海へ、
ーコウ視点ー
宿屋の調理場でゼンさんに食べさせたい物を作っている。
好物がいいよね。
で、カレーですが…そこは港町。
海産物入りで栄養満点!!
ゼンさんは昨日からようやくベッドから離れて食事に来られるようになってホッとした。
ゼンさんはすぐ「大丈夫」とか言うから信用ならない。
今日も沢山食べて貰おうっと!!
カレーは大量に作るに限る訳で近所の人も呼んで賑やかにやっていると。
子供達のお喋りが耳に入った。
「だから、俺見たんだよ!!本当だもん。」
「お前寝ぼけてたんじゃないか?海に道なんかある訳ないだろーよ。」
道…海…
何か気になる。
そうだ!一度海に見に行こうっと!!
但し、今度は皆んなに言わないとな。
その夜、カリナやバリー達と海にやってきた。
良く話を聞いたら、夕方ごろ見たと言うからな。
夕焼けはすでに落ちて辺りは真っ暗だ。
前世の記憶にある船からの明かりなどある筈もない。
真っ暗に見える海は何となく怖い。
と、言うか来てみてどうやら俺は海嫌いになったような…うーん。
その時、足元に何か影が蠢いているような気がして下を向いた。
真っ暗な筈なのに、確かに見える。
お化けにめっちゃ弱い俺が平気って言う事は『妖精』とか『精霊』とかかなぁ。
俺は影の跡を追う。
慌てた皆んなから「何処へ行く気だ?コウ!また行方不明になるぞ!!」
と怒られたから
「案内されてるんだよ、たぶん精霊?妖精?かな。」
カリナ殿の一言で足が止まる。
「それは精霊でも妖精でもありません。
この海で命を落とした者の末路です。」
ゾゾゾゾ……。
影が振り返った気がした。
俺、なんで分かるんだよ。
やだぞ、霊感とかいらない!!絶対欲しくない!!
「コウ殿。取り敢えず私が付いています。安心してゆっくりお進み下さい。もしかして何か意味があるのやも。」
えーー?
手を出されたよ??
繋ごうってか?
俺…この世界ではちょっと初めてでして。
まあ、もしかして前世でも初めてカモだけど…。
赤くなった顔は暗いから分からないし、カリナ殿は何やら真剣で全くいい雰囲気とかないし。
俺の小さなドキドキはあっけなく終わりを迎えた。
何故なら誰の目にも分かる『道』が見えたからだ。
それはまるで光で作られたような海の道。
美しいがどうもおかしい。
一箇所変な色になって気になるな。
『お主はとんでもない奴よの。
これは海の禁足地への道じゃ!人間共が忘れ去り汚されたワシの禁足地のな。』
蟹。
一緒にいた全員に聞こえた声に蟹は海へと。
「そ、そんな。
海にある禁足地など誰も知らない。」
カリナ殿の驚きは他の皆んなも同じでどうやら禁足地を荒らして漁や航海をしていたようだ。
ようやく掴めたヒントに全員が急いで宿屋へと戻る。
振り返った俺の目に蟹が海の上から手を振るのが見えた。
ちょっと旨そうだと思ったのは内緒の話。