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ゾーケルとの出会い!

ー『ゾーケルの鍛冶屋』にて コウ視点ー


「だから、帰れと言っているんだ!!」


さっきから俺に怒鳴り続けているこの男こそ、この『ゾーケルの鍛冶屋』の親方ゾーケルその人だ。

象の足かと思うほど太い腕を組んで、こちらを睨む様はまさに前世のヤクザそのものだ。


だけど俺だって引かない。

この計画は絶対に必要なんだ!


「あのな、職業とは誰かの役にたつ為にこそあるんじゃないのかよ。

武器も俺の提案する『湯たんぽ』も両方役にたつのは変わらないんだ。

なんで理解出来ないんだ?」


しまった!

最後は(馬鹿じゃないか?)のニュアンスがうっかりと……。


「馬鹿野郎!

ここは鍛冶屋だ。それもこのボルタいちと言われる『ゾーケルの鍛冶屋』に来て、道具作りしろだと。。。

ふ・ふざけるなーー!!」

「ふざけてなんてない!!

あんた頭が固いよ。道具も武器も鍛冶屋しか出来ないから頼んでるのに。

このーーー、頭でっかちオヤジめ!!」


あー、完全に失敗した。

正直、こんな激しい言い合いなんてした事がない。

気がつけば売り言葉に買い言葉状態になってんだよ……。

ひ、引き際はどこ??


ゾーケルのオヤジの顔が真っ赤に染まって、太い腕にメキメキと力が込められる。

ま、不味い。

あの腕で殴られたら間違いなく、また転生か?


ジリジリ下がる俺に、ジリジリ迫るオヤジ。

レイバン達が庇おうとにじり寄ったその時!


俺の目の前には驚く救世主が現れた!


「ゾーケル殿。

おやめくだされ。

この方は、私のいやこの国にとって大事なお方。

どうか私の顔に免じてお許し下さい。」


腰を半分に折り頭を下げてそう叫んだのは、なんと俺の店の常連客スタンさんだ。

えーー!

なんちゅータイミング?



この国の人だと知ってたけど偶然って凄い!

こんな所で会うなんて!!


呆気に取られた俺と親方はとにかく、この場はスタンさんの顔を立てて言い合いを終了した。

スタンさんは「後で宿屋の方へ伺います。」と小声で囁くとゾーケルと裏の部屋へ消えた。


狐に化かされたような心持ちで宿屋へと向かう。

偶然の再会に驚いたよ。

レイバン達は『湯たんぽ』について聞きたいみたいだけど、俺は初めてした喧嘩にめっきり疲れて無口になる。


宿屋の目の前にひとりの男が俺達を待っていた。

部屋へと通したその男は、ゾーケルの鍛冶屋の弟子で確か…クーパーとか呼ばれてた男だ。

いったい何の用事だろう?


「お願いがあります。

どうかこの鍛冶屋の街をこの国をお救い下さい。」


キョトンとする俺に更に話を続いた。


「この国は、今や行き詰まっているのです。

ここまでの道で、荒野がずいぶん続くとおもいませんでしたか?

そうです。

それは極端に寒さが増した数年に薪を求めた人々に切り倒された木々の後です。

このままでは鍛冶屋どころか、この国は凍りつくでしょう。」


予想外の深刻な相談に俺は甘酒を出す。

酒粕で作ったので少しアルコールが入るが温まるのには違いないのだ。

しかし、頼む人を間違ったのではないか?

単なる料理人だよ、俺は。


あっ!

なーんだ。

レイバンか!ギルドじゃ有名だったの忘れてたよ。


「コウ殿。この国にはひとつの伝説があります。

それは『火石』の存在なんです。

その『火石』をコウ殿に見つけて欲しいのです。」


頭を下げるクーパーには見えないだろう。

どれだけ俺がアホづらしているか。


なんで??俺?


「分かった。クーパー君はとにかく戻らないと不味いだろ。さあ、親方が気がつかないうちに帰りなさい。」

促したのはガイおじさんだ。

確かに俺のところへ来た事が分かったら許さないかも。



クーパーさんが帰ったあと、レイバンが急に心当たりがあるって言い出したよ。

えー!

伝説だぞ。俺ちょっとおっかないな。


「コウ殿。無理せず覗くだけでも良いではないですか?

その場所は先日話した『青く光る洞窟』なのですから。観光気分で行ってみましょう。」とウェス。


んー。何となく腑に落ちないが青い洞窟には心惹かれる。

明日、とにかく近くにあるその洞窟へ向かうことになった。



ークーパー視点ー


その人は、自分の名前が遙か遠い我が国まで聞こえているとは知らないようだった。

コウ殿の名を前から知る親方は、来店された時は機嫌は最高潮だった。あの絵をコウ殿が爆弾発言と共に出したのを見て急降下したのだ。


「ですから、俺の描いた絵を参考に『湯たんぽ』を作って欲しいのです。」

実はその絵がかなり下手でちょっと子供の落書きぽかったのも不味かった。


親方にすれば、有名人と鼻にかけ揶揄われていると思っていたようだった。


しかし、冷静に見れば間違いなく彼は真剣そのものだ。

悩みの尽きない親方にとって、道具作りの話など理解したくない頑なさが出たのだろう。


握り拳を固めた親方に驚いた俺は身を呈してコウ殿を庇おうと思って構える。

もちろん、レイバン殿がおられるのだ。

俺の出番などないのだが。


しかしその日はまだ事件が続いた。

なんと、スタン様が現れたからだ。

怒髪天の親方も呆気に取られてその場はお開きとなる。


二人の秘密の相談が始まったのをみて、俺はこっそり店を飛び出した。

コウ殿の噂が本物なら。

あの伝説をもしや……。


とりあえずお願いはした。

コウ殿の快諾は貰えなかったがガイ様は受けて下さった。

これで良しとしなければバチが当たるだろう。



帰り道、また気温が下がったようだ。

風が強まり人々は家路を急ぐ様子が見える。

まだ冬の始まりなのに。


祈るように宿屋を振り返る。

あの『甘酒』の威力を今実感しながら、祈りは希望へと変わる。



「親方の説得は必ずします。

どうかお願いします。」


それが俺のした約束だ。

再び拳を固めて親方の元へと急いだ。



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