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新種は…そして。

新種の巨大化し、レイバンは太刀打ち出来ず。

ラドフオードも魔力を使い果たし倒れた。


また、闇影獣となった人間は気絶から起きると真っ黒な塊りに。


絶望感の中、主様達が駆けつけて形成逆転。



そこへ白い鳥に乗りコウが戻って来る。



前話はこの様な内容です。(目線はとある神官)



ーコウ視点ー



「出来たー」

叫んだ俺の目の前にある『スープ』は、見た事ない程、透明なもの。

具など無い。


だが、これは究極のスープだ。

五大食材だけじゃなく、あらゆる俺の宝物の食材を入れた。


それらを一つのスープにしたんだ。

一つづつの食材の本当の力を。本来の味や香りを。


最大限に生かした渾身の一杯。



ニヤニヤして眺めていたら、ルスタフ達がこちらを目を剥いて見てる?

何で??



「この香り…。

これだけで、身体中の力が漲る。


いったい…これは?」

ラクゥドさんの問いかけに答えると。


皆が静まり返る。


「あはは・あはは」

うん?


あー、コガモ①?

何の用だ?


急がなきゃいけないって?


そ、そうだった。

ザルドにまた、乗って…え?


俺がいるって…?


ぷぷぷ。

お前…お笑い芸人か?


コガモに乗る人間なんて…え?

任せておけ!って。



コガモ①は、そのまま窓から外へ飛び出した途端!!



真っ白な大きな鳥になる。



目が点だよ。

醜いアヒルの子の話を知ってるけど。


白鳥とかのレベルじゃない。

唖然とする俺達の横を通り過ぎて、次々とコガモ軍団は、白い鳥に変身してゆく。

ただ…コガモ①は他のコガモの数倍の大きさがある。



青空を新幹線の速度で飛ぶスピード狂のコガモ①は、めっちゃ有り難い。

有り難いけど…俺は二度と乗らないから!!


しがみ付くのに精一杯の俺は、だから眼下に広がる傷だらけの街に気づかなかった。

闇影獣の荒らしたのは、ムルゼアだけではない。


どの国も、その傷跡は酷いもので。

ルスタフ達は、無言のまま前を向いていた。


今は、危急にある仲間の元へ…と。



「あ!!

アレ新種かなぁ。


戦ってるの太郎じゃん!

すげ〜。太郎は巨大化のスキル持ってたんだな!」



見れば、麗や狐。黒猫までいた。

五大食材の帰りがけに手助けに来てくれたのか。


うーん。

ちょっと、感動!


後でご馳走しなきゃ、な!



俺が地上に降りると、レイバンが近づいて来た。


目の前の不思議な物体を指差して

「コウ…もう間に合わない。

これでは…」


後ろから、ラクゥドさんの呻き声が聞こえる。


俺は、その不思議な物体の側へと近づいた。

ルスタフがやたら、ぴったり後ろをくっ付いて来る。

何だ?


護衛?

え?


この小人相手に?


ものすごーく。

小さな小人になった、人々がいる。


何かゴムみたいなものでくっ付いてるけど。

このゴム…邪魔だなぁ。


小人になった人のひとりと目が合った。

あ!


泣いてる?


この人…俺知ってるよ。

ほら、「ミーファン」のおばさんだよ。


よく安くしてれた…。


あ!

こっちは、ガイおじさんの宿屋の常連さんじゃあ…。


このゴムが、邪魔なんだな…。

どうすれば…。



んー。


ニャー。


声の方を振り向いてビックリ!!


ツィー!!

何だよ。もしかして『田中食堂』から来たの?


もしかして、ツィーが咥えているのは…。


もしかして…あの井戸水か?

それは俺の料理の決め手。


裏庭にある井戸は、禁足地の恵みを受けた甘露。

水は、料理の基本。


その味で、決まると言う料理人も多いんだ。



小さなボトルの水を、そっと泣いているおばさんの上に。


あ!!

ゴムが…切れた。

それだけじゃないよ。


小人の皆んなは、元通りの姿に!!



不思議なボトルは、大量の水を出してくれた。

俺は、満遍なく掛け続けると。



目の下の隈と、その身に纏う入れ墨がまだ闇影獣なのだと理解は出来る。

けど!!


元の大きさに。


それに目は違う。

皆んなの目に、光が灯ってた。

これなら。



俺は。


『スープ』を出す。


一人一人にそっと。

全員が、その香りに目を見開いては、ゴクリと一飲みに。



全員に配るのは時間がかかるから、必死だった。

だから、何が起きてたか俺は気付かずにいた。


飲み干す度に、光に包まれ人間へ戻る人々の嗚咽と歓声が上がっていた事や。

外の太郎の戦いに、遂に新種がその膝を折って倒れたのを、トラッデや仲間達が歓声を上げて見ていたとか。




やがて。

最後の一人に配り終わると。


「外で呼んでる」とルスタフ。


振り返ると、元気になった人々に俺が袋から出した薬や食べ物を配って、皆が治癒に当たってた。

神官の人達が必死に指示を飛ばしてる。



外には太郎達が揃って待っていた。



『ここまでが、我らの役目。

後は頼んだ…』


太郎がそう言うなり空へと飛び上がり、そのまま東の空へ。

気づけば、他の皆んなの姿も消えていた。

俺達が、空を見上げてる隙に…。


倒れていた新種が、太郎が去ったのを見て再び起き上がっていた。


ヤバイよ。


このままじゃ…また…。



その時、レイバンが前に出た。


「もう一度俺にチャンスをくれ。

必ず倒す」と。


そう言うなり身体を震わせ鷲の姿になった。


飛び上がるレイバン目掛け、幾多もの火の玉が狙う。


新種め。

もしかして、死んだふりだったのか?


クッソー!


火の玉を余裕で躱すレイバンが、空から急降下して新種に狙いを定める。

火の玉は、そこを執拗に狙う。


レイバンと新種。


どちらも引かない戦いが続く。

このままじゃ…。


「コウ。

俺達がレイバンを助けなきゃな。


あのスープを父さんにもくれ。

魔法で彼を助けるよ」


肩に手を置いて俺に義父さんが言う。

頷いた俺は袋からスープを取り出して差し出した。


「父さん。頼んだよ」


「と、父さんって呼んでくれた…」

あ!またいつもの涙目だ。


これだから…。


しかし、ダメないつもの父さんはここまでで。

スープを飲み干すと、魔力を高めていった。


そして…



レイバンを狙って飛び上がった新種が鋭い毒の爪を振り上げたところで。


『光よ。真なる力を持ってその道を照らせ』



父さんの手から光の筋が、レイバンへ。

レイバンは光を纏った姿でそのまま新種へ急降下する。



まっすぐ…



そのまま…





そして。

遂には、その時が来た!!



新種の身体は、ドットその場に倒れ光の粒がレイバンから降り注ぐ。



と。新種は…



そのまま、溶けるように小さく小さくなり。



そして消え去った。

煙のように。



それと同時に闇影獣にされた全ての小動物や鳥は元の姿を取り戻した。





「戦いは終わったな…」

鷲の姿から、いつものレイバンへ戻りそう呟いた。


隣ではカリナが駆けつけてレイバンに治癒を掛けていた。

でも、カリナの顔色の方がよほど悪いけどな。



抉れた大地…。



世界中に広がる傷だらけの姿…。

喜びたいけど…これじゃあ。


無言の俺達の横で。


美しい音楽が聞こえきた。



モーリフ!!



レイバンが弾いていたその曲はまるで大地に染み込むようだ。

あ!


トラッデの仲間たちも弾いてる?


泣いてる人もいた。

俯く人達の、頭にもその音楽は流れゆく。



さぁ!!

俺も。



ルスタフが止めようとするけど。

ここは、出番だろ?



♪♪♪♯♯♭〜




ド。



ドド。




ドドドドドドドドドドドドーーーーーー!!!





な、何ーー!!!




ダンゴムシ?



数…おかしいでしょ!!




真っ黒に大地を染めるほどのダンゴムシ?。


踊るダンゴムシ?達に、嬉しくなった俺もモーリフを弾きまくった。




世界各地で。

その日、ザザの踊る姿が確認された。

その大地を癒しながら。



そして…傷だらけの大地は…。



再び、美しい姿を取り戻した。



嬉しかった…


しかし…その力を全て使ったコウは、そのまま倒れた。






気づけば…


真っ白な空間にいた。



「やっと会えましたね。

コウ…ありがとう。


これまでお礼も言えなくて」



輝く光を纏った見たこともない美人がそこにいた。


目が…開けられない。

眩しいよ。


「貴方は、別の世界からこちらへきた転移した日本人。記憶を私が消して幼子の姿にしたのです。

だから…」

「知ってましたよ。


俺。

日本人の田中航一だと」



どうやら驚いているみたいだな。

まぁ、そうだろう。


「料理の記憶です。

それがキッカケで。


ですが日本人であった頃の俺の記憶も人格も。

普段は深く沈んでいるんです。

コウが危機のときに目覚め助ける…それが日本人の航一の役目」


しばらく女神様は、動かなかった。

思いもかけない告白だったのだろう。


そりゃそうだ。

消したはずの記憶があったのだから…。


「コウ。いえ。田中航一さん

貴方は、元の世界に戻りたいですか?


それとも…」

「いいえ。

俺は、この世界が大好きです。


元々天涯孤独な身であるから、俺が選ばれたんですよね?

俺は、こっちで初めて家族が出来ました。


友人も沢山…。

でも、力を使い切ったから…もう無理なのでしょうか?」


初めて、女神様の微笑む気配がした。


「良かった。

私でも役立つ事がありました。


貴方がこの世界を望んでくれるなら望みを叶えましょう。

ただ…

ここでの事は再び記憶を封じます。

でも、私は。


ずっと、貴方を見ています」




その声が聞こえきた時には意識がボンヤリして最後ははっきりとは聞こえなかった。





目が覚めた俺は、抱きしめて号泣してる父さんでびちょびちょだった…。


何かいい夢を見たような…(覚えていないけど…勿体ないなぁ。美人の夢だったような…)




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