イカ!!やっぱ最高でしょ!!
ーコウ視点ー
祭りだ〜!!
いやぁ、ここまでするつもりは最初はなかったんだ。ちょっと調理場を借りて俺も一品付ける。
そのくらいのつもりだった。
あれがいけないんだよ!!
イカ!
イカですよ、これは興奮するでしょ!!
生のイカなんて!!この世界は魚の流通があまりない…ましてや生の魚なんて見た事ないから!!
俺が凝視していたら今度仲間になったオリドさんが交渉してくれたんだよ。
あの人只者じゃない!
あっという間に、宿屋のオヤジは機嫌よくイカぜーんぶ譲ってくれたし、店先も貸してくれた。
ま、イカときちゃ『炭火焼』するしかないっしょ。
ラオ達に手伝ってもらって店先に炭火焼の用意をする。
宿屋のオヤジも何をするんだとじっと見てるし。
まあ、美味いから驚くなよ!
まずはイカの丸焼き!
いやぁ、いい匂いだよ。
おや、人が集まってきたか?
次はイカ焼き(俺頑張ってソース手作りしたから!)
食べた人が「美味い!」「美味い!」と繰り返すからどんどん人が来るよ。
やっぱソース匂いもいいよな。
横ではイカ飯にイカゲソを揚げてはビールのつまみに。
初めて勇気を出して飲んだ人が
「何だこれ!美味すぎる!!」
と叫んだからボルタの名物だと宣伝しておいた。
その他炭火焼は、焼きおにぎりと焼き芋、焼肉と焼きトウモロコシも付けた!
子供達と食べれるし、お土産も出来るしな。
あれ?こんなはずじゃ。
人だかりが凄すぎる。
ラオやカリナが人の整理をしてるけど大混乱っぽい。ま、不味いか。
そんな時、程なくして戻ってきたゼンさん達かあっという間にテーブルを宿屋から出してきて広場をするとと、皆んなが落ち着いて座り出した。
あー、良かった。ちょっと焦ったよ。
ようやくゼンさんやラオ達もありついたみたいで「こりゃ美味い!」と頬張ってた姿がみえてホッとした。
ナット君も急いで裏方に回って、焼きおにぎりを頬張りながら頑張ってくれたからかなり助かったよ。
いつまで経ってもどんどん集まる人に狼狽えてたら、スタンさんが後を引き受けてくれた。
今あるものが売れたら終わりにすると。
宿屋の自分の部屋に着くとドッと疲れが襲ってきた。
俺はのそのそとベットへと潜り込んだ。
あっという間に来る睡魔に飲み込まれる寸前、何か音が聞こえた気がした。
カチカチとハサミを鳴らす様な音。
ね、眠い!!
明日にしよ!と。
翌朝、音のした窓辺を確かめたけど何も無いからやっぱ気のせいかな。
うーん。それにしても潮の香りが凄いな。
海〜!って感じ。
翌朝、上機嫌の宿屋のオヤジにデザートまでご馳走になって満腹になり過ぎたお腹をさすってると皆んなの深刻そうな相談に俺も一言。
「な。海に出るのは無理でも船はあるんだろ。
俺、見た事ないなら見学させてくれないかなぁ。」
あ!ラオめ。ため息とは失礼な!
「あのな、遊びに来てるんじゃないだろ。
とにかく急がなきゃ月が出てしまうよ。」
皆んなはラオの意見に頷くけど、スタンさんは違うみたいだ。
「私は海に詳しくありません。とにかく現地に行って見てみる必要があるのでは?」
良い意見がないのか、とにかく現地に向かう事になった。
そしたら、宿屋の客の一人が。
「お前、船を見たいんだろ。
俺の船へ招待するよ。何せ昨日は美味いもの食わしてもらって今朝は古傷も痛まないで上機嫌なんだよ。昨日はあの看板にすっかりやられてたのになんだろ、明るい気持ちなんだ。」
髭面のオヤジは、そんな事を言いながら船へと案内してくれた。
いやーオヤジ…悪かった。
うん臭いと思った俺が間違ってたよ。
ど、どデカイ。船ってこんなにデカイのか?
ズンズン案内してくれるオヤジはゼンさんとはお知り合いなんだとか。
船の中は、やっぱ男心を擽るものが多いよ。
甲板から見える海は本当に綺麗で静かで。
これで、海が荒れて船出が出来ないとか思えない。
随分前から、海の様子はおかしかったらしい。
海が急に荒れては船が流されるとか。
10艘に2艘くらいしかヨーゼストに行き着かず、沈没こそないが大破して形で流れ着く船が殆ど。
このままではいつかは沈没する。
苦渋の決断らしいけど。
そんな話をぼんやり思い出しながら船尾に付いた時、おかしなものが目に入った。
ん?
「この箱みたいなのは何ですか?」
船尾に付いたいた箱は所縁は分からないが、必ず船に付けるものだとか説明してくれた。
うーん。
中が気になる〜。
俺、そんなに態度に出てたか?
含み笑いのオヤジに
「見てもいいぞ。」と笑いながら言われる有様。
もー、いい!!
気になるものは、気になる!!
貝殻か?
中には貝殻が一つ入ってるだけだった。
その大きな貝殻には絵が描いてある。
海に大きな橋が架かってその向こうに岩の門みたいなものが。
門?
えーと、何処かでこの形……。
「あ!これ!ニーハ村のあれだよ。ルスタフ!そうだよね!」
覗き込むルスタフの顔色が変わる。
「あ、あの怪しい岩の門すよね。
あれってあの後探しても見つからなかったじゃないですか!
あれ、やっぱり曰く付きだったすね!!」
いつもの喋り方と違う焦ったルスタフに俺が含み笑いする番だよ。
「えー。俺が見に行った時はあったし。
方向音痴とか…。ルスタフもまだまだだなぁ。」
真っ赤な顔のルスタフが何度も抗議するけど、そうする程笑える。
岩の門とか消えるわけ無いじゃん。
考え込んでいたオヤジが一言。
「もしかして言い伝えは本当だったのか。
この貝殻には『海の神様への道』が描かれてると言うのは。」
海の神様?
シーンと静まり返った皆んなにスタンさんが一言。
「取り敢えず宿屋へ戻って考えましょう。
もしかするとヒントを掴んだのかもしれません。」
貝殻の絵をルスタフがあっという間に紙に描いた。そっくりだ。
上手いじゃん!ま、俺と同じくらいか。
ルスタフの絵を持って、俺たちはゴワ港町で領主の様な仕事をしているリーズ代表を尋ねる事にする。
お土産は、女性だからカップケーキにしたよ。
喜んでくれるかなぁ。