毎日焼いている。

とにかく、焼きたてのパンに勝るもの無し!


昼下がりの頃、メルベ村に到着した。

したけど、なんか様子がおかしい。


「あのー、どうしたのですか?」

走り回る村人をやっとの事で捕まえて尋ねたら、村中で腹痛発生らしい。


レイバン達ギルドメンバーはこんな時のために、薬草を持っているから急いで村長さんの家へ向かう。


いやー、改めてレイバンの名前の凄さを知ったよ。レイバンの名を聞くと半泣きの村長から倒れている村人を頼むと縋られたレイバン。

軽く頷いた後の素早い行動は圧巻だった。

レイバンとラオ、ウェスさんも協力して事に当たる。

その隙に俺の方はお粥作りだ。

ナット少年も手伝ってくれて、日暮れ頃には粗方終わった。


その晩村長の家に泊めてもらった。


その日出された夕食の席で俺は絶句した。

ものすごーく濁った飲み水が出てきたからだ。

…これは不味いとレイバンに目配せして話し合う。


「これ、飲んだら皆んな腹痛になるからやめた方がいいと思う。備蓄の水で対応しようよ。」



「それと…」珍しく言い淀んだ俺をレイバンが促す。


「言ってくれ。」



「出来れば安全な飲み水を確保してから出発とか無理だよな…急いでたものな。」


あんなに馬を飛ばしたくらいだ。

さぞ、重要な任務に違いない。だけどこのままにしておくとは、ちょっと胸が痛むのだ。


「任務も重要だが、ギルドの規定にこの様な事態に遭遇したら対処すべしとの文言がある。

任務の事は考えなくていい。

だが、当てはあるのか?」


俺は自信を持って頷いた。



翌朝、俺達はまずは二手に分かれてる。


楢の木や竹を取る。

ドラム缶に似たものを探す。


砂・小石を拾う。

綺麗な布の用意。


まずは木炭の準備だ。

煉瓦の上にドラム缶の様な入れ物を置いて薪を敷き詰める。隙間はダメ。良い木炭が出来ない。蓋を閉め下から火で燃やす。

時間はかかるが良いものを作りたい。

出来上がったものを地中に埋めて暫く待つ。

簡単な木炭の出来上がりだ。

ここまでで丸一日かかった。


次にろ過装置を作る。下から小石・砂利・木炭・砂、綺麗な布の順に敷き詰めて水を通す。

この装置を数個作成して何度も繰り返す。


ほぼ綺麗な水が出来たら10分以上沸騰させる。



超簡単『綺麗な水』の出来上がりだ。

まあ、かなりうろ覚えだけど濁ったこの水よりいいだろう。



泣いて喜ぶ村長さんたちに何度も礼を言われて照れる…


良い事思い付いたぞ!

木炭があるんだ。炭火焼パーティ開くしかない!


その晩は、ラオにとってきて貰った『レレンバ』まあー、鶏肉に近いヤツだよ。

と、ウェスに川魚を取って貰って。


・焼き魚

・焼き鳥

・焼き芋

・焼き餅


締めは焼きおにぎり!!


もう、超大宴会になったさ。

美味かったよ。


それから、作り方を改めて紹介して出発となる。

村挙げて見送りとか、超照れるよ。


レイバンの馬に乗って、麓の町を目指して出発だ!


ちなみに礼にと『チーズ』を貰ったから本当はお得だった訳。

よーし、ピザを久しぶりに作ろうかなあ。


ーウェス視点ー


第四皇女様が、城を飛び出して早2年。

ようやく重い腰を上げて、帰途につく決心をされてホッとしてのもつかの間。

なんと『田中食堂』のコウ殿とレイバン達に出会う事になるとは…

これは狙ったに違いない。

少年(ナット少年)に化けている皇女様ならやりかねない。

本当に自由なのお方で困惑する。


レイバン殿は俺の正体を薄々気づいているのか、同行を勧めて貰う。

正直有り難い。

皇女様は単独行動がお好きだからな。



懐にスッと入るとウキウキとコウ殿の料理にありつく。まさかのこれが目的では…


故郷を救うヒントを得たいと城を出られた皇女様の行き着いた先が『コウ殿の付加料理』だ。

そりゃ間違いなく神域に入るものと推定されるが果たして我が国の窮地に役立つかどうか。

(もちろん俺自身もファンの一人ではあるが。)

疑問を持ちつつメルバ村へと入る。


村に入るとそこには異常事態が発生していた。

そう、

メルバ村では病人が多数出ていたのだ。

原因は濁った水だ。

この濁った水問題は、実はキヌルの長年の懸念。

水の浄化問題は常々頭を悩ませている問題のひとつなのだ。


それをなんと!!

コウ殿!!あ、あり得ない。

目を疑う事件が起きていた。

そりゃ、『治癒』の能力を持つ『お粥』も凄いがそれよりもコウ殿の底知れぬ知識にただただ驚嘆する。


『木炭』『ろ過装置』


聞きなれない言葉は、出来上がりと共に言葉を失わせる。それは俺だけでなく村人もレイバン殿達も、そして皇女様もだ!


この異様な雰囲気に全く気づかないコウ殿は、元気になった村人達の感謝に照れつつ、パーティをしよう!とか言い出して次々と驚きの料理を連発する。

はー、凄過ぎる!!


そしてこのパーティは、この村にこの後奇跡を起こす事になるのだが。


それにしても炭火焼とは、なんと美味なるものか。

護衛騎士として厳しい訓練に身を置いて長くなる俺でも笑みが零れる。


不味い!

気を引き締めて!


皇女様は、伝令を飛ばした様だ。

まあ、当然と言えよう。

この2つの発明はこの後、キヌルに革命的な発展を齎すのだから。



さて、いよいよ山越えだ。

いかに王城へコウ殿達をお連れするか、皇女様のお考えはいかがか。





その後、メルバ村の村人達が数年の間病のない村になったと聞く事になる。

村には『名物炭火焼』店が出来て、観光客の押し寄せる村となるのは、ついでの話だが…





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