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囚われのコウ!

ームルゼアの王城にて ラドフォード視点ー


「伝令!ラドフォード殿下に伝令!!」


その大声はこれまでの穏やかな時間を一瞬で破った。

それは幾年も叶う夢すら見れない兄上との穏やかな時間。

これもルーザ様の目覚めがあったらばこそだが。


「良い。通せ。」

落ち着いた兄上の声に我に返る。

この『王の間』に入れる者は限られている。

それも部外者である私宛とは。


もしや…


「巫女姫カリナ様よりの伝令!


港町よりコウ殿が誘拐される。

その際にピピランテの長ゼン様も同じく誘拐されました。

ゼン様については、誘拐される直前、魔力の極端な弱体化が見られたとの事。


バリー殿始め親衛隊の調査より『貴族連合』によるものである可能性大との事。


助力を願う!


以上であります!」


やはりか。

こんな国全体の、いやこの世界全ての危機にあってもまだ己のみとは。

そこまで堕ちていたとは。


コウ。


無事でいてくれ。必ず助けるからな。



「兄上。ここは私が出るのが最善かと。

この王城を出る許可をお願いします。」


兄王は一瞬、戸惑った表情をしてその後きっぱりと言い切った。



「お前の覚悟とはそのくらいのものか?

王とは『待つ』『耐える』『信じる』の 連続となるもの。己は動かぬ。

しかも望む結果は得られない事の方が多い。

息子といえど」


分かっている。それでも…心の葛藤を吐露する前に兄王の言葉を遮る声がした。


それは予想外の方からのものだった。


「ふふふ。今更何を仰っているのやら。

貴方が今までした事を思えば何程の事もないでしょうに。

コウ殿がおらねば既にこの城も無事ではありますまい。

しかも私の恩人。

貴方が動いてこの危機を修めなさい。

『引退』など働いた者にしか与えられないのですよ。」


「したが」「黙らっしゃい!!」


義姉上…何という迫力!

それでも言い募ろうとする兄上も中々だが。

俺の出る幕とてないな。


沈黙する緊張のひと時を破ったのはこの部屋で初めて発言した男。


「陛下。その地位を危うくしても行かれますか?」


覚悟を問うようなスレッドの言葉に俺は自分の覚悟を述べた。


「スレッドよ。息子一人救えない人間になど誰が付いていくものか。

息子を救って、堂々と王となる為に戻って来るさ。」


静かな笑むスレッド。


「さあ。お行きなさい。

これを授けましょう。この『葉』の色が変わったら側にコウが居るはず。

コウを頼みます。彼はこの世界の鍵を握る者なのですから。」ルーザ様より不思議な色の『葉』を受け取った。虹色の葉とは…



少し青褪めた兄王も頷く。


葉を大切に握りしめて走り出す!


コウ!今行く!踏ん張れ!!

心でコウを呼びながら。。。



ーコウ視点ー


「おら、お前は言われた通りにしてればいいんだよ。逆らってるんじゃないよ!!」


ドスッ!!

バスッ!!



痛っー。

逆らってないし!!

痛いから身動きしただけじゃん!!


あ、また口が切れた。

鉄の味を噛み締めながら痛みをやり過ごそうと必死になる。


気を逸らそうと何とか首だけ動かして周りを観察すれば古い家の土間に転がされていると分かった。ひとつだけあるドアは隣の部屋へと繋がっているらしいが今この部屋にいるのは三人。


怪しい黒覆面。。センスが感じられないし。



あーーー!!

それにしても痛い。

こんなに痛いのは歯痛以来だよ。

あんまりの痛みから気絶出来ないでいると黒覆面は暴力に飽きたのか隣の部屋へと移動した。


暴力から解き放たれて肩の力が抜ける。

吐き気と痛みを逸らそうと、色々考えるけど本当は痛みだけで頭の中がいっぱいだ。

だけどグッタリと気絶したままのゼンさんに手を出されるよりマシ。


乱暴な麻袋運びは俺にもゼンさんにも過酷そのものだった訳で。

ゼンさんはせっかく元気になりかけてたのに。

再び気絶して顔色もまた白くなりつつある。


それにしても食い込む縄であちこち痛い。

手首も足首も固く縛られて身動きも取れないとは。

もぞもぞ縄抜けに挑戦していた俺にか細い声がした。


「今動くのは得策ではありません。

治癒魔法は苦手なのですが少しなら効果もあると。」


た、大変だよ!

今の状態で魔法なんて使ったら。


と、止めなきゃ。

でも大声を出したら奴らが来る。


そ、そうだ。

あの事を言えば。


「た、助けが来ます。だから今はもう魔法は不味いです。」


「た、助け?」


ま、身動きが出来ない状態では信用ないよな。

でも確かに助けを頼んだから。



頼んだぞ!


『デーレット』!!




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