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いざ、最前線へ…。

戦いのシーンが多く出ます(すみません)

苦手な方は飛ばしてください。

次話に説明を入れます。


いつもお読みいただきありがとうございます。

ちかず

ーレイバン視点ー


地下道が激しく揺れる中、ひたすらラドフオード殿の近くへと進む。

ふと、出会った頃を思い出していた。




あの頃…。


まだ、先も見えない俺はギルドで無茶な依頼ばかり受けていた。

少しでも、強くなって不安を減らしたい。

いや、それも違うか…。


たぶん、どこかヤケクソだったかもしれない。

それでも自分を止められないままで…。

だから、

そんな毎日が続けば限界が来るのは当たり前で。

そしてその時は、やはり来た。


あれは…

ギルドの依頼を果たした後だった。疲労困憊の俺はその帰り道で突然、闇影獣に囲まれて待った無しのピンチを迎える。

叶わない。咄嗟にそう悟った。

実際…覚悟も決めた。


もう、

そこからは本物のヤケクソ状態だ!!

かなりの数の闇影獣を倒しても、敵の手数の多さから致命傷に近い傷を負った。


腹だ。

穴が開いた…。


ここまでか。

悔しさが溢れても、力が失われてゆくばかりで。


はぁはぁ…。

息が…苦しい。


もう、目の前が真っ暗になる…。


!!


そんな寸前に、俺の前に髭面のおっさんが!!

何だ?


気づけば…

おっさんは、圧倒的な魔力で一瞬にして闇影獣を片付けると、ボロボロの俺を背負う。

そして。


「頑張れよ。あと少し頑張れば、生きてて良かったと思える美味いもの食わせてやるからな!

俺の息子の作る料理は、世界一美味いんだよ!!」


それがラドフオード殿との出会いで。

ポツンと建つ一軒家には、まだ幼い少年がいた。


彼は、怪我した俺を心配してオロオロしてくれたがおっさんは。


「コウ!あの煮込み。アレで一発だよ。

食わしてやってくれ。

お前の料理は、世界一なんだから」


少年は、おっさんにツッコミを入れつつ素早く煮込み料理を出してくれた。

でも…。

腹に穴の空いた状態では、味も分かるまい。

心配そうな彼と。

助けてくれた恩人の顔を立てて、やっと一口。


。。



何だ?

いったい…


身体の中の、何かが急に動き出した気がした。

途端!!


思わず夢中になってひたすら食べ、完食した俺の身体は、なんと!!


完治していた。


腹の穴は、跡形もない。

完治した身体より現状に頭がついていかない状態の俺に、おっさんは更に爆弾を落とした。


「お前さん。テーレントのトラッデの次期長だろ?おーおー。そう構えるな。


俺も昔は、王族とやらをしていたから知ってるんだ。そうだよ。自己紹介がまだだったな。

ラドフオードだ。

向こうの台所で洗い物してるのは、俺の息子でコウだ」


ニヤっと笑った顔が、嬉しそうで。

今でも、忘れられない。



そんな出会いを思い出しながら、あまりに厳しい現状を分析する。

風鳥の調査ではマルス帝国の全ての防衛力を注いで対峙しているらしいが…。


それでも、不利は否めない。

辛うじてラドフオード殿の率いる軍勢が、前線を保っているのみで、後は総崩れ状態。


そのラドフオード殿のハーフ軍勢が光魔法を駆使して防御を展開していなければ、既に全滅していただろう。


地上への出口に着いたところで、案内してくれた彼に礼を言った。


「スレッド様が、コウ殿の方は闇影獣は出ないと分析されてました。そして、こちらはかなりの激戦区です。


撤退も視野に入れて参戦下さい。

感謝しますとの伝言です」


俺は、苦笑いを返す。

スレッド殿らしい…。あらゆる事態を想定済みか…。


「コウの事は、ルスタフ殿に任せてある。

心配はしていない。


もちろん、負け戦はしないよ。

コウに秘密兵器を貰ったから。

そう伝えて下さい」


彼は少し微笑んで頷くと戻って行った。


さぁ。いよいよ本場だ。


地上へ出る階段を登る。




ーガイ視点ー


キツイ戦いだと理解していた。


だが。それも単なるつもりだった…みたいだな。

戦場のど真ん中に、陣取る我々が必死に前線を保つも防御に回っているハーフの光魔法も限界に近い。


どれだけの仲間が倒れただろうか。

昔から、殿下の下で働いた仲間達も再び剣を取り参戦していたが。


無謀な戦いと知っても尚、この戦いは、負けられないと参戦した彼ら。

何故なら後ろにいるのは、国とか言う馬鹿げたものではないからだ。


普通の民。

毎日をひたすら、懸命に生きている普通の人々。


それがこんなにも偉大な事だと知ったのは、いつだっただろうか。

貴族に生まれた一番の不幸は、それすら知らない無知かもしれない。


だから。

だから今は、負けられない。

剣を持つ手が震え、限界を訴えても引かない。

その意思だけは。



右を僅かに振り返れば、殿下の魔法がまたしても炸裂する。

魔法量では、ピピランテのゼン殿に次ぐものだとしても限界を遥かに超えたのだろう。

青白い顔はそれでも前を向いて構える。


俺も止める力もない。

このまま…それでも。。


ドドドドーーーン!!!!


何が?


大爆発が突然、闇影獣の前線を全て焼き尽くす!


振り向けば…。


ゼン殿!!

なんと…

ゼン殿が問答無用で、火魔法を繰り広げ前線の闇影獣を一瞬で消滅させていた。



その上。



『厖』



レイバン殿なのか?

テーレントから戻ったと言うのか?

あの短期間で??


幾多もの疑問があるが、それを吹き飛ばす威力。

誰一人、動く事すら出来ない迫力がそこにある。


レイバン殿の気の力は、既に我々に測れる域を脱していた。

恐らく。

レイバン殿自身は、軛から解き放たれ変わったのだろう。

その『気』は、暴発したように大地を抉り遥か数キロに渡る闇影獣を弾き飛ばす。



唖然とするのは、まだ早かった。


なんと。

神殿長のアーリア様ではないか?

希代稀に見る神力の持ち主の…。



怪我人で溢れかえった医療テントからは、アーリア様が入った途端!!


何も聞こえなくなる。

いや、その周りもか静まりかえった。


はぁ?



すると、一斉にテントから走り出て行くではないか!!

なんと、全員を一瞬で治癒したと言うことなのか?

そんな…。



。。。


「さあ。ラドフオード殿。

コウからの差し入れを飲んで下さい。


効きますよ」


唖然とする俺の横で、ゼン殿が差し入れた飲み物を殿下が飲み干した途端!!

顔色が…。


「ま、魔力が全て戻った。

いや、傷すら無いとは…。

コウ。美味いよ!!」


あ、ダメだ。

また、バカ親に変身し始めたぞ。

顔面崩壊ほど、目尻を下げなくても!



コウが絡むと馬鹿になるからな…。


その間にも、『厖』の気を何度も放つレイバン殿に見とれていると。

アーリア様が飲み物を俺に差し出した。


「これ。コウが…あ!!」


コウのだよな。素早くアーリア様から受け取ってグイッと一気飲みだ。

だって。

美味いに決まって…!!!



ひぃーーーー!!!


何?

この味!!


口が爆発するーー!!



「ガイ殿。

悶絶してるところ申し訳ないですが、お加減はどうですか?

完治しましたでしょう。

この薬『回復薬』を飲んだら、天国へ行きかけた人も全員ピンピンになりますから。


ただ、味がねぇ…」


そ、それを先に言って欲しい!!

しかも、俺だけ『治癒』でなく何故この薬??


「お配りしたいけど、この味です。

人望の厚いガイ殿の太鼓判があればと」


身体中に溢れてる力は、元通りではどころでは無い!!

その以上で。


俺は急いで緊急指令を与えた。


「命令だ。

アーリア様に薬を差し出された者は、有り難く全て飲め!

その命。

必ず、助かる!!」


伝令を出した後、口直しのコウの飴を貰い前線へと戻った。

もう一度戦える。


俺は、心の中で密かにラオを褒めた。

間に合ったぞ。

お前の作戦は成功したよ。

ありがとう。




ま、言うつもりは、ないけど…な。








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