『ビノワ』の復活!
ーコウ視点ー
こ、怖かった…。
始めて見たよ。
オタクの真髄を!!
あの小さなルーザちゃん。
ほら、あの泣き虫なおっさん。
あの人が連れ去ったんだよ!!
あの人、泣きながらそーっと大切そうに手のひらに乗せると蕩けるような笑顔で
「ルーザ」と呼びかけて。
俺の方を向くと、深々と一礼してダッシュで逃げて行きました。
「あーー!!
おーい。おっさん!!
その子、どうするの?知り合いなんだよねーー?
まさかの誘拐じゃないよね??」
虚しい。
いや、逃げ足が早すぎて聞いてないし。
はぁとため息ついたら、ラオが焦って何度も。
「あの人悪い人じゃないから!
だ、大丈夫だから!!」
って。
ぷぷぷ。
固まってたクセに。
きっと、知り合いのおっさんの正体が、あんな風で驚いたんだな。
あの子。
ルーザは、たぶんオオサンショウウオの生まれ変わりだと思う。
そう…信じたい。
だから、この子が笑ってたから。
幸せそうな笑顔が見れたから、いいんだ。
あのおっさんを信じるよ、俺。
それより、ちっさなペンギンだよ。
ちっさいから、気がつかなかったけど何処かへ向かってる?
ヨチヨチ歩きなのに、早いねぇ。
あ!!
泉の近くの穴に飛び込んで行くぞ?
ええーー!!
コガモ①もか?
待てよ!安全確認を…無駄か、お前たちじゃな。
ペンギンの後にコガモ軍団が。
そして慌てた俺たちも続いた。
あれ?
落ちない…。
穴なのに。底はない??
何故か…
一本道に居た。
真っ暗な場所だけど、前の方に光がなければ俺のマジのピンチだったと思う。
いや〜危なかった。入った瞬間に真っ暗でビビってたら光が見えてやっと落ち着いたんだ(腰…抜けるとこだったよ…)
ラオ達は、落ち着いていて火を灯すのはここでは不味いと判断。
お互い繋がって一歩づつ少しづつ進む。
足元も見えない場所は、歩きにくい。
カサカサと音がしたのは、恐らく落ち葉。
周りには、木があるみたいだ。
でも、光は微かで一向に周りを見る事は出来ない。それでも一歩、また一歩と進む。
あ!!
コガモは?
無事かなぁ。アイツら無鉄砲に飛び出すから…。
光の出口についた俺は、そこが丸い出口なのに驚いた!
潜って外へと…。
ん?
ここ何処?
全員が揃って出て来た方を振り返ると、そこには天にも届く高い高い大木が。
まさか…この中から出てきた?
じゃあ…あのちっこい木なの??
(確か…ちっこい木から入ったよな…俺)
ええーーーー!!!!
だって、ここの森はボロボロだったのに?
ちっこい木が、天にも届く大木になった事より。
周りの風景が、花の咲き乱れる風景なのより。
沢山の泉が、まるで光を放つように綺麗でそこにまるでここの主人のような顔で泳いでるコガモ軍団は、置いておいて…。
アレ。
アレは何です?
木…じゃないわな。
だって、素材が木でないし。
でも。
形は確実に『木』な訳で。
『岩の木』って言えばいいのかなぁ。
いや、俺だって単なる岩のオブジェなら、ツベコベ言わないし。
『岩の木』には、葉っぱもある。風に揺れてる風景は、まさに『木』で。
極め付けは、樹液!!
俺は、そっと指で掬って舐めた。
「「「あーー!!!コウ(殿)」」」
叫ぶなよ。
料理人のサガよ。
美味そうな匂いが、ね!
う、う、うまーーーー!!!
マジ?
この味、まさに日本料亭のお出汁!!!
それも、複雑な旨味は間違いなく高級料理屋だ。
これで、卵焼きしたら最高の出汁巻き卵が!!
あ!不味い。
よ、ヨダレが。
あーー。欲しいなぁ。
たぶん、コレ五大食材だよね?
だって最後の場所は、ムルゼアだったし。
んー。
でも、まだちょっぴりで貰いづらい。
また…貰いに来るしかないなぁ。
ん?
足元がくすぐったい??
ペンギン??
ちっこいのは、変わらないけど元気になったね。
コレか?
俺は、ペンギン達に樹液をやると。
おぉ?
元気になる??
物凄い羽をバタバタし出したし。
ふふふ。
お前達は、知らないのか?
空を飛べないのがペンギンなん…ええーーー!!!
飛んだ?
とんだ?
トンダ??
俺の頭の周りを旋回するのは、ペンギン達。
『禁足地ビノワ』侮り難し!
その後、ペンギン達と再会の約束をして俺はラオに言われて王宮へと向かう事になった。
なんで?
俺…義父さんが…え?
王宮にいるの?
なんで??
まさか!!
逮捕?
王族にご無礼を働いたんじゃ!!
「とにかく、とにかく!!
コウ、来てくれ。親父に俺がヤラレルから。頼むよ!」
ラオの懇願に、とりあえず頷いて王宮を目指す。
でも…俺。
王宮とか…苦手なんだよ。
ふぅ。せめてコガモ軍団を懐に…。
何?
なんでコガモ①のみ?
ここで後のやつは遊んでるの??
寂しくなった懐に、更に気落ちしながら王宮へ向かう。
ルスタフも緊張してるのが、唯一の救いだ!
同士よ!!(あ!嫌な顔だけしたな…ルスタフのやつ!)