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蟹に出会う?

ーコウ視点ー


「あー!!

う、海だよ、海が見えたよ!」


馬車から見えた海に思わず身を乗り出した時、うっかり落ちそうになる。


「あ、危な!」

手を伸ばしたルスタフがいなかったら俺、落ちてたよ。はー、びっくりした。


あまりの俺のはしゃぎぶりに港町まであと少しだからと海岸線へ向かってくれた。

海が近づくにつれて気分は上がっていく。

間違いない『海』の魔力は余程強力なんだ!


おかしいな?

でも俺だけ?

あ、ナット君もか!初めての海らしいナット君も目をキラキラさせてる。赤い顔して何か可愛いよな。やっべ、男子なのに俺ってば…


気を取り直して海岸を歩いてると海の香りを顔いっぱいに浴びて、目を閉じた。


カサカサ?

カサカサカサカサ??


目を開ければ『蟹』だよ!

おー、あれ美味いんだよな。


よーし。


中々素早い蟹のヤツに俺の本気に火が着いた!!


真剣勝負ばかなりの距離となる。

くっそー!ちょこまかと。


いつの間にか大きな岩の穴(まるで岩の門みたいだな)に逃げ込もうとしていたのを追い込んだ!


「おい、コウ待てよ!」

後ろからルスタフの声がした気がするけどこちとら真剣勝負の最中だ!


穴を潜った途端、蟹を捕まえた。

『ふふん、お前が単純で助かったわい。』


ん?何か聞こえた気がしたんだけど?

あ!手につかんだはずの蟹が!!


「コウ殿。何かやばいですって。ここ変ですよ。」

ルスタフにそう言われて振り返ると仲間達の姿も無いがそれ以上に風景に違和感がある。


何が…。


とにかく、二人で近くの村へと向かった。

凄い寂れた漁村だ。


「あんたらこんな村に何の用だ?」

魚獲りの為の道具の手入れをしてるおっちゃんにそう言われた。


「ニーハ村」

それがこの寂れた漁村の名前。

ん?

何かルスタフが焦ってるぞ?


村人から話を聞いたらここは過去の世界だと言い出したよ。

そんな訳ないだろ。


皆んなとはぐれてルスタフは精神的に弱ったんだな。まあ、人には誰でも弱る時はある。

俺がしっかりしなきゃな。


村人の顔色は悪く元気がない。

廃村寸前だと言うのだ。

こんな時は!!


味噌汁!

(小魚入り。捨てるって言うからさ!)


美味しいものは、誰でも元気にするからな。

おー、村中の人が出てきたみたい。


困ってる話を聞いてたら俺、ある事に気付いた。


「なあ、あの魚も捨てるのか?」

沢山の小魚が放ったらかしになっていて気になった。


「あれか?あれは売れねぇし、食えねーしよ。

海に戻すんだ。ま、捨てるとも言うわな。」


あれを?勿体無いよ。


ん?あるじゃないか!あれが良いな。


興奮する俺にドン引きの村人から小魚を分けて貰う。


あのルスタフがいるんだから。

あれを作って。


不思議と欲しい木があちこちに転がっていたので『樽』作り。竹のタガをはめるのを説明したら、ルスタフは疑問に思ってるみたいだけどドンドン作ってくれた。


5樽。ここに塩と魚を入れてピッチリ蓋をする。

誰も使わない小屋に樽を置く。(臭いがな。)


準備は万端だ。

あとは帆立の貝柱を貰ってと。


干し貝柱作りをしてたら、ルスタフは何処かへ行ってたみたい。


「ですから!この村から何故か出れないんですって!!やばいでしょ!ど、どうすれば…」


うーん。不味いぞ。ルスタフが完全に参る前に皆んなを探さないとな。


「ですから俺は弱ってないって!」

言い争う俺達に村人が晩飯を用意してくれた。

俺も果物や牛乳などを『無限収納』から出す。


凄い喜んでくれたよ。

翌朝、出来上がった干し貝柱で雑炊を作る。


「ね!だから言ったろ。この貝柱を使えばきっと村は建て直せるよ。」


最初は疑ってた村人もこれで村が立て直せると驚きと喜びに溢れた。俺…照れるよ。

あ!ついでにちょっと小屋の保管を頼む。


とにかく皆んなをまずは探すからと。


固く約束してくれた村人に、手を振って別れルスタフとあの岩の辺りに来たら、あいつがいたー!


『蟹』!!


また追いかけると今度もまた逃げられた。


「ルスタフ。また逃げられたよ。」


ん?ルスタフが固まってる?


またか?んー。やばいぞ。


あ!皆んながいたし。ほら、やっぱりいたじゃん。


だけど、どうしても合流した皆んなと話しが合わない。

俺達とはぐれたのは一瞬だったと言うのだ。

そんなはずは…。


そんな俺達はとにかく近くにある「ニーハ村」へ。


「あ!コウさん。お久しぶりです。三年ぶりですね!」


えーー!マジか。

俺。ついにタイムスリップ?

何が冷や汗が背中を流れるけど。


あ!あの小屋は?


「ちゃんと守ってます。臭くても大事にして。

何せ干し貝柱のおかげで村は救われたのですから。」



小屋には思った通りの匂いがした。

出来てる。俺はさっきのショックも忘れて蓋を開けた。


濁った汁。これを濾して煮れば『魚醤』の出来上がりだ。

そう言うと村人総出で手伝ってくれたのですぐに完成した。


「あの臭いのがこんな美味いなんて。」


魚醤を使った『炒飯』『炊き込みご飯』こちらは干し貝柱も入れた。


おー、売れたよ。

バカ売れだ。


名物がもう一つ出来たね。と言うと泣きながら村人が喜んでくれた。



でも一番のお得は俺。


『魚醤』


これから料理のレパートリーが広がるじゃん!


あの『蟹』め。今度見つけたら絶対に…



『ふふふ。』微かに笑い声がした気がして俺はふと振り返った。



ルスタフの独り言


「今回ばかりはちょっと引いた。あれを気にしないコウ殿って…」





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