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ウィンゲルドを目指して!

ー王宮にてー


「もうすぐだ。もうすぐここから俺も離れる事が出来る。そうしたら一緒に行こう。」


祈る様な彼の言葉に答える言葉はない。


この部屋いるもう一人は何も語らないからだ。

その瞳に悲しみの色が浮んでいたが彼がその事に気づく様子はなかった。



ーボルタにて コウ視点ー


暫く逗留したルーゼンを離れるのは少し寂しかった。

だけどそれ以上に寂しいのがこの風景だ。

寒さだけじゃない。

木がないんだ。

小さな草が少し生えてるだけとは……。


レイバンに聞いたら、ほぼこんな風景なんだとか。

作物が育たないとは、料理人としては気にかかるな。

だからなのかこの国の主要産業は鉱石。

そして鍛冶屋なんだとか。

その鍛冶屋でも、最も有名なのが鍛冶屋の街『ウィンゲルド』にあるらしい。

『ウィンゲルド』には数多くの鍛冶屋があるとか。

そして今、

俺達はその『ウィンゲルド』に向かってるんだ。

レイバン曰く武器を少し見て欲しいと。

他の皆んなも同じらしい。

何でも、闇影獣との戦いが続いて武器がだいぶ傷んだから打ち直しして貰いたいって。


実は俺もこの鍛冶屋に用事がある。

誰にも言ってないある計画を実行する為だ。

成功したら、ボルタの寒さも怖くなる。


しかし『ウィンゲルド』まではまだ距離があるので今日は近くの街へ泊まる。

小さい街には、宿屋はひとつだ。

小さいけど、煉瓦で出来た家は隙間風から守られて暖かい。

ホッとして部屋にいると「夕食だよ。」と声がかかり食堂へと向かう。


かなり寂しい夕食は、ジャガイモ中心のもの。

贅沢は禁止だ。

俺はそのジャガイモを一口食べて、手を止めた。


。。。これ毒かも。


いや、このジャガイモ自体が変質したのかも。

寒さに耐えるために植物が毒を生成すると聞いた事があるから。


ちらっと周りを見るとカリナだけがやはり動きを止めていた。

言い出しにくいし。

どうしたら。


そうだ。

俺は部屋に戻ると荷物から1つの瓶詰めを取り出した。


「これ、この料理に合うから皆んなも使って。」

出したのは山椒の佃煮。

確か解毒作用があるはず。

この世界では薬草なんだ。


ジャガイモに乗せて食べたら数倍美味しくなった。もちろん毒もない。

ご満悦で食べてると隣の客が分けてくれと頼んできた。


俺は宿屋の主人に断って皆に配る。

翌朝旅立ちの時、宿屋の主人にお礼にと瓶詰めを数個置いていく。

昨日美味しかったのか凄く喜んでくれたよ。


さて『ウィンゲルド』での作戦に向けてちょっと絵を描こう。

実は俺…この世界の字が書けない。読めるけどな。

この歳になると中々言い出しにくいから未だに絵が頼りだ。


それとは別にナット君にレシピ本の作成を頼んでいるんだ。

出来たらレシピ本を欲しがっていたマーラさんにプレゼントしようかなぁと思ってる。



ーウェス視点ー


怪我をして以来、コウ殿がチラチラこちらを気にする様子にそろそろため息が溢れる。


不覚をとった自分自身が一番腹立たしく迷惑をかけたと思いこそすれ、コウ殿の料理を普段から食べている自分だ。

もう、完全に元へ戻ったと言える。

コウ殿のチラチラ以外は……。


まあ、嬉しい悲鳴と思う事にして意識をある人物に戻す。

全員といかなくても、皆が気づいているだろう。


我々は尾行されている。

その人物も顔見知りだからどう読むか難しい。


彼は『田中食堂』の常連客の一人スタンだ。

テーブル客で、初期よりの常連客の一人だ。


だが、彼にはもうひとつの顔がある。

元ボルタ王国無双の部隊長と言う怪しいものだ。

もちろん、間違い無くその身分にあった。

ただ、『元』が気にかかるのだ。


『ボルタの無双』とは、永久的忠誠心を旨とする集団だからだ。

その固き絆に羨望の視線が飛ぶ。と言われる『無双』のしかも部隊長とは。


何か目的があってコウ殿に?

そしてそれはいったい…?


レイバン殿達も怪しく考えているが彼も全く尻尾を出さない。


レイバン殿はウィンゲルドへ向かいその近くにある禁足地『ミズルド』へ何気なく寄る予定だろう。

コウ殿なら本当に気づかずやれるかもしれない。

そのコウ殿と言えば、ウィンゲルドの話をすると怪しい顔をしていて目が離せない。

皆で見張りを強めている。


相変わらず『山椒の佃煮』なるあり得ない解毒作用の料理を出してこの街を救う。

あのままなら街は滅んだだろう。


ルーゼンと変わらずこの街でもレイバン殿が口止めを重々した後、コウ殿が瓶詰めをプレゼント。

その様子を食い入るように見つめるスタン。


しかし、スタンの問題より更に大きな問題をコウ殿が計画しているとは未だ誰も気づいていない。



コウ殿がこっそり書く絵には、丸い水筒のような絵が描かれていた。


何だろう?




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