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衝突!

再度、編集を入れました。

何回もお読み頂く事になり重ねてお詫びします。



ーデレクト視点ー


薄暗い道をどれ位進んだだろう。

先導のスレッドはこの迷路のような道を迷いなく進んでいるが。

しんがりを務めるのは、変わる事ない俺の役目。


正直、ラドフォードの性格からして謀反を起こしてまで王位を継ぐとは思わなかった。

幼い頃からよく知るその横顔からは、はっきりとした決心が垣間見える。


お、どうやら目的地に到着したらしい。

地下道から脱出したその先は何と『王の間』のすぐ近くだからスレッドは恐ろしいな。

いつから、こんな場面を想像していたやら。


コンコン。

律儀に扉を叩くラドフォードに苦笑が漏れる。


「入れ。」

久しぶりに聞くアルザゥドの声は変わらない様子だ。

まあ、まさか俺達が現れるとは思っていまい。


「お久しぶりでございます。兄上。」

ラドフォードの登場に緊張が走る。

が、誰も来ないとは。


『王の間』の近くに近衛隊がいない事自体が既に王の威厳が失墜した証拠だろう。ゼスト辺りは、王太子達偏った忠誠を誓っているようだしな。


駆けつける者がない事にひとまず胸を撫で下ろして、アルザゥドを見て驚いた。


笑みを浮かべて「待っていたぞ。」と答えたからだ。


その様子にラドフォードも焦る事なく

「遅くなり申し訳ございません。」

と答えている。


まさか、双方予測していたのか。


「お前の養い子に世話になった。

ルーザが目を開けたのだ。12年振りだ。」

蕩けるような瞳でルーザ様を見つめる王の姿。


噂は事実か。

あの聡明なアルザゥドがこの有り様とは。


「はい。準備に時間が掛かりましたが兄上と義姉には、ゆっくりお過ごし頂こうかと。」


変わらぬ柔らかな言葉の中に、譲位を迫る一言にスレッドからも緊張を感じる。


「ククク。

お前もまだ甘いな。そんな簡単な事ではないぞ。

まあいい。コウとやらに免じて一つヒントをやろう。


裏が動いたぞ。


さて、コウとやらにも既に手が伸びてるのではないか?

あと3分やろう。地下道は既に貴族連合も把握済みだぞ。スレッドよ。まさか他の逃げ道を用意してないなんて事はないな?」


遠くから聞こえる複数の足音が!

会釈して去るスレッドの顔には余裕が見えない。

この事態は予測不能なのか?

もしや裏切り者が…。


久しぶりに見る焦った様子のスレッドに、嫌な予感の俺達は慌てて扉を出た。


ただし、振り向いたラドフォードが一言残したが。


「今暫くお待ちください。必ずまた参ります。」と。



あちらこちらから聞こえる足音を聞き分けて、走り回る。

足音が徐々に近づき、更には増えているのでは?


突如、人影が!


ま、不味いぞ。まさかのゼストとは。


ここでは敵対したくはないが。

覚悟を決めて、剣に手を掛けた俺の手をラドフォードが止めた。


「ゼストご苦労。案内を頼む。」


軽く会釈したゼストが先導して一つの扉の前に!

半信半疑の俺を置いてけぼりとなる。

ラドフォードとスレッドは疑う事なくゼストの後へ続いたのをみて更に驚くべき光景を見る。


扉を開けると、そこにはこの間逃した双子がいた。

と、言う事はここは皇太子の部屋か。

ただその姿は、嘘通り年相応になっていたが。



「ようこそ。叔父上。いえ、コウの養父殿。」


ニヤリと笑うラシェットに父王の面影を見た。


この王城から脱出する手段はあるのか。

その鍵は、この双子の王太子が握っている。


ーコウ視点ー


蓬摘みをしていると後ろから争う大きな音がした。

剣のぶつかり合う音に、もしやガイおじさんたちが助けに?と窓辺へ近づくと黒ずくめの怪しさ満点の男達が、熊と戦っていた。


熊…強!!

魔術と剣の両方で戦う熊達は、一見有利に見えたが、怪我人を抱えているから一気に形勢不利となる。


あ、危ない!!


声出たのか?

一斉に黒ずくめがこっちを見やがった!

ま、不味いぞ。


「馬鹿やろう!なんでノコノコと。」


苦虫を噛み潰したような顔で俺を睨む熊は、一斉に俺の方へ向かって来る黒ずくめを薙ぎ倒す。


その鬼気迫る様子に、逃げなきゃなんないと分かっていても、足が震えて動かないよ。

黒ずくめのクセに赤い血を流して倒れる姿は、単なる料理人にはシンドイぜ。


格好なんて構ってられない俺は必死に四つん這いで、逃げようとしたことろを黒ずくめの一人に襟首をむんずと掴まれ引き摺られる。


く、苦しい!襟首を掴まれ、息が出来ない。

もがく俺に救い主が現れた!


熊!!


熊が斬りつける剣を避けて、黒ずくめが俺を離した。

ヨッシャ!

その隙に俺はダッシュの四つん這いで逃走だ!


「ちょこまかと。喰らえ!!」


片腕から大量の血を流した黒ずくめが怒気を発しながら俺に剣を振り上げた。

さすがに四つん這いでは逃げ切れないか!

や、ヤバイ!

口はカラカラで、声ひとつ出ない。

ただただ、迫る剣先を見つめる俺の目の前に巨体が滑り込んで来た。


「させるかーーー!!!!」その迫力のままに振るった剣は、黒ずくめを斜めに切り落とす。


血しぶきを上げながら倒れた黒ずくめ!

だけど、ここからが本当の危機だった。


見上げた熊の片腕からはボタボタと血が流れ出て

地面を赤く染め上げる。

そこへ、よろめく熊めがけて別の黒ずくめが剣を振り上げ迫る!


あ、危ない!!


「避けろ、熊!!ガイおじさん、レイバン!!」


初めて声が出た。

だからって、熊にそれを避ける力がないのは、素人の俺でも分かる。

心臓の鼓動ばかり激しくなっても、相変わらず動けない俺に驚くべき光景が飛び込んで来た!

何?

何が起きたんだ??


ドドドドーーー!!

地鳴りにも似た音が周囲に響いて、炎が乱舞して黒ずくめたちを襲う。

突然沸き起こる炎は、俺達には全く影響ないままでだ。


これはもしかして『魔法』か??

振り返ると鬼出現していた。

地の底から響くその声の主にただひたすら驚くのみ!



「てめえら、よくもこのピピランテの長ゼンから宝物を奪ったな。いいだろう。ちょっと本気で相手をしてやろう。当然俺を敵に回す覚悟の上だよな。」


チ、チンピラ?

ヤクザ真っ青の脅し文句の主は、まさかのゼンさん??


「我が炎。我の名の下にその真なる姿を解き放て!!」鬼と化したゼンさんの放つ魔法は、マジ凄かった。


まるで意思があるような炎が、舐めるように黒ずくめ達を次々と襲う。その様は、はっきり言ってドン引きレベルだ。まさかの黒焦げ??


「まさか。炎は奴らの水分を奪って気絶させるまでのもの。命を奪うのは簡単だが、そんな簡単な罰では許す訳がないだろう。

なにせ、俺の目の前から目眩しの魔法で宝を掠め取ったのだ。これくらい当然だ!」


累々と倒れた黒ずくめに、本気のゼンさんを見たよ。

これからは怒らせないようにしなくっちゃ。

俺は固く決心した。


あれ?いつの間に隣にカリナが?


「ご無事ですか?」


いつもの残念感なく不安そうな瞳が俺を見つめる。

助かった安心感と迷惑かけた申し訳無さが同時に胸に押し寄せた。


「あ、ありがとう。良くここが分かったね。」


「それはゼン殿がコウ殿に掛けておられた守護魔法のおかげです。御身に何か危害が加われば発動するとか。

更にガイ殿かレイバン殿の御名をコウ殿の口から一言でも漏れれば、居処を辿れる魔法もかけられていたとか。

さあ、ガイ殿達ももうすぐ御いでになります。

こちらへ。」安全地帯へと俺を導くカリナを急いで止める。だって!

座り込む熊周りには血溜まりが少しずつ大きくなっていて猶予がないのが俺にも理解出来た。


「カリナさん。頼む。この熊を、熊の奴を助けてくれ。俺を庇ってこんな。」頷くカリナに胸を撫で下ろす。


事態が急変する中で、熊はその怪我よりもこの事態にただ呆然とするばかりのようだ。

ぼんやりするその姿に、更に焦りを覚える。

正直、熊が座っていられるのが不思議なくらいなのだ。


カリナが手を当てて、血を止めようとすると弱々しい声で熊が止せ!と言ってきた。何を。

俺が割って入ろうとすると熊はカリナの目を見て覚悟の決めた顔をしていた。


「俺が、俺こそがコイツを攫った犯人だ。

手当なんていらん。もう、覚悟は出来てる。

こんな。こんな魔法を見せられては、な。

出来れば唆した仲間達に温情をかけて貰えれば。」


と弱りながらもしっかりとした口調の熊にカリナは手当を続けながら答えた。


「コウ殿をその身をもって庇った事実と、貴方を心配するコウ殿こそがその理由です。」


淡々と述べながら治療するその姿を 見てやっと神官さんだと実感した。

悪かったな。疑って……。


そうこうするうちに、ゼンさんの怒りも収まってガイおじさん達も到着。

レイバン達の心配具合に再び申し訳無さを感じつつ、

とにかく熊一行と俺達は共にレレベ村へ戻った。


実は、俺少し残ってもうちょっと蓬を摘ませてくれ!と頼んだら全員から白い目で見られる事件もあったけどな。


まあ、しょうがないよな。そう思いつつ心残りで蓬を見つめていたら、レイバンがそっと、

「後で来よう」と耳元で囁いてくれた。


分かってくれたか!やっぱレイバンだけが蓬の真の価値を理解していたか。


頷く俺は、やっと帰路に着いた。



ーカリナ視点ー


あれから丸一日。

見つからないコウ殿に我々の焦りは最高潮に達していた。

村人達も総出の捜索は夜を徹して行われたが、ヒントひとつ見つからないのだ。

どうやら目眩しの魔法が使われたようだ。


正直、それを話すゼン殿の表情には、背筋に寒いものが走った。

ガイ殿はガイ殿で原因に心当たりがあるらしく、コウ殿へ警護を配置していただけに悔しさはかなりのものとみた。



そんなおり、ゼン殿から驚くべき報告があった。

秘密でコウ殿に保護魔法をかけたというものだ。

本来なら本人や保護者の承諾が必要なのものだ。

しかし危機的状況になれば、コウ殿の居場所を特定出来ると聞き、一気に期待が高まった!


しかし、数日経ってもみんなの期待をよそに、特定は進まない。


コウ殿………。


危機感は?


コウ殿ではと、別ルートで捜索も続いた。

だが、敵対組織だけが把握出来たのみでコウ殿の居処は相変わらずである。

今一度話し合いをと部屋へ集まったその時、


突如「見つけた!!」と叫んだゼン殿が転移魔法で消えた!


慌てて私も追うように転移魔法を辿る。

これも神官ならではの技。



そこに見たものは、あり得ない炎の乱舞。

これほどの力。まさに『金』…トップレベル。

ピピランテ始まって以来の天才と言われただけはあると感心した。


命を奪わず捕らえる。これほど難しい魔法は恐らくはない。

恐らくこれでもほんの一部の能力だろう。


改めて本気のゼン殿を見るそんな事態は起こって欲しくないと心からそう思った。



その後犯人らしき男達を治癒しつつ、レレベ村へ戻る。

別口の黒ずくめの男達は追いついたガイ殿が手の者に引き渡した。

誰の指図なのか吐かせると引きずっていくクラスタ殿が暗く笑っていたからどうなったやら。



しかし、犯人らしき男達は全員ボロボロだった。

治癒を頼むと、コウ殿に頼られて気づいた。


なるほど。

だから我々を出し抜けたのか。と。



彼は『ハーフ』なのだ。



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