表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/191

奇跡の大逆転!!

 トントン。


「寝てます」

 返事をした俺の肩を再び叩く。


 トントン。


 眠いのに…。



 トントン。


 はぁ。

 仕方ない…。

 渋々…諦めた俺が起き上がると、目の前に人がいたよ。貴方、誰?

 何故俺のベットの側に子供の姿が?


 慌てて周りを見ると、仲間たちはスヤスヤ寝てる。


 僅かな気配ですぐ起きるレイバンも。

 気配を読むことに、特に長けているスタンさんも。


 だーれも起きない。

 。。。



 あ!

 わかった。


 コレ夢の中っていう、ベタなやつだな。


 やっと状況を理解した俺は、元気よく寝床から起き上がる。



『一緒に来て!』

 子供の声に、軽く頷くと外へと飛び出した。


 緑が増えた大地の風景に、満足感いっぱいでいると…トントン。


 またか。

 しかも、足をトントンとか。


 下を向いてひとつ気づいた。

 大地のあちこちは、未だあちらこちらが、荒地のままで。


 ん?

 しゃがみ込んで、その荒地である場所をジッと見ていると…何だ…コレ?


 点々と落ちている何かを見つけた。


 お?粒々発見!!

 コレ。たぶん…種だよな?


 しかし、なんでこんなに渇ききってるんだろう。

 この種。

 そう思いながら辺りを見回せば、遠い所まで種は満遍なく発見出来た。


 俺は手に取ると、ひとつため息を零した。

 何故なら…この種はもう芽が出ないやつだからだ。

 いや、どれもかもそうかもしれない。


 ん?

 なら何でこの子はここへ俺を連れてきたんだ?

 何を頼もうと、とそこまで考えていたら声が聞こえてきた。


 あの子だ。


『この種蒔いて。花を咲かせて』と。


 いや、俺は花咲か爺さんじゃないし。

 しかも、初めて話した言葉はソレなの?


 種を見つめ、やはり無理だと断ろうと思って顔をあげたら…。



 何故!!


 何故なんだよ。


 子供達の姿がわらわらと増えて。

 おぉ。

 俺の周りをぐるりと取り囲んでいる?


 しかもだ!!

 見れば沢山の子供達の手のひらには、あの種が!!

 えーー。

 皆んなで揃って俺へと差し出すとか。


 その表情を覗き込んで、ちょっとゾワッとした。

 虚ろな瞳。

 細い腕。


 それに、だいたい此奴ら誰なんだろと考えて、立ち止まる。

 変だろう。どっから湧いて…

 と、そこまで考えて、ちょっとゾッとした。


 改めてそう思うと余計に嫌な想像が!!


 まさか…


 まさか。。本当のゆ、○○れい?


 ひぃーー!!


 震え上がる俺の目の前、見慣れた姿が。


 太郎!!

 お前…このタイミングで登場とか…。

 ありがとう!!

 地獄に仏とは、お前の事だよ。


『コウよ。此奴らの頼み聞いてやれぬか?』

 真面目な太郎が首を垂れた。


 太郎…まさかお前まで…。


『阿呆!!

 生きてる者が、幽霊になるか!!


 それより、もう時間がない。

 月が出てる今だけ。


 今だけなんだ!!』


 必死な太郎に、俺も怖さを押し殺して真面目に頷く。


 怖がってる場合じゃないのか…。

 そう思い直して、今一度、手のひらの種を見つめなおす。


 この涸れた種をどうやって…。

 うーん。。


 考え込む俺の目に、白い風船が見えた。

 あれは…。


 そう、変質した米。


 そうだよ!!


 あの米の汁が詰まってるっぽい風船…アレを割ってこの種にかければ?


 うんうん!


 自分の名案に頷きながら、白い米の風船を手に取ると種にかけようと、割る!!



 。。。


 いや。

 割ろうと思った。


 割ってます!!

 もち…

 俺の必死の!渾身の!!全力の力で!!!


 結果…

 割れません。


 ため息をつく俺に、聞き慣れた声が。


『貸してみよ。我が割ろう』

 太郎。


 太郎が爪をかけた。


 その時!


 パシャン!!

 すげーよ、太郎。簡単に割れたし!


 歓喜してる暇はなかったよ!


 割れた風船から、予測どおり汁が、出て…いません!!

 出ないとか…マジか?


 白い煙?

 煙が詰まった白い風船って…もう既に米じゃないじゃん!いや、それどころか食品ですら無いし…。

 なんだ…よ。。


 がっくりしてる俺に太郎が急に大声を出す。


『これを!よく見ろ!!』


 白い風船の畑は、見渡す限りの沢山実ってるんだが、それが今、畑中の白い風船が弾けて、その中身がふわふわ浮かび出したよ。


 これ何?

 もしかして、綿菓子とかか?


 いや、違うな。

 だって…

 白いふわふわはやがて、上空へ登って行き集まると、なんと『雲の偽物』に変身!!


 ぽつ。


 ぽつぽつぽつ…。


 おぉ?

 まさかの雨??

(そこまでマネか?)


 静かな雨は、子供達の手のひらの種をも濡らして。大地を潤して行く。


 誰も口を開かない。

 ただ、雨が当たる米が大地に落ちる度に、そこから木が突然生えた??


 ええーー!!


 大地に、次々と木が林立したし。

 米って…木だった?

 草じゃないのか??


 すると…。



『ここで、生き延びるのはとても難しかった。

 逃げたくても、封印で外へ出れず。

 閉じ込められた。

 生き延びれない。生き延びたい!!

 相反する思いの中で、なんとか必死に生き延びたい俺達の前に()()米が現れた。


 アレは、我々獣人には『命の米』

 それでも困難は続いた…。


 ある者は…毒に。

 ある者は…栄養不足で。


 そして最後は、獣人となった仲間を襲い、襲われて。


 倒れた者達は、生き残った者達の数十倍いただろう。

 それでも。


 いつかは…。

 待っていた。

 ずっと…。


 この大地の目覚めを。


 ありがとうコウ…』


 声のする方を振り返れば、そこにいたのは俺を起こしたあの子どもだ。


 でも。

 だいぶ姿が霞んでいるが…。


 ぼんやりした姿になって、余計幽霊っぽいよ!

(足は震えますから!!)


 でも。

 俺には、分かる。


 今は怖いより、彼等も向き合う時だと。

 ずっと、この地を見守ってきた彼らと。



 俺に、お辞儀をしては次々と、消えて行く子供達…。






「おはよ!もうソロソロ起きろよ!コウ!!」ルスタフの声に飛び起きた。


 寝てのか…俺。


 もう夢の中は、終わったのか?


 周りの仲間たちを見れば誰もいない。

 ハハハ…既に起きた後か。

 さあ、俺もドアの向こうへ…と。




 そこは。

 変わらない風景だった。


 やっぱり夢オチか。


『お前にはあの風景が見えぬのか?』

 太郎?


 お前も見たよな…夢?

 首をクイッと曲げ、その先を見せようとする太郎!



 なに?


 あー本当だ!!


 よく見ると、あの荒地だった部分から小さな芽が出てた。

 その芽は沢山…。


 本当に沢山あった…。



 俺はにっこり笑って、ルスタフへ向き直ると昨日の夢の話をした。

 そこにある…芽を指しながら。


 そしたら…



「この芽は、きっと大きく育っていつか森になる。

 この辺りも昔のように豊かな森にな。


 昔、この辺りはテーレントでも最も豊かな森だったのだ。

 だからこそ。

 だからこそ。最初に捨てた者は僅かな望みを繋いでここへ来たのだろう」


 レイバンの言葉にしっかり頷いた。


 うん?

 ちっさい鳥が煩いぞ?


 あー。

 夢の中で米の畑を荒らしたからか?



 でも。アレは夢だし…。


 ええーー!!


 全ての実が、弾けてる?


 やばいよ(冷や汗が!!不味いよ…現実だと思わなかったし…俺)


 しゃがみ込んで米の白い風船のあった辺りを眺めてたら、草が鼻をくすぐって…。



 ハ、ハ、ハクション!!


 ん?

 手に何か掴んだる感触が!!


 あーー!!!

 引っこ抜いちゃった!!


 更にピーンチ!!

 いよいよ、八つ裂きなの?

 ちっさい鳥の集団に??


「コウ!これなんだ?」


 びびってる俺にルスタフが指差した先は…、



 あーー!!

 根っこに何か実ってる??


 じゃが芋っぽいけど…


 へ?

 ちっさい鳥がこの実に突進して来た!!



 食べてる…。


「コウ殿。

 それは恐らく米の一種かと。

 しかも超高性能で、激ウマの…」

  翻訳…レイバン!



 奇跡の大逆転ーー!!

(棚からぼたもち)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ