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ラオの密命…。

ーラオ視点ー


『ビノワ』の危機。

ムルゼアの危機。


それはある意味予測されていた事だった。

ただ、あまりにも酷い状態に対処が全く追いつかないだけで。

だから、俺は賭けに出る事にした。



コウだ。



間に合わないと言うオヤジの台詞も、スレッド殿の後押しもありロイス達と協力してレイバン殿と連絡を取る。


まさか。

あんなにも、短期間でムルゼアの近くまで来ているとは連絡をもらっていたが何処か信じていなかった。


だから、慌てた。

とにかく、スレッド殿の指示で隠れ家に案内する。ここ何年もかけて作った地下道の整備は驚きに満ちていた。


スレッド殿…どこまで先を見通しているのか。


ロイス達と言い…。

地下道と言い…。


ハーフ達の育成にも力を注ぐ。


もし。

スレッド殿の準備が無ければ、今この国にムルゼアと言う街は存在していまい。


しかし。

コウの顔色がかなり悪い。

強行軍の疲れだけでは無いだろう。


あそこは、仲良し親子だから…な。

そこへ、レイバン殿から意外な提案があった。


二手に分かれる。


それは、後になって考えれば救いの一手だっただろう。

もし、あの規格外の三人が揃わなければ…。


ともかく、先へと急ぐ事に。

俺は『ビノワ』へ向かうコウと行動を共にする。




これには、訳があるのだ。


ある夜、ルーザ様に直々呼び出されたのだ。

それも、俺一人。


部屋で待っていたのは、何とルーザ様お一人。


王様を差し置いて?

俺の不安が伝わってのだろう。

ルーザ様は、クスクス笑うと「大丈夫よ」と声を掛けてくれた。


と、言われもあの王様の熱愛を知る身としては、まだ不安はあるがそれより、呼び出された真意の方が気になった。



「呼び出したのは、他でも無い。

コウの事よ。


『ビノワ』の復活には、彼の助力は欠かせない。

それは、貴方も知ってるわね?」


俺は頷いた。

それは、スレッド殿を始め重鎮の皆様の周知の事実で。


でも…それが?

あ!

もしかして、コウの身に危険があるのでは?


「それはないわ。

いい?


これから言う事は二人だけの秘密よ。

もう『ビノワ』は復活しない。

生まれ変わるのみで。


そうなの。その意味が分かるわよね。

私は、『ビノワ』の生まれ変わりに最後の力を注ぐつもり。


そして、消えゆくのみなのよ。


で。

ここからが大問題。

と、なればコウの事。

優しい性格と責任感が彼自身を苦しめる事になる。

だから、私が消えた後をお願いしたいの。


コウに、これは避けられない運命だと伝えて。

そして、私は覚悟の上だったと」


な、何をおっしゃってるんだろう。


き、消える…?

笑顔いっぱいで、何を…。


「ごめんなさいね。こんな事を頼んで。

ガイ殿は、きっとラドフォード殿下と最前線。

そちらもかなり厳しいと思うから。


頼めるのは、貴方だけなのよ」


頭を下げて頼まれるのに、恐縮する事すら忘れて混乱した。

だから、その後何と答えたか覚えていない。



そして。

遂に、遂にコウ共に『ビノワ』を救う時が来た。


主様となったお姿が、あの様なラーラ(オオサンショウウオのこちらの世界の名前)だったとは思わなかったが。


相変わらず、色々とツッコミどころ満載のコウはあまりに普段通りであの話はもしや間違いかもと思い始めた。

ルーザ様の勘違いではと。


だが…

期待は叶わなかった。


コウの驚きの展開も。

その奇跡はルーザ様には、届かない。


段々に消えてゆくルーザ様と視線が交わる。

強い意志のあるその瞳に、俺は微かに頷いた。


でも、涙を堪える事が出来ない。

霞になってゆくルーザ様に、コウが必死に薬をかけるが…。


ルーザ様の姿は、完全に消えたのだ。

叫ぶコウの声が木霊するも、何も変化は無い…。


全員がただ、おし黙る。


そんな沈黙が流れを破ろうと、俺が一歩前に出ようとしたその時!!



あの人影は?

小さな可愛らしい女の人の姿に、俺は固まった。


ルーザ様!!!



起きた…。

本物の奇跡が…!!!


喜びも束の間、飛び入りの人物に再び固まる。



それは…ここに居ないはずの人で。


アルザゥド陛下!!




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