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『天の火』を汲み取れ!試練の門が開かれる

ーコウ視点ー


『では、試練の門をくぐるが良い。

お前達が目指すものは『天の火』だ。

真っ暗闇の道を進み行けばやがて、光の群れを見つけるだろう。

そこからヒントを得よ。

『天の火』を汲み取ったら此処への道が再び開かれる。


その心が定まりし者から進め!』


喋る巨大鬣猫(たてがみねこ)は自分達の間にポツンとドアを出した。


怪しい……。


道に突如現れた木のドアは、古ぼけたアパートのドアのような風情だ。

それに、単に置いてある様子はドッキリ的に見え怪しさ抜群だ。


俺は、意を決してドアノブを掴むとヒンヤリとした感触を感じながらゆっくりと回した。


ガチャ。


ドアを開いた瞬間、俺はいや、俺達は真っ暗闇の世界にいた。

焦る俺の目の前に、一つの灯りが見えた。


ゼンさんだ。

掌の上に乗っている灯りは、魔法使いのそれだろう。


お?

続いて熊も真似をする。


たった二つの大事な灯りを頼りに光の群れを探しに進む事にして、早速行き詰まる。


何処へ行けば?

真っ暗闇の世界は、何処を見回しても光の群れなど見えない。


キョロキョロする俺にレイバンが「見つけた」と。


えーー?

驚く俺に、カリナも「私も見つけました。」


目の良い人達はいるんだな。

二人の案内で進むも、暗闇は足元がおぼつかず歩みは遅い。


ん??

ヒョイとな。

えーなんで担がれた??


な、なんと足を引っ張っていたのは、俺と弟子のナット君のみだったらしく。

俺はレイバンに。

ナット君はウェスに担がれております。


おー、確かにスピードアップしたよ。


やがて俺の目にも光の群れは、遠くに見えてきた。

暗闇の中で見つける光の嬉しさは半端ない。

自然と足も早まり(勿論、俺とナット君以外のな!)あっという間に光の群れの直前に到着。


俺達も降ろされ、歩き出して驚いた。

なんと、光の群れは提灯の灯りの群れだったのだ。


それも、屋台に下がる提灯の灯りで自然とテンションが上がるよ。

まさかのお祭り?


喜ぶ俺は、屋台を除いて更に驚く。

なんだろう?

お面を被る人達が屋台をやっていたのだ。

よく見れば道行く人もまた、お面。

狐の面はまるで顔そのものようで不気味に思え、背筋がゾクリとする。


その上、屋台の食べ物はゲテモノばかりで正直不味そうだ。


「いらっしゃい。珍しいお客さんだ。

何にします?」


尋ねる店主に材料を聞くと「企業秘密でさ。」

だと。


その後、どの店を見てもゲテモノしか売られてない。その上、誰も同じ口調で同じ事しか尋ねないから作戦会議となった。


「どう思う?あれは食べられるか?

食べなければ事は進まないのか?」


ヒントどころか鸚鵡(オウム)のように喋る異様さはそのままゲテモノにも共通の不信感を生む。


ガイおじさんが俺に意見を聞いたので俺は「やめた方がいい。」と正直に答えた。

考え込む皆んなに俺から提案を。


「あそこにさ、空いている屋台があるだろ。そこを借りて俺達が屋台を開けば上手く行くんじゃない?」


俺は料理人だ。

あんなゲテモノより美味いものを作れる筈。

『無限収納』さえあれば俺の腕の奮いどころだからな。


色々反対意見も出たけど、打開策がない現状ではとやっと皆んなも納得。


俺は久しぶりの祭り気分を高めようと、

『焼そば』一択で売り出し中。


「いらっしゃい。いらっしゃい。

熱いうちにいかがです?」


ソースの香ばしい香りが広がり、やがて狐の面でいっぱいになる。

お客さんが増えたので、更に目玉焼きも乗せてサービス。

意味不明のお金を貰いながらも、やる事はいつもと変わらないせいか漸く狐の面が怖くなくなった。


粗方売れたので、ちょっとペースダウンを図って、休んでる俺の目に小さな狐のお面を見つけた。


親とはぐれたのか。

お面なのに不安そうに見えた俺は、懐から飴を取り出してチビお面に渡した。


チビはちょっとこっちを見て、走り去った。


何処でも変わらないな。

やっぱ、料理は良いなぁと黄昏ていると一人のお面が近づいて来た。


「何故屋台を始めたのだ?」と。


おー、初めて違うセリフ聞いたよ。


「料理人だからな。」と。


「なるほど。ならばこれをやろう。

お前ならば上手く使えるかもしれぬ。」


柄杓??


木で出来た柄杓は、江戸文化で見たヤツに似てる。


柄杓を眺めていた俺にガイおじさんが声をかけた。


「コウ!

お前何処に行ってたんだ?探したぞ。」


えー?

だって屋台の側で黄昏てただけだよ。

と、振り向けば確かに屋台から離れた場所にいつの間にか立ってた。


んーー。やっぱこの空間苦手だわ。

そう考えた俺は、柄杓を見せて貰った経緯を説明する。


すると……。


「お前、何言ってるんだ?

小さなお面なんて見てないぞ?


それに作った途端に姿を消したくせに。」


ゾゾゾーー!!


あまりの怖気に少し身体は飛び上がったかもしれない。

やめてくれー。

今更叫びたいけど、柄杓のお陰か突然道が見えたとガイおじさんが言うのでとにかくここを離れる事にする。


ふ、振り向くんじゃなかった。


ほんの数歩を歩いただけで、光の群れである屋台村が消え失せていたからだ。


そこから俺は足を早めたよ。

すると緩やかな登り坂になっていたようで小高い丘に出た。


『天の火』は、ここなのかなぁ?

何故ならここは薄明るいからだ。

白夜のような光があるのに、遠くからは感じられないとは 。


そんな事を考える俺の目に明らかにおかしなものが見えた。


空からフラフラと火が降ってくるのだ。

あり得ない風景に、呆然とする皆んなに先駆けて俺は、やったよ。


あの柄杓で火を掬おうと前に飛び出した。


後ろから叫び声がした気がするが関係ない!!

もー、こんな場所から早く脱出したいよ。

無理!

無理過ぎる!!


レイバンの危ないの声を無視して上手く炎をキャッチ!!



パン!!


『ふむ。これほど短期間で試練を遂げた者はないぞ。良いだろう。『神火』の祠への道を開こう。』



手に持った柄杓には、未だに炎が揺れていた。





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