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ドルゼ村で!

ーコウ視点ー


港町は遠いよ。


幸いカリナの様子は安定していて、毎朝の鍛錬も欠かさないから大丈夫だろう。

それにしてもカリナはどこを目指してるのか?

あのバキバキの肩の盛り上がった筋肉を見るたびに俺は必ず長袖着ようと決意を固める!


はー。

俺の戦闘能力は皆無だからな。

どうやら闇影獣が出る噂があるみたいで、厳重な警戒態勢で臨んでる。


ま、全く役立たずで休憩のたびに森で食べられる草を摘んでるくらいしかする事がない。


ん?

街道に封鎖命令らしい。


なんか揉めてるな。


「ですから通して下さい!この先のドルゼ村の者です。緊急事態なんです!!」


「だから、さっきから言ってるようにこの先に闇影獣が出て危険だから行かせる訳にはいかない。」


封鎖している兵士は取りつく島もない様子だが、村人の方が食い下がっる。

あー、予想通りダメだったか。


近づいて話を聞いてるスタンさんの側へ。


「はい。ですから長引く封鎖に食料不足もさる事ながら病が蔓延してこれでは村が。」


膝をついて嘆く彼に同行を申し出る。


「な、俺達沢山の食べ物持ってるから一緒に行こうよ。」

俺のセリフに皆んなからも同意が続く。


よーし。

久しぶりに『出店 田中食堂』やるかなぁ!!


村へ着いたら食堂もそうだがそれ以上に風邪が蔓延してるみたいだ。


多人数でカリナ1人では手が回らない。

だからカリナが薬草を配るが持ってる数はあまり多くない。


困った表情のカリナ。

これ以上無理は禁物だ。

どうしたら。。


そうだ!

2日前に森で採取した『葛』があったぞ。

あれは薬草だ。


俺は沢山ある葛を薬草として配りながら、同時に食事も用意した。


まー、お粥が定番でしょ。

それにフレッシュ果物。


林檎をすりおろしは子供達に喜ばれたし、大根の蜂蜜漬けは喉に良い。

久しぶりに腕をふるって何か楽しい。


元気な村人も協力してくれてよかった。


「だから、まずは清潔と安静が一番。次にしっかりと食べなくちゃな。

そうだ!生姜湯も作ったからこれは発汗作用があるから熱の人に。」


説明は村人以外にもウェスさんやバリーなんかも聞いてたよ。

散らばった仲間達が各戸に配布してくれて夕方にはひと段落ついた。




だけど、その夜思わぬ事態が発生した。

闇影獣が村を襲ったからだ。


病人の多い村は避難もままならない。


村の入り口にスタンさん達が武器を持って防いでいるが、かなりの数がいる。

唸り声が近づいてくる。


ま、不味いぞ。ど、どうすれば…。


そうだ!

杉の葉だよ。


俺は急いで杉の葉を沢山集めて火を付けた。

前線では皆んなが戦ってる。

煙を上手く撒かなくちゃ。そうだよ。団扇だ!

大きなバナナの葉ような物を拾って煙を近づく闇影獣へ向ける。


獣は煙を嫌う。特に杉の煙は大量だから巻かれればなんとか。

不安で足が震えてるけど、やるしかない。

なんたって、残ってるのは俺とミックとナット君だけなんだから。

ミックの戦闘能力は俺よく知らないし。


「なるほど。コウ殿のアイデア理解しました。自分はかなり弱いですが風魔法を使えますから、闇影獣へぶつけてみます!」

突如ミックが前に出たから俺は急いで奥の手出した。

「あ!それならこれも!!」と。

一房の草束を入れだ。


その直後ミックが風魔法を唱える。


『我を導く風よ。その力を持って敵を破棄せよ。』


小さな煙の竜巻が闇影獣へ!


ど、どうだろうか?


ドドーッ。


はー。良かったよ。マジ焦ったって。


「コウ殿。この煙って。。。」


なんか固まってるミックに種明かしをした。


「うん!毒草だよ。本来なら防虫にしてるけど合わさったら最強になったな!」


ミックは暫く固まってけど、ギクシャクとした動きになりながらも煙を操って前線へと繰り出した。


それから一瞬で勝敗が決まった。

ミックの風魔法すげー。

一瞬であの数の闇影獣を倒すなんて一番強いんじゃないか?


無事防いだ俺達は、村人の手厚いお礼の嵐にさらされながらも2日村に残った。


別れ際に俺は『入浴剤』を渡した。


「これさ、『蓬と柚子』の『入浴剤』だよ。

風呂に入れると風邪予防になるから。使ってくれよ。」


まだ病人の多い村を後に出来たのは封鎖が解かれたからだ。

ま、あの数の闇影獣を倒せば封鎖の必要無いわな。


お土産に貰った『枇杷の実と葉』をホクホクしながら袋にしまうと俺は手を振って別れを告げた。


「またなー。あったかくしてお大事にー!」


皆んなも口々に「お大事にー!」と繰り返す。


見送りはいつまでいつまでも続いた。


ーラオ視点ー


親父がラドフォード様に呼び出されて後を託された俺の両肩にはかなりの重圧がかかった。


幸いスタン殿がその任を助けてくれたし、まあゼン様までご一緒だから心強い。


あのコウを留めるには仲間が必要だからな。


と、思ったら早速これだ。


『御使様』


正直、再びお会いするのは遠慮したかった。

心の底から遠慮したかったよ。


その後は何とか無事に旅が続いていたが、やはり闇影獣はこの辺りまできたのか。

だが封鎖はやり過ぎだ。


確かこの辺りは貴族連合のメンバーの領地だったな。奴らの考えそうな事だ。

小さな村の事など埒外なのだろう。


すぐさま村へ行くとコウが宣言して全員で後を追う。病とは何か気になるがコウの事だ。

そんな事も全く考えず困った人を見てすぐさま決意したのだろう。


幸い風邪だった。

カリナが薬草を配り出すと、案の定コウが付加料理と付加薬草で風邪の一掃をしていた。


この分なら数日で全員が回復するだろう。

安堵の中にいた我々にその夜事件は起きた。


闇影獣が、大量に出て囲まれたとは。

この数。正直このメンバーを擁しても勝敗は五分なら上等だ。


俺如きではな。こんな時レイバン殿がいてくれたらとつい考えてしまう。


刀を握りしめ、構えるとそんな迷いも消えた。

一心不乱に倒し続けてこの異常さに気づいた。


「スタン殿。まさかの操られているのでは。」


「間違いないだろう。問題はここを狙ったかどうかだ。コウ殿達が心配だ。」


頷こうとしたその時!


突然コウの側に残したミックが飛び出してきた。

スタン殿から戻れ!と命令の声が飛ぶがミックは微動だにしない。


そのまま風魔法を唱えると、驚く光景が。

煙が薄ーく闇影獣を覆った途端に全ての闇影獣が倒れていた。


「コウ殿考案の防虫用の煙だそうです。」


答えるミックの茫然とした表情に、ショックが冷めやらないと理解する。

あー、昔俺もそうだったよ。


コウはその後も『入浴剤』とかプレゼントとしていた。あれも付加製品で間違いないだろう。



村を出た後で、封鎖について親父宛に手紙を出した。ま、奴らの末路は親父のストレス解消に使って貰おう。とな。





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