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大地の真なる目覚め!

 ーコウ視点ー


『あはは、あはは』


 おい。

 コガモ①よ。


 その態度はまさかのオネダリか?

 うーん。


 可愛さがめっちゃ無い!

 クネクネ羽を広げて踊っているけど、ちょっと引くよ…ソレ。


 どうやら、ちっこい鳥との話し合いは終了したコガモ軍団の中からまたもや、①が飛び出てさっきから…さっきからコレだよ。



 いや。俺だって努力したよ!

 何せ台詞は、アレのみで。


 袋から出した胡桃など木の実類(好物だしな)

 もちろん、お米も出しましたよ!


 でも、正解は無し!


 あー。

 とうとう痺れを切らしたコガモ①が走り出しちゃったたよ!


 急いで後を追っていくと、どうやら田んぼらしき場所に到着したけど。


 何…この白い水風船。

 もしかして、食べ物か?




「コウ。

 どうやらコレは米らしいのだ。

 ただ、元は我々の知っている米と以前は同じだったらしいのが突然変異したらしいのだ。

 だから、こんな風になって食べれなくなった鳥達が困ってるから料理をしてと、頼んでる」


 ええーー!レイバン?

 もしや、あの『あはは・あはは』でも分かるのか?


 なんと!!色々な鳥語を使うなんてバイリンガルだね!



 あー、はいはい。


 コガモ①め。

 叩くことないだろ…。


 俺は思い切って水風船の米に触ろうとしたその時、突然後方から怒鳴り声が聞こえた!



『よくも我々の仲間を攫ったな!!

 許さない。いいな!!』


 そんな怒鳴り声と、共に物凄い勢いで岩や砂が吹き飛んで来た!!


 ぶ、ぶつかる!!



 し、新種か?!


 身構えた俺の元には何も飛んで来なかった。

 よく見れば、既に戦闘態勢だったスタンさんとバリーは、魔法を繰り出しているし。

 風魔法で、ルスタフが飛来するものを撃ち落としていた。


 でも…おかしいよ。


 いつもなら、大量の仲間達を率いて襲って来る新種がたった一人とは…。

 キョロキョロする俺の目には何も見えない。


『ふふふ。

 我は、既に手下など必要としないのだ。

 さぁ、どうする?』


 その言葉の意味はすぐ分かった。

 何故なら…



 巨大化したからだ!!

 牙や爪なども、完全に過剰防衛だよ!!ソレ!!


 物凄い鋭い爪には、どうやら毒があるようで。

 紫色の毒々しい液体が滴っている。


 毒に素早い動き。

 その上、風魔法を縦横無尽に使うので全員が防戦一方だ。

 どうしてだ?

 普通なら、反撃に出ても…


 あ!不味い。

 攻撃は激しくなる一方で、後退を余儀なくされ始めたし。


 。。。


 ん?

 なるほど、そう言う事か。

 ルスタフや皆んなが避ければ、後方にいるちっこい鳥達に当たるから。

 だから、反撃に出るタイミングがないのか。

 でも…不味いよな。

 だって、

 余計に動けない皆んなの弱点に気づいた新種が更にそこを狙っていたから。


 その上、あの毒だよ。

(まるで、あの上空の濁った雨みたいだ)


 誰か当たったら…。

 ブルッと身体が震える。

 嫌な予感ほど当たるからだ。


 何か。

 何か良い方法が…。

 俺が焦って色々考え込んでいたから。


 ボコボコ!!


 地面に穴がいくつも空いて、ゼブラ達が顔を覗かした!!


 危ないよ!!

 新種が、毒の雨を降らしてゼブラ達を狙った。


 もう。もうダメだ。

 沢山のゼブラ達の頭上に毒の雨が…。


 絶望感いっぱいの俺にルスタフが声を掛けてくれた。「コウ!よく見てみろ!」と。


 ん?

 顔を上げると。



 パク。



 ?

 パク??


 ゼブラ?何食べてるんだよ!


 まさか…まさかその毒なのか?

 そう言えばあの入り口の毒も食べてたよな。

 うーん。

 動物には毒を食べる種もあるからな。


 好物って、胡桃じゃなかったのか?


 ん?

 あー、胡桃もいるのか(交代で並ぶから配ってます!)

 でも、今よそ見は不味いよ!


 あー!危ないーー!!


 新種は何故か憎しみの篭った目でゼブラ達を睨むと執念深く追い回し、爪で引き裂こうとしたその時!


 あ?


 お前たち、俺から貰った胡桃を投げたよ?


 あのな。

 それじゃ攻撃になる訳がないから…?


 ええーー?


 何故胡桃でヨロけてる?

 胡桃…最強か?


 ゼブラ達が胡桃を新種に向かってら一斉に投げつけ始めると新種は、堪らず後退をして行く。


 凄いわ。

 新しい胡桃の使い道なのか?コレ…。


『ふん!お前達がいくら寝返っても、遅いわ!

 この米の謎も。この土地の真なる解放も無理なのだからな!』


 捨て台詞を残して、新種はそのまま消えた。

 いや、正確には渦巻く風の中心にいたはずが姿が見えなくなったのだ。


「もう、大丈夫だ」のレイバンの声にホッと肩を落とした。


 でも。最後の捨て台詞気になるなぁ。

 もし、単なる捨て台詞ではなかったら?


 真なる解放…米の謎も。


「コウ殿。

 私に任せて下さいませんか?

 そろそろ活躍しなきゃね!」


 突然そう言い出したのは、アーリアさん?

 でも。

 これだけ広大な土地をどうするの?


 アーリアさんは、穏やかに微笑むと。


『清めの浄化よ。この土地に顕れよ。

 真なるその力を示せ!』


 バババババーー!!!


 音がしたと思う。

 そんな音が。


 地面が割れて。

 緑が一斉に芽を出して、その背を伸ばす。

 花を咲かして、風に吹かれて。


 まるで歌うように。


 そんな風にレイバンも思ったのだろう。

 モーリフを出して弾き出した。

 トラッデの仲間も参加して、その夢のような時間の後。



 大地には、緑の風が吹いていた。


 ちっこい鳥が嬉しそうに飛んでいる。

 俺も、モーリフを取り出して…え?


 ルスタフ?

 なんで?


 ここでやらなきゃ男じゃない!!

 え?

 もう終わったって??

(クッソー。出遅れたか…つい見惚れてしまったしな…反省・反省!)


 既にレイバン達は楽器をしまっていた。

 アーリア様も終わったみたいだ。

 ちょっと疲れた顔をしてるけど。


 改めて周囲を見渡せば、そこはもう、今の美しいテーレントの一部になり溶け込んでいる。


 そうか。


 秘密の場所は、こうして終わりとなったんだな。

 誰もが知る場所に…な!



 ーレイバン視点ー


 なんと。


 ほろほろ鳥の幼鳥が取り持ち、怒れるこの地の住人の言葉を聞くことが出来た。


 酷い環境の中、偶然の産物があのドームが出来た。毒から守るもの。

 その為、僅かに生き残る事が出来たと。

 ただし、厳しい環境と獣人となると気がおかしくなる影響で長生き出来ないままで…。


 最後は小型化して、その危険を避けたと言うのだ。

 大人にならない身体。

 それだけが、生き残る手段だと。


 そうやって、やっと生き残り命を繋いできた彼らに次なる難題が。


 それが米の異変だ。


 食べ物がない。

 それは重大な問題だった。


 コガモ①と呼ばれる種は、ほろほろ鳥の幼鳥として企画外だ。

 そんな彼が獣人に希望を持たらしたのだ。



 もちろん…

 その希望こそ。。。コウだ!!


 しかし!!


 米の謎を解く間も無いまま、次なる危機が我々の前に現れた!


 異変を嗅ぎつけた新種だ。

 しかも、あの国境の街からまた進化を遂げていた。


 かなりレベルアップしたヤツは、か弱い獣人を狙い撃ちにする。

 その為、身動きが取れない我々の窮地を助けた者達は、誰も予測しない者で…。


 なんと…

 あの

 ゼブラだ。



 闇影獣の一種のはずが。


 だが、彼らの気配は、もう闇影獣のものでは無くなっていた…。

 まさか!!

 絶句とはこの事で。

 信じられない気持ちは、ここにいる誰もが同じでだろう。


 なんと。

 闇影獣は、単なる動物になれると言うのか?


 では。

 闇影獣とはいったい何なのだ?


 疑問より意識を戻した俺が見たものは。


 激しく動くゼブラ達のお陰で新種は最後に逃げ出した事実だった。


 そして、まさかの

 最後の武器は…胡桃。


 コウの胡桃は、既に浄化のタネのような働きをするのだろう。

 いや。もっと強力なものかもしれない。


 コウの胡桃を食べるという事。

 それは…もしかして…。



 呆然とする間に、アーリア様が神殿の最大奥義を展開し始めた。


 危ない。

 命のギリギリまで攻め込んでいる。


 いくら女神セレーネ様が付いているとは言え。

 俺と仲間たちは、楽器で助力をした。


(ルスタフがコウのモーリフを止めてくれて良かった…ありがとう)



『大地の真なる目覚め』


 緑溢れるその風景を。

 奇跡の大地をただ、ただ立ち尽くした俺はいつまでも見ていた。



 ラゼの遠吠えが聞こえた…。


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