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コウの目覚めまで…

 ーラドフォード視点ー


 港町の拠点にしている宿屋へと戻ったが、未だコウの目が覚めない。


 一目会ってから帰りたいと粘るがダメージが大きかったようだ。

 カリナ殿の必死の治癒よりも何やら『甘酒』なる物がコウの傷を癒していた。


 ボロボロのコウにあった途端、抑制していた箍が外れた記憶はあるが、そこからは正直所々の記憶になった。

 あー、街一つ壊す羽目にならず済んで良かった。

 あの時、風が運ぶコウの目が微かに開いたのを見たお陰だ。

 それがなければ…ヤバかっただろう。

 あぁ、ヨーゼストで何を修行していたやら。


「た、大変です!!」

 ん?親衛隊の確かバリーとか言うものが駆け込んで来た。

 責任感の強い彼は、今回の事態で最も己を責めていた。


 いや、真に責めを負うべきは私なのだが。

『王になる』事の意味はこう言うことなのだ。

 自覚が甘かった。


「あのー、聞いていますか?

 大変なんですけど!!」

 バリーの声が尖ってきたぞ。

 不味いな。いつもスレッド頼りで考え事をする癖が出たか。


「ですから!

 テーレッドです!!大群が現れてこの宿屋を囲んでいるんですってば!!」

 。。。

 あっ、今コイツこの親にしてこの子有りとか思ったな。


 えーと、何だったっけ。

 ああ、テーレッドだ。え?テーレッドってあのロイスが操るアレ??


 慌てて窓に駆け寄るとバッと窓を開け放つ。


 なんと。

 この数はムルゼアの比ではないな。

 敵意は見られないが、微動だにもしないとは。

 このままでは市民生活に迷惑がかかるが魔法を持って駆除するのも。

 躊躇っているとバリーから一言。


「ゼン殿が目を覚まされて、コウ殿より助けを呼んだと聞いたと。もしかこのテーレッドではと。」


 あぁ良かった。ゼンの目が覚めたか。

 ヨーゼストにおいて俺の師匠だったのだ。

 コウ共々不安はあった。

 あそこまで魔力を使って無事だった人間は未だかつていないのだから。


 ま、コウの料理があるからと信じてはいたがな。


「呼んでる。俺…呼ばれてる…」

 目が覚めたのか?

 急いでベッドへと駆け寄ると薄っすら目を開けたコウが!!!


 良かった。


 目が覚めたか。


 ん?だいぶ寝ぼけているような。


「コウ!コウよ。分かるか?」

 トロンとした表情のコウはすくっと立ち上がると窓辺へとフラフラ近づく。

 恐らく意識は覚め切っていまい。


「あ、助けが来てるぞ。これでアイツらを懲らしめられる。行けーー!!テーレッド!!」


 コウ!!

 ま、待て。その号令は不味いような…て、手遅れか…。


「キャーー」


 けたたましい悲鳴はテーレッドの大移動にあるようだ。人間を襲っていないから胸を撫で下ろしたが何処へ行こうと言うのだろう??



 港町から駆け出すテーレッドの群れの後には…あり得ない光景が!!

 テーレッドの天敵ガバラ(異世界版の猫)が続くではないか?


 あーー鳥の大群も?

 空が真っ暗に染めてムルゼアへ…



「影!!あの後を追え!民に危害を加えるようなら容赦するなよ。」

 スレッドと心配性のプレストンが付けた影達が走り出す。


 振り返るとコウがフラッとまた、倒れ込むところだったので慌てて手を出して抱きとめる。

 ベッドへと寝かせると寝息が聞こえる。

 また、眠ったのか。


 カリナ姫に言わせると、治癒が効くと言うよりは眠りで治す力の方が上回っているのでもう少し眠らせていた方が良いと。


 聞きたい事がある。

 目覚めたコウを見たい。

 心配な気持ちを抑えて振り返る。


「バリー殿。後を頼みます。

 コウが目覚めたらテーレッドに何を頼んだか尋ねて私まで報告をお願いしますよ。」


 丁寧な俺のセリフに恐縮した様子のバリー殿に後を託すとムルゼアへと。

 王城でこそ、本来の仕事があるのだから。


 コウの髪をひと撫でしてドアを出る。

 振り返る事なくそのままムルゼアへ。



 数日後、バリー殿よりの報告には

『コウの目が覚めて元通りの元気さで料理を作っています。テーレッドについては良く分かんないそうです。助けてと言っただけだと。』と。


 なるほど…。



 ムルゼアへ戻った俺に和やかに笑ったスレッドから報告があった。


「貴族連合に所属する全ての家屋敷に大量のテーレッドや他の動物・鳥が襲いかかり、壊滅的させたと報告がありました。

 ふふふ。

 地方の家屋敷も全て同様との事。人的被害はありませんが身ぐるみ全てボロボロにされたと。」



 あーー、スレッドの笑顔の訳が理解出来た。



 この日より永きに渡り我々を悩ましてきた貴族連合は引退届を提出してマルス帝国から逃げ出したとか。




 マルスの民は噂した。



「天罰」だと。。。








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