知識の部族で…
ーコウ視点ー
知識の部族の村は、良い意味で簡素な作りだった。
その中でも一番大きな家の中へと招き入れられた。
ミゲルを先頭にして、後をついて行く。
それにしても、俺達が来ることを良く分かったな。
「我々特有の伝達手段があるのですよ。
俺から、先に地図の話を伝えたのです。」
ヤベ。
最近、ちょくちょく思ってる事が口から出てる。
部族の人には聞こえなかったみたいで、ズンズン進む。
「ミゲルよ。
ここから先はお前とこの方のみで頼みたい。」
ドアの前で選ばれたのは、俺?
ミゲルが頷いたので、俺と二人で先生っぽい人の後を追う。
いいのかよ。俺…完全なる部外者よ。
ドアの向こうには、部屋ではなく下へと向かう階段が。
けっこう長い階段を下りると、左右に沢山のドアのある廊下を真っ直ぐに進む。
長老さんって、地下に住んでるのかな?
俺の予測は、外れた。
この地下は知識の部族の資料部屋らしい。
しかも、太古の昔からのものがあり部族の者でも一部しか入れないって。
いよいよ、いいのか?
ちょっとワクワクしてるけど。俺。
地下基地って男心をくすぐるよな!
廊下の先にある部屋は、鍵がない。
そのかわり、ドアに手を当てて魔力を流す。
ん?
ヨーゼストの人じゃなくても魔力とかあるの?
「いえ。魔力とは違うのです。まー何というか私をドアが識別しているのです。
とにかく、中へどうぞ。」
ふーん。感心している間に中へ入ると割と普通の部屋。
キョロキョロしている俺を置き去りにミゲルは、テーブルの上に地図を乗せて「コレなんです。」と指を指す。
「なるほど。これでは貴方がわざわざ私に緊急連絡を下さる筈ですね。
間違いありません。この地図は太古の昔の我らの世界。
しかし、この時代のもので残っている物があったとは驚きました。
全て失われたと思っておりましたが。」
太古の時代って。
ヨーゼストの最古の図書館って、伊達ではないな。
それにしても、この人がまさかの長老?
長老って、白い髭のお爺さんイメージなんだけど。若いし。
まさかの若作りか?
ちょっとコツ聞こうかな?なんて考えごとにも飽きて、更にちんぷんかんぷんな話が続いて俺は完全に忘れられた存在になった。
暇な俺が本棚の辺りをぶらぶらしてた時。
ズズン!!と地面が揺れた。
地震か?
「大変です。
村を囲むように闇影獣が大量に現れたとの事です!」
え?あの揺れはまさかの伝令方法らしく、長老さんとミゲルに続いて慌てて表に出た。
村人達が右往左往していた。
すぐさま、ミゲル達が対抗して外へと飛び出す。
ミゲルは、司令塔として残っていた。
ん?
ブーン。。。。
また、あの音がする。
蚊みたいな音。
煩い!!
パチンと叩いたぞ!
やったか?そーっと手のひらを除いてあんぐり…
「これ?何??」
村人に防虫煙玉で対抗するよう指示していたミゲルに尋ねたら、ミゲルも俺の二の舞に。
「これ。闇影獣です。
まさか…この村に入り込んでいたとは…。
コイツのせいで秘密にしていたこの村が危機に。」
なんだと!!
コイツ、そんなに悪いヤツだとは。
だとするとコイツを捕まえなきゃな。
網。虫捕り網が欲しいよ。
その辺の道具で…あ!ルスタフ!!
ふふふ。ルスタフみっけた!
さっそく、地面に絵を描きルスタフに道具作りを依頼する。
奇妙な顔つきになったルスタフは、何とか忙しそうな長老と話し合い虫捕り網を作成成功と!
よし!これでやれる!
とにかく、料理以外全く役立たずの俺に久しぶりに舞い込んだミッションだ!
虫捕り網をやたらと振り回していたらあっという間に捕まえたぞ。
音が聞こえるから、振るとまたしても一発!
俺…才能有りかも。
ま、何の役に立つのか不明だけど。
「コウ殿。まだ防虫煙玉の在庫ありませんか!」
ミゲルが走り寄る。
急いで袋を探ると、防虫煙玉が見つかる。
見つけたけどね、色が変で。
赤いよ。これ?
緑色だったのに。
あー!!
あれか?唐辛子の粉が溢れたかも…。
思い出した時には既にミゲルは、それを持って外へ行っちゃったよ。
ミゲルが外に出た暫くしたら…あれ?
。。。
しーんと静まり返った??
皆んなが外から引き上げて来た。
良かったよ。怪我人とかいないみたいだな。
お?
ミゲルが奇妙な顔つきで側に来たぞ。
「あれは何ですか?一瞬で大量の闇影獣が倒れましたよ。ただの防虫煙玉ではないですよね。」
ヤベ。
唐辛子の件を伝え謝ると、首を横に振りながらお礼を言うミゲル。
なんか疲れ切ったミゲルに、俺は捕まえたブーンもと、小さな闇影獣を差し出した。
肩を落としたミゲルが更に厚く礼を言うが、窶れ具合が凄いよ。
コイツ。
疲労物質出すのかな。
そうだ!生姜湯作って差し入れようっと。
俺の名案はみんなに大好評だった。
無論、若作りの長老にもな!
ただ、小さな闇影獣のせいで翌朝、大変な目に合ったんだ…。