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ビアホール完成!

ーコックス家にて ラドフォード視点ー


「殿下。今日はお会い頂きたい方がお見えです。」


コックス・ジェレーラの声に頷けば、予想通りの人物が現れる。


「陛下。ご尊顔を拝し恐悦至極でございます。」


最上級の礼をするところも、それが絶妙な嫌味なところも全く変わらない。


「プレストン。流石にそれはないだろう。

しかし、久しいな。」


「いえいえ。ようやくこの年寄りの念願が叶う時が参りました。

立ち上がって下さり感謝に堪えません。」


しかし、プレストンが来ると言う事は現宰相ビルディも当然承知と見るべきか。

思ったより事が早く進む予測してに焦りを覚えて釘をさすことにする。


「良いか。其方らの言うように王位には就こう。

だが、兄上は追放の形をとる。これだけは譲れぬ。無血にて王位を奪取せよ。

良いな!」


立ち上がってから、初めての命を下す。

父上や兄上の背負っていた重みが一気に肩にかかる気がした。


「御下命承りました。

しかし陛下。随分難しいご下命ですな。」

プレストンとビルディの顔が曇る。


その後細かい打ち合わせを終えるとドアへ向かうプレストンの背中に声を掛けた。


「コウが世話になった。親として改めて礼を申す。」


頭を下げた俺に珍しく嫌味では無く柔らかな表情で答えドアから出て行った。


「しばし、幸せな時を過ごしました。」と。



ー農家にて コウ視点ー



「さあ、皆んな今日はゆっくり楽しんでくれよ。

ビアホール開催だ!乾杯〜。」


「「乾杯〜」」


グラスを掲げて大勢の声が重なる。

改装した農家には大ホールが出現していて、ここが今日のパーティの場所となった。


今後は食堂と試飲所・販売所などを兼ねて営業する事が決まっているのだから。


しかし、ここまで来るのは色々大変だった。

もし、スタンさんの知り合いが暇でなかったらこんなに早くビアホールは出来なかっただろう。


大麦とホップなど、植物達はカリナさんの力添えであっという間に成長し刈り取りになった。

随分大量の収穫にビール作りの工程に入るんだけど、俺がいくら絵で描いて説明しても理解が中々得られず大変で。


酵母の温度管理がこの寒い国では難しく、家の改造もしたし。


きつねも待ち兼ねていて、明日にはビールを祠へ捧げる為に青い洞窟へと向かう事になった。

きつねの奴は名付けは嫌だと言うので『きつね』呼びになってる。


いつもベットに潜り込んでくるし、大食漢でだいぶ毛艶も良くなった。

明日は、沢山お弁当を作ってくれとねだるから、早起き決定!

皆んなまだ騒いでるけど、早寝しようっと。



ー無双騎士団 副部隊長 マイルズ視点ー


スタン隊長が除隊した噂は、我が部隊にも聞こえてきた。

あの通りのお方だ。

部隊の誰もその理由があると疑っていない。


しかし、時は流れボルタの国内事情は更に悪化していてその事すら記憶から遠ざかっていた。

だからだろう。

隊長からスタン様の元へ行き協力せよとのご命令は無双の一員としてあり得ぬ事だが少し不信感を抱いてしまった。


現地に着くと大勢の隊長が動員されており、何か重大な事だと思った矢先、畑作りの仕事のご命令。

無双として誰も粛々と従ったがいったい何が起こっているか誰もが気になるところだ。


やがて、その意味を知る事になる。

それは毎日の食事から始まった。


珍しい。美味しい。新しい。

沢山の言葉はあれど、恐らく全員の能力向上や体力増強が図られ持病を持つ者などは完治までする。


そんな驚くべき『付加料理』。

それに尽きるだろう。


しかし、それ驚くべき事はまだこれから起こるのだ。


それは寒さ対策と言う名の『家の改造』だ。


「だからさ。

二重サッシ…うーん。違う。説明が難しいなぁ。」


聞いた事のないセリフが続き、見たことない下手な絵で説明が続く。

『気密性』を知り、『空気』の流れを考える。

最初は何のことかさっぱりで理解が追いつかない。

その為の工事中も何度も説明をもらうが、全貌は理解は出来ないまま進む。


更には工事には大量の木が必要となる。

それは今の我が国では至難の業である。

薪の為に極端に減った我が国の木。


それがなんと……!


コウ殿か蒔いた種は既に刈り取りが出来る驚くべき事実。


木を切っても、またコウ殿が種を蒔く。

それはまたすぐに森となる為、我々は安心して大量の木を切った。

その木をふんだんに使う。煉瓦の家が当たり前の我々には最初は不安しかなかった。

そこへコウ殿の一言。


「だから、内装に使うんだよ。床や壁に引き詰めてさ。下から上がる冷気を塞ぐのが大切。」


目の覚める話だった。

内装なんて考えもしなかった。


そして……。


出来上がった家の暖かさにひたすら驚く我ら。


なんと言う違いか!

これほどとは。


「ほらね。」と得意顔のコウ殿にひたすら尊敬の念を抱く。

この技術があれば、多くの国民の命が救われる。

スタン様の狙いが今理解出来た。


コウ殿は、その他にも温まる料理レシピをいくつも紹介し、食べさせてくれる。


そのどれもがどれ程重要な事かは全く頓着していないようだが。



そして遂に出来たビール。

(驚異のうまさかなのだ!)

それに合う料理『ソーセージ』の美味な事!


「キヌルの名産『ソーセージ』とボルタの名産『ビール』。貿易相手国として最善だから両国は互いに助け合えるよな。」とコウ殿。


そ、そんな深慮遠謀なお考えが!!!


その瞬間、我々は一斉にコウ殿に跪いた。


「お力添えに感謝を捧げます。」と。



本来、国王陛下のみに捧げる礼だが、これはかならずや許される。



のちに…

その確信は『ビール』が我が国最大の貿易品となる事で証明された。




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