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一大事!!

ーテーレントにてー


「向こうはどうなった!!」


怒声はすれど、土煙が邪魔をして先が見通せない。防虫煙玉を使っているだけに風を吹かせるのは慎重になる。


たった一人で囲まれたリーダーが気になるがこちらも手一杯だった。

だから、祈るしか無い。


我が神よ。

どうぞ貴方の民人にご加護を。



その時だ。

一羽の鳥が土煙の中を飛び立った。


まさか…苦々しい想いが起こる。

それほど追い込まれていたのか?




ーヨーゼスト王宮の調理場にてー


「待てよ。そう!そのまま動くなよ。」


調理場の皆が見守る中、コウ殿がそろりそろりと近づくのは、黒猫。

ただし、単なる追っかけっこではなくそれは戦い。

そう、黒猫の口には今朝コウ殿が仕入れてきたとびっきりの魚の姿が!


「お前なぁ。やっと漁が再開して最初に取れたものをレレベーナの人達がくれたヤツだぞ!

義父さんが来るから刺身にして食べさせようと。

あのな!刺身はこの国でしか食べられない貴重品なんだよ!!」


黒猫に向かって説教を真面目にする姿は普通ならお笑いになるところだが、相手はこの王宮の主様。


コウ殿以外の全ての人が知っているだけに手は出せない。


見守る中、黒猫が窓からヒョイと中庭へと飛び出した。

無論、コウ殿もその後を追う。


護衛のバリー殿達もついていくが、生暖かく見守っているようだ。

護衛の人達は慣れているだろうが、調理場には緊張感しかない。


正式にマルス帝国からお客人としてラドフォード殿下がお見えになる。

それは、パナヤ陛下を張り切らせ調理場への檄がとんだ。無論ラドフォード殿下の料理はコウ殿が担当する。だが、一行は沢山の人数となる予定で調理場とてやるべき事は山ほどあるのだ。


コウ殿が外へ出た隙に…



「ギャー!!」


大声で叫ぶコウ殿に慌てて調理場の面々が外へ出ると、驚くべき光景が目に入った。



あれは『ザルド』。

何が??


ただ、驚いてもやるべき事は分かっていた。



「「大変だぞ!ザルドにコウ殿達が攫われたぞ!!」」



ーバリー視点ー


『光る秘石』の効果は不思議と我ら半端者にしかその威力を与えない。

なんとも皮肉なさまに思わず苦笑いが浮かぶ。


コウ殿が居なければ『光魔法』を使う魔法使いになるなど想像すら出来ない事柄だ。

全くその意義を理解していないのは、もう慣れた。

ルスタフだけが未だ理解が追いついてないが、あれがコウ殿だ。


今も父君でおられるラドフォード殿下のために、好物を作ると昨日から張り切って料理中だ。

料理をする時のコウ殿だけは、いつもと違う。

その真剣な表情や食べ物に対する姿勢は素晴らしい見習うべきところばかりだ。


だが、今はいつものコウ殿だ。

主様の黒猫と戯れている。


魚はまだ沢山あるのに、たった1匹であそこまで追いかけなくてもいいのにと思ったのは仲間も一緒だろう。


不味いぞ。

中庭に出た!


急いで仲間と追いかけて、コウ殿の側へ行った時だ。




バサバサバサ!!!!!




物凄い沢山の羽音がして上空を見上げた時は、我々全員が上空だった。



見たこともない大きなザルドに身体を掴まれて身動きが出来ない。

もし、抵抗すれば地表でぺちゃんこだろう。


「コウ殿!抵抗しないでください。

隙を見て…」

言いかけで固まった。

ザルドとコウ殿が会話をしていたからだ。



「え?何?鳶が何の用なんだよ!!

えーー!レイバンに一大事だって!!分かったよ。行けばいいんだろう。落とすなよ。」


レイバン殿?

一大事??


では、もしやこのままテーレント行きなのか??



しかし、一番の疑問は何故ザルドと話せるのですか??


コウ殿…侮り難し。

(ルスタフ…すまん…)心の中でルスタフに詫びる以外俺のするべき事はない。


二度とやりたくない出来事第1位になる大飛行。

これからが本番だった…



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