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いよいよソル山へ!

ーソル山 コウ視点ー


ただ今行き止まりです!

まあ、そう簡単に行く訳ないか。


細長い形状のソル山は、ほぼ崖で外側から登る事が出来ない。

山の中腹にあるらしい『神火』を祀る場所まで洞窟から行くらしい。

俺たちは、洞窟の前に来てこの『扉』にぶち当たった訳よ。


変わった山には、やっぱり変なものがあるな。


何だよ、この扉……。


ツルッツルの石で出来た巨大扉には取手なんて洒落たものは無い!

気持ちいいほどのツルッツルなだけ!

勿論、境目もボタンもあるわきゃない!


どうやって開けるのか。

いや、開かないんじゃね?


諦め気味の俺と違ってスタンさんのやる気は爆破中だよ。

ゼンさんに頼んで魔法をぶつけてみたり、レイバンの気を当ててみたりと。

ま、全く反応無しだけど。


すると、何でか俺の護衛に就任したバリーが聞き込み調査の結果を報告する。


「この扉の開け方は、昔にその方法の口伝が途絶えたそうだ。

だから、村人も誰も近づかない山になったとレレベ村の長老が言っていた。」


この熊に俺は怒ってる!

そりゃ嘘つきだからだよ。

あの後、治療して元気になったって聞いて、急いで熊の所へ見舞いに行ったら、知らない人がベットに腰掛けてて。


「あのー、ここにいる筈の熊。知りませんか?」

俺は丁寧に尋ねたさ!


そしたら、

「はっ?俺だよ。まあ、熊なんて名前ではなくバリーって名前があるがな。」だってさ。


「嘘だーーー!!!」

俺の叫びに、熊の奴ビックリしてたけど。

しょうがない!

髭をそったら、超イケメン金髪に碧眼!

漫画みたいなオチだよ、全く。


後からカリナに聞いたら、やっぱり納得のハーフらしい。

まあ、ハーフには太刀打ち出来ないわな。


だけど俺だけは、あくまで熊って呼んでる。


皆んなは話し合いが長引いてるけど、俺はチョイと草臥れて座り込んだ。

ここまでの道のりが結構険しくて、乗り物や馬なんか使えない。そのせいでひたすら歩く!

そりゃここまで6時間歩きっぱなしで、足なんかダルダル。

弟子のナット君や魔法使いのゼンさんまで楽々登ってるのを見て、カッコつけたのが痛かった。

地味に堪えた。


扉にアタックを続ける皆んなの邪魔しないように、端っこに腰掛けてたら小さな花壇を見つけたよ。

まぁ、小さいし花とか植わってないんだけど何か気になって触っていたら、ぼすっと。

ん?

丁度中央部に当たる部分に穴が開いた?

力そんなに入れてないけど、変だな。


近づいてよーく眺めてみたら、穴はかなりの深さだった。

穴ってさ、見ると何か投げてみたくなるよな。


石を投げようと辺りを見回したけど、適したものがない。

仕方なく『無限収納』を探ってたら、丁度ピッタリの石発見!


えーと。これって何だっけな??

あ、火石だ。まあ、火をつけなきゃ燃えないって聞いたし沢山あるからいいだろう。


ぽいっと。。


ゴゴゴーーー!!!!


火柱立ちました。

細いけど、めっちゃ派手に火柱。


全員の目がこっちに。

ガイおじさんの目が、不味い事になってる。

この間、攫われた時に助けを求めず料理に熱中してたのバレて怒られたばっかりなのに。


また、鬼?

やべーよ。


「コウ。お前何や」

ガイおじさんの話を遮るようにナット君の叫び声が響いた。


「キャー、扉が、扉が無くなってる!!」


甲高い声が響き渡って、全員が扉のあった前に。


ツルッツルは?

扉は左右に開いたのではない。

まさかの跡形もなく消え去ったのか?


『馬鹿。お前がやったのだろ。

扉の鍵は、あの穴にある。実際は捧げ物をして祈るのだがお前、鍵壊したぞ。

まー、取り敢えずいいか。」


えー!良くないよ。

『神さまの火』って事は、バチが当たるよ!


青ざめた俺にカリナが一言。

「それはあり得ません。女神セレーネ様は貴方を導いた方。」


まあ、カリナが言うんじゃ平気か。


真っ暗な洞窟へこのまま入るのは、危険と松明を用意して先へ進む事にした。


ずんずん進む道にちょっとお気楽気分だった。

でもそれは祭壇までの道だけ。


『神火』は、甘くはなかった。



ーレイバン視点ー


先日より行方不明だったコウの無事帰還は、レレベ村の人々の熱烈歓迎により終焉した。


怪我ひとつなく、『ヨモギ』なるものに拘る姿に普段通りのコウを見つけ安堵する。

この様な目に合ったものの中には心に傷を負う者もいるからだ。


まー、全くその心配はないらしいが。


捕らえた黒ずくめの集団は、マルス帝国内の問題に起因するらしくガイ殿の部下が連れ去った。

まあ、これは始まりと見るべきでだからこそ俺にギルドを通しての依頼の形を取ったのだろうからな。

これでもギルドトップにある身。

それほどの危機と見るべきなのだろう。


本来、拉致した実行犯は怪我人だらけで更にコウがすっかり情をかけていてカリナ殿自ら治癒に当たる。治癒したカリナ殿が


「コウ殿の料理を食べた者です。あっという間に回復します。」と言われるだけはあり数時間でほぼ全回復した。


我が身を持っても、理解は出来る。

が、あり得ない事態だとも理解している。


「聞きたい事がある。」

ガイ殿の尋問が始まる。


神妙にするリーダーのバリーと言う名の男は、コウを身を呈して庇った者。

既に、投降の意思を固めていたところを見ても全容解明は、簡単だろう。


次々と明らかになるマルス帝国の元老院の一人ディルク家が率いる『貴族連合』のやり口。

使い捨てと人を見ている胸糞の悪い話が続く。


「半端者の俺たちには、他に手段がなかった。

特に幼い頃から隠密として育てられた俺には、甘い言葉が最後の賭けに思えたのだ。」


彼の使う『半端者』は、差別用語であり本来ならハーフと呼ばれる人間だ。


我らの国にはないが、マルス帝国の一部貴族たちにあると聞いてはいた。

幼い頃捕らえたハーフに『契約書』を交わさせ逃げられなくする。

そうやって便利に使うのだ。

聞くだけで嫌な気分になる。

当人にとっては壮絶な人生となろう。

周りを見れば、案の定ヨーゼストのゼン殿や神官のカリナ殿など複雑そうな表情だ。


「ヨーゼストの血を引く俺は、魔法使いだ。

更にマルス帝国の身体能力の高さを併せ持つ。

隠密には向いていたのだろう。」


得てしてハーフは、その国の特徴を併せ持つ場合が多い。

特に能力の高い親を持つと稀に驚くような能力の人間も生まれる。


まあ、俺もその一人だしな。


ヨーゼストの魔法。

マルス帝国の身体能力。

ボルタの長寿。

キヌルの他生物との意思疎通能力。

そしてあまり知られてはいないがテーレントの五感の高さ。


どうやらバリーの部下も全員がハーフらしい。

これが成功したら、仕事から足を洗える。

そんな甘い罠に嵌ったのだろう。


「しかし、最後の仕事がコウ殿であったのは俺の唯一の幸運だろう。

これで思い残す事はない。あんな人間もいると分かっただけでも悪い気分ではないしな。

そして本当の幸運はコウ殿の料理を食べた事かもしれない。

美味かった。これまでの食べ物が全て消え失せるほどだ。さあ、これで全てだ。」


実行犯の雇い主は当たりがついたようだ。

『契約書』で名は言えないが。

その時、カリナが驚くべき事を言い出した。


「あなた方の『契約書』は既に解除されてますよ。さっきコウ殿が作った『蓬大福』を食べたでしょ。あれの付加です。

晴れて自由の身よ。」


バリーだけでない。

その言葉を聞いた四人全員が滂沱の涙を流し始めた。


「ありがとう。コウ殿。

本当の俺に戻った。さあ本当に思い残す事はなくなった。」


晴れ晴れとした表情のバリーに、複雑な思いが浮かぶ。それほど過酷な『契約書』なのだ。


「お前達の罪は問わない。自由の身となり生きて行け。ただ一つ。コウにだけは挨拶して行けよ。

あれは本心で心配してたんだからな。」


ガイ殿の発言に一瞬何の事か分からない表情を浮かべ、歓喜に沸く。

しかしそれも一瞬。


「図々しいとは理解しています。しかし、このご恩に報いたい。いや、彼の側でこそこの命を使いたい。

どうか、コウ殿のお側で働かせて下さい。」


バリーの言葉に他の3人も同じく願い出る。


「「「お願いします。」」」


「いいぞ。護衛として付き人として雇おう。

ただし、俺の命令も聞けよ。一応親代りしてる身だからな。」


え?

安直な許可にゼン殿ですら驚いた表情だ。


とは言え、ガイ殿の事。

恐らくこうなると予想の範囲内だろう。


ガイ殿の能力の高さは桁違いだ。

その頭脳の持ち主を持ってしても、予測不可能なのはコウ。


そのコウ殿は、すっかり『ヨモギ』に嵌り、あの後取りに行って後で『ヨモギ祭り』を開くと張り切っていた。


その前にまずは『神火』だ。

その入り口は数百年開く事が出来ないもの。


だが、コウなら或いは……。





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