王城にて!
ーコウ視点ー
レレベ村に戻った俺はある事に気づいた。
いやぁ、あんまり寒くない?
いや寒くないは言い過ぎた!寒いけど、耐えられないほどではなくなったような?
「これが『神火』の効果とは。」
なーるほど!
そうだったのか。
寒さに弱い俺がホクホクしているとスタンさんが近寄って来たぞ。
なんか用かな?
「コウ殿。『ヨモギマツリ』をする予定と伺いましたが少しだけ先延ばしして頂いて王城へお越し下さいませんか?」
いや、そりゃ俺は『蓬』にこだわってるけど王様の事は忘れてないよ。
あんなにマデリン王女に頼まれたんだから。
スタンさんはそんな俺の返事に嬉しそうに笑って、手招きをした。
ん?
あー馬車の用意が出来たんだな。
あれ?
まさかのあれじゃないよな……。
見ると物凄く豪華な馬車の前に立ち並ぶ騎士二人。
まさかの赤絨毯??
この世界でもあったかのか!!
スタンさんは意外にも強引で王様よりの配慮とか言い出して乗ってくれと急かすし。
仕方ない…俺、頑張ったさ。
この赤絨毯歩く(ある意味罰ゲーム的な)と、レレベ村の人から今度は拍手喝采とか。
なんか全く違う疲労感いっぱいの俺には、次なる罰ゲームが!
だってさ、王城の広間へ着いた俺の目の前がヤバイ事態になってるんだよ。
ズラーッと並ぶ無双騎士団のカッコよさは、いいさ。
でもその人達に通る度に、最敬礼のお辞儀を受ける俺のハートは寝込むレベルで疲労中です!!
「コウ殿。メルゼウス陛下入場です!」
やっと着いた先頭で、お付きの人の大声にちょっと驚きながらも慌てて頭を下げた。
「頭をお上げください。」
王様の言葉に頭を上げて俺、固まってます!
『石化』は?あれ??
足先に僅かに『石化』を残したのみで他は全く影響無し!
いや、それどころか若返ったんじゃ??
「これも全てコウ殿のお陰です。
『神火』の事はスタンより聞き及んでおります。
この国の王として、何と感謝すれば良いか。」
明るく笑う王様の顔にちょっと嬉しくてなる。
成功して良かったよ。
『ふん!そんなもので満足か!』
おーカエル?
少し前『神火』の辺りから姿を見ないと思ってたらいつの間に俺の肩に??
「これは土地神様。お姿を拝見出来恐悦至極にございます。」
まさかの跪く王様??
このカエルにーー!!
『ふん!コウは尊敬が足りぬのだ。
ま、いい。お主のその足は完治出来るぞ。
コウの持つ『赫い石』とわしの『神水』を併せればな。』
『赫い石』??
何の事だ??
あーー!!
確か祠で貰った様な…??
ん?
何か視線が痛いような。
気にしないぞ!気にしちゃダメなヤツだよ。
おじさんの目線やスタンさんの目線とか。
困ったヤツ的目線はやめろよー!
「私にその価値があれば。それは土地神様のお決めになる事。その意に従います。」
跪いた状態のまま王様は言うけどさ、カエルは上げる気があるから言い出したと思うんだけどな。
よし!
「カエル。この間作った蓬饅頭美味かったろ?
その改良作『蓬団子』と『蓬ケーキ』だ。
『神水』と交換でいいだろう。超美味いし!」
ん?後ろの方が騒がしいような。
「フケイ、フケイ」って?
フケ落ちてる?
ちゃんとリンスしたのに。
『お主ら、コウに言っても無駄だ。
でも、まー良いだろう。もう一つ約束せよ。
これからも度々訪れては、我に新たな美味いものを捧げよ。
良いな。』
カエルめ。
言うだけ言っていなくなるとか。
ん?王様の目の前に一つのコップが??
石の入った水だから、たぶんカエルはやる事はやったんだな。
じゃあ、俺も約束守らなきゃか。
『赫い石』入り水を飲んだ途端に、王様は全ての『石化』から解放された。
地響きのような歓声が後ろから上がる。
わ、忘れてたよ!
無双騎士団の歓声は心からのもので王様は、本当に愛されてるのだと感じてつられて俺まで泣きそうになったよ。
その晩は夜通し祝宴が開かれて、無礼講とかで皆んなはしゃいでた。
俺だけそっと抜け出してあの『池の周り』へ。
『蓬団子』と『蓬ケーキ』を持ってさ。
ついでに『蓬餅』も付けたよ。
あ、でもお茶入れてやるの忘れたな。
次でいいか。
その後、土地神様の『池』へ入れる者は厳選されたが、コウの料理さえ持っていればフリーパスだった。と。