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蓬見っけ!

ー場所不明 コウ視点ー


「だから!

それじゃないよ。そ、その右。

あー、どうして分からないんだ?ちゃんと絵を描いたのに。」


あんなに簡単な見分け方ないと思うんだけど、目がないんだな。


「いや、あの絵じゃ……。」


「ん?何か言った?」


「いや。お頭もう勘弁して下さいよ。俺には無理なんです。『ヨモギ』なんて聞いたこともない名前の草を摘むなんて無理ですよ。俺、武闘派なんですよ。もう!」


ルスタフは文句が多いな。

ノーマならと、そちらを見たら不自然に目を逸らされたし。

何だよ。蓬も分かんないのかなぁ。


振り返ると怪我をしたミックが苦しそうに寝返りをうった所だった。

昨日は、熱が高くて心配したけど今朝は熱も下がった。


カリナさえいれば。

ま、攫われた俺では無理だけどな。


「おい、お前自分で取って来い。」


おや、ボスのOKが出たぞ?

熊のくせに理解があるな。

だってさ、ボスは間違いなく熊なんだよ。

コイツらはデカイ上に、モジャモジャの髭面だしな。

熊で決定でいいと思う。

しかもボスは、片目が眼帯で悪人ぽさ満点で

まさに犯人役にぴったり!



だから、風呂場に押入られてこの熊達に囲まれた時は心底肝が冷えた。

その上!!俺裸だよ。

丸見えで担がれて運ばれたんだよ。

ありえねー。


着いた先がこのぼろ家な訳。

縄でグルグル巻きにされたら俺の目に、べちょべちょのご飯と、焦げた魚が置いてあった。


「これを食え!」と、ボスが差し出してやっと夕食だと気づいたよ。

躊躇ってる俺の横で「まっずー。」との声。


ふと見ると怪我人にこれを差し出してたからびっくりして思わず叫んだよ。


「待て!そんなの怪我人に食べさせたら毒になるぞ!」って。


俺の方を振り向いて怒鳴ろうとしたボスの横でドサリと音を立てて怪我人が倒れた。

駆け寄る犯人達は、ベッドに怪我人を運ぶ様子に少し安心した。

だって凄く丁寧に大事そうな様子に俺は料理人だと申し出たんだ。


「料理人って言ったって、これっぽっちの材料じゃ何も作れまい。」

不貞腐れたようにボスが呟く。


俺は、縄を解かれて腕を回したりさすったり忙しくしてたら、不貞腐れたボスに台所らしき場所へ連れて行かれた。


「これだけだぞ!」



えーー!確かにキツイよな。


古い米・味噌・牛蒡とちょびっとの木の実か。

うーん。

そうだ!!


俺はさっそく米を潰してその辺の木を洗って巻きつけた。


牛蒡は細く切ると火にかけた。

茹でるのではなく、炙る。


そして味噌に砕いた木の実を混ぜる。


木に巻いた米を炙って焼く。

カラカラになった牛蒡はお湯を注いで牛蒡茶の出来上がり。


焼いた米に味噌を塗ってまた、焼けば五平餅。



これをまー食べた食べた。

残りの米でお粥を煮て。牛蒡茶も添えた。

味噌とネギのカケラを見つけたので混ぜてお粥に乗せて食べさせてた。


奴らは「おー」とか「マジ?」とか賑やかな様子で必死に食いついていたから満足したらしい。


それから俺はご飯係に任命されて今蓬を摘んでるわけ。あー餅米があればな。

えっ!こんな場所に稲??

もしかして餅米か?


必死の俺は、背後の話し合いなんて全く気付かず豊作に大喜びだった。


ー隠れ家で バリー視点ー



俺達は、最後のチャンスと今回の件に臨んだ。

慎重に慎重に、持てる力を尽くして探していたらボルタから妙な噂が流れてきた。


雇い主からの命令も、ボルタへ侵入と変更になったし、これは噂は間違いなしと踏んで取り敢えず王城の近場のレレベ村へ来た。



神様はいたんだ。とその時は本気で思ったさ。

何故なら生け贄は目の前に自ら飛び込んで来てからだ。

この幸運を逃すまいと奴の風呂好きを狙って忍び込んだ。

ノーマの能力を使えばあの強力な護衛にも見つかるまいと踏んだんだ。

狙いは的中した!



だが、そんな幸運は長く続く訳がなかった。

雇い主の元へと使いにやったミックが大怪我をして戻ったからだ。

もし、異能が無ければ間違いなくやられていただろう。

敵もそれを知らなかったのだ。


攫った奴を引き渡せば間違いなく全滅する。

焼きが回るとはこの事だ。

何年も隠密をしてきて、うっかり条件の良い仕事に飛びついてしまった。



ミックの様子が悪化するのをみて、やり切れなさが込み上げる。

と、同時に己の力不足に奥歯を噛みしめる。


「俺、料理人だよ。」

と、呑気な声にイラッとする。

攫われた自覚のない奴め。

コイツが恵まれた奴だと知ったはいた。

だから飢えが何か知らないのだろうと、数少ない材料を見せた。


な、何?

奴は鼻歌歌ってあの貧相な材料で腹に直撃するいい匂いのする料理を仕上げた。


う、美味い。

あまりの美味さに感動をしていたら、身体から魔力が上昇するのが分かった。

な、なんだ??


動揺が隠せない俺達に更なる奇跡が起こる。


奴がミックの命を救ったのだ。

まー、本人に全く自覚はないようだがミックの様子が確実に安定し始めた。


数日経つと、すっかり料理人として張り切り出して隠れ家の周りの草まで食べれるから摘んでくれとか言い出す始末。


絶対忘れてる。

奴は自分が攫われた事を。


そして、俺達がその犯人だと言うことも。



何故なら、真剣な表情で今日の収穫を喜んでいるからだ。

。。。



俺は、何をしたんだろうか。

そして、何処へ向かうのか。



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