テーレントではーレイバン視点ー
ーテーレントにて レイバン視点ー
「長!ヘレの予言通りでベベント部族の近くに闇影獣が出たとの先行部隊からの連絡です。」
上空を舞う『風鳥』が空を旋回している。
まるで急かされる様なその姿からもまた、大量の闇影獣だと全員が覚悟する。
その時!
「長!伝令です!!」
情報部隊を率いているユテが戻って来た。
何やら箱を抱えてるが。
「ラオ殿から『防虫煙玉』の差し入れとか。
手紙が添えられています!!」
遠くから聞こえる不気味な足音が、闇影獣の群れが近づいているとジワジワ焦りを生む。
皆からの刺す様な視線を無視して手紙を読む。
『コウが作った闇影獣を倒すもの。
使い方は下記の通り。 ……。』
コウ!
握り拳に力が入って爪が皮膚を破る。血の流れるのも気にせず箱を覗くと。
何という数。
「今からベベント部族に向かうが、こちらには只今秘密兵器が届いた。これで我らの勝利は決まった!!」
疑心暗鬼な部下たちを連れて駆けつければ、今までの比ではなく大小数百の闇影獣の姿が!
やはり奴か!
新種は決して姿を見せない。
だがこの様に闇影獣が纏まるとかなどあり得ないのだ。だから奴は必ずいる。
安全地帯から見てるのだ。
我らの弱点を。
個々の能力は高いが人数が少ないと。
その為のこの量。
もし『防虫煙玉』が届かなかったら…。
風を操る異能者を前面に立たせて一気に叩く。
『風よ。煙を運べ。』
あちこちで唄われる風の唄に操られて『防虫煙玉』が大群に到着した。
ドドドド!!!
全員が一緒目を疑った。
その煙に触れた闇影獣はそのまま倒れたではないか!!
風を広げれば、その大群は一瞬で全滅となる。
ある意味ドン引きになりながらも、味方の顔色を伺えば間違なく真っ青だ。
後ろにいた闇影獣がどんどん逃げていく。
これも奴だろう。そんな知恵があった試しもない。『防虫煙玉』の威力を知っているのかもしれない。
覚悟を決めていた仲間達から歓声が上がる。
ようやく、実感したのだろう。
今、形成逆転したと。
どんどん巧妙になる奴にかなり仲間を失った。
部族にも沢山の被害が出た。
その夜の事だ。
なんと、テントに現れたのは『麗』?
『港町へ向かえ。海の神がお前のモーリフを必要としている。
ここは『防虫煙玉』があれば良い。すぐさま向かえ!』
えっ。
戸惑いが起こる。
既に主様の姿は無い。
だが、この命に従うには自分には責任があり難しい。特にギルドに所属していること自体に理解が無いのだ。
更にコウについての説明をするもトラッデとしての矜持が理解を阻む。
悩んでいるレイバンの元にミゲルとヘレが近づく。
「長。
実は我々にも主様より命が下りました。
しかし、主様の命を聞くまでもありません。
『防虫煙玉』全てはここに答えがあるではないですか!
あれが無ければ我々は今ここにいません。
守れなければテレッドでは無い。
そうでしょ。恩を返す時!行ってください。」
ミゲルの言葉に深く頷くヘレ。
皆の姿も後ろに見える。
俺ばそのままモーリフを背負って馬を走らせる。
モーリフ。
それはテーレントのみで使うもの。
しかし主様の命であれば…。
時代が動いているのを感じながら、異能を使う。
馬は風と同じような速さで進む。
ールスタフ視点ー
「え?オリドってトックス商店の人なんじゃ?」
コウの問いかけを 聞きながら俺は、あっと声を出しそうになる。
もし、全く笑ってない笑顔でオリドさんが俺を見なければ声は出てた。
そうだよ。思い出した。
マルス帝国にその人有りと言われた『ラクゥド商会』の番頭。
彼が落とさない商談は無いと言われたあの『鉄人商人』か?
決して屈しない商談の仕方でそう噂されてる。
睨まれたらまず商売は出来ないとか。
こ、こえーよ。あの笑顔が!!
「ええ。トックスも私も双方ラクゥド商会の中で活動しているのですよ。
まあ、ちょっと商売の話ですから出て参ります。」
「へー。会社ってやっぱ、色々あるんだな。
行ってらっしゃい!」
カイシャ??
また知らない言葉だ。
コウの語彙はいったい。。
あー、あのお兄さん終わったな。
コウや俺達の前で身バラしとか。
笑顔がだんだんブリザードになってるしな。
『防虫煙玉』を売ってくださいと頼んでたけど、やり方がな。
商会を通さないで体当たりでは。。
さっき。。
「『防虫煙玉』いるのなら。」
とコウが言いかけた時のオリド。マジ怖し!
「専売特許とは、商売は全てこのオリドに任せるとの事。コウ殿から買い上げるのは私のみで。」
「あっ、そうか。
ごめん。専売特許ってそうだったよ。うっかりしたなぁ。」
うっかり。
それで済ませるコウはどうかしてる。
こんな夜叉みたいなオリドに全然気付かないとは。
鈍感って。。。
ある意味コウを尊敬した日だった。。