ヨーゼストに向かう ーラドフォード視点ー
ーヨーゼストへの道で ラドフォード視点ー
囲まれた。
予感はあったさ。
「円形に陣を組め。魔法使いは防御の魔法を優先せよ。」
新種は賢い。
『光る秘石』の発見は、ヤツなら気づいているだろう。
ならば、我々の動きも読まれている。
その可能性を考慮しての移動だった。
向こうが上手か…。
今回は、大事な預かり人を連れているから何としても彼らだけは守らなければ。
「我が意思に従い風よ。その威力を今こそ示せ。」風魔法で先鋒隊を吹き飛ばす。
部下達は優秀だ。
火魔法を駆使して対抗している。
グルルルル…
新種特有の数頼りを使えない細い道を選んで来た。だからだろう。
ライデンが数体現れたのだ。
ライデンが複数いる場面など見た事もない。
激しい電撃を防ぐのに、防御の魔法使いから激しい息遣いが聞こえる。
不味いぞ。
限界か?
「叔父上。我らが防御を変わりましょう。
前に行かせて下さい。」
振り返ると、輪の中心にて部下達が守っているのに前に出ようとするところだった。
小言を言わんとした時、一際激しい電撃が我々を襲う。
「最大防御!!」
ほぼ全ての魔力を注いで防御を張ったが、辛うじて防いだに過ぎない。
次があれば持たないか…。
使い過ぎによる目眩を精神力で押さえ込み、部下達に防御のみに徹するよう命じた。
しかし、打開策がある訳ではなく次に備えた場当たり的な作戦に過ぎない。
ライデンは、連続攻撃で来るだろう。
次が防げれば、まだ打つ手はある。
その時!思いもかけない方向から声が聞こえた。
「我が炎。我が名の元にその真の姿を解き放て!!」
ライデン3体が、荒れ狂う炎で焼き尽くされる。
こんな魔法を使うのは、一人しか知らない。
ゼン。
ピピランテ始まって以来の魔力を持つ長ゼン。
振り返れば、ゼン以外にもピピランテの仲間たちとラオがいた。
「殿下!遅くなりました!!」
ラオ達味方の参上で攻守交代となる。
ライデン達もゼンの魔法の前には次々と倒されようやく目処がついたと思った。
ガォォーーー!!!
空からの突然の攻撃に部下達が数人倒れる。
駆けつけたカリナ殿が手当てを施すがかなりの深手だ。
ゼン殿もライデンの相手の後で空からの相手ではかなりの不利なのだろう。
炎は、虚しく空を舞うばかり。
その上、部下達に疲れが見え戦いはますます不利になる。
剣を構えて戦うも、空からでは上手く躱すのが精一杯で攻撃が出来ない。
このままでは体力を先に失った方が負ける。
じり貧にイライラしても打開策も尽きた。
「ですが殿下。不味いのでは。」
どうしたのだ?
ラオの困り切った声がする方を見れば、なんと守られるべき者達が前に出ようとするところだった。
「駄目だ!子供の出る幕では…」
言葉はそこで途切れた。
『光あるところに、我は有り。
古の道に従いて、その力を示せ!!』
眩しい光が辺りを埋め尽くし目を閉じた後の光景は、唖然とするもの。
全ての闇影獣が倒れ伏していたからだ。
無論、上空の闇影獣も地面で倒れている。
『グググ…まぁ良い。テーレントは我が手にあるからな。』
何処だ!!
確かに耳に届いたその声はおそらく『新種』
何と言葉まで…。
ヤツは何処まで知能を高めるのか!
は!
それよりも、問題は此奴らだ。
姉上よりの大切なの預かり人の二人に向き合う。
「ラシェット殿下。私は出発前に約束致しましたよね。姉上とも約束された筈。
戦いには加わらないと。必ず私に従うと。」
コウに出会ってから凄まじい成長を遂げた殿下方は、姉上の目覚めと共に更に大人びた。
今の姿は、まるでコウと違わぬ年頃のようだ。
「ラドフォード殿下。お気持ちはお察しますが、まずはヨーゼストの王宮へ。
パナヤ陛下がお待ちでございます故。」
落ち着いたゼンの言葉に我に返り急いで、部下達の元へ。
「問題ありません。コウ殿のスープを持参しましたからもう、回復されました。」
さすがカリナ殿。有り難い。
我々は、そのまま王宮を目指した。
疲れ切った身体もカリナ殿の持参されたコウの料理で乗り切った。
道すがら会えると楽しみにしていたコウがテーレントへ向かったと聞いて正直、ガッカリした。
だが、コウの事だ。
新種如きに負けはすまい。
ふー。俺は自分のやるべき事をするまでだ。
ーヨーゼストの王宮にてー
「お待ちしておりました。遣いの物から聞いております。」
アーリアが跪く。
「我々は、主様ではない。お立ちください。」
アーリアは、そっと立ち上がる。
「では、母上からの預かりものをお渡しします。
アーリア様なら解けるだろうと。」
それは一枚の地図。
書き込みが多数あるも、その言語は今は失われしもの。
僅かに読める文字には
『失われし食○○』とあった…。