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とっておきを出すぞー!!

ーコウ視点ー


とにかく。


料理をしてる。

打開策とか言う前に、まずは腹ごしらえが大事!

ゼンさんも起き上がったけどまだ、顔色は良くないし!


周りを見渡すと、緑はまだ疎らだった。

でも、草木のある風景は俺たちにとってホッとするもので。


俺はこんな時の為に、育てた『とっておき』を出す事にした!


ん?

『納豆』だよ!


え?

今更って…。


あれから『田中食堂』で育てた納豆はいつもと違ったんだ。

粘りも、色も。

何より味が最高でさ。

本当に凄いんだよ!!


こんな時だからこそ、美味しいもの食べなきゃ。


で。昼ごはん!!


まずは納豆スパゲティ。


冷やうどん(ドンコの煮物や薄焼き卵や納豆、キュウリの薄切りなんか乗せるんだ!)


揚げの包み焼き(油揚げの中に納豆と長ネギと味噌を入れて焼く!)


納豆と梅肉の和え物(長芋入り)など。


あ!忘れてた。

納豆汁!!



もちろん、白いご飯に納豆も忘れてない!



納豆尽くしのメニューに、レイバン達は妙な顔をしてる。

特にトラッデの人達…プププ。


百面相かよ。


美味しそうに食べるルスタフやスタンさん達に引きずられて勇気ある誰かが食べ始めると…。


「う、美味い!

こんなに臭くて気持ち悪いのに、本当に美味い!

信じられない…奇跡だよ!」

叫び声が響き渡った。


なんちゅー大袈裟な。


しかし、本音ダダ漏れだね。


でも…良かった。

張り詰めたものを常に出してたトラッデの人達に笑顔が戻る。


あ!

美味しいそうな風景を見惚けてウッカリしてた。


丼から納豆が泡だらけになって溢れてたよ。


泡。

もう凄すぎて収拾がつかないよ。


はぁ。

ネバネバが手に絡みつくし。


アレなんかジャパン玉みたいだよ。

ふふふ。


。。


ん?



泡…。



「太郎!この泡を大きくしたいんだ。

力を貸してくれないか?」


納豆と格闘していた太郎がこちらを見た。

『何をすれば良いのだ?』


俺の内緒話に頷いた太郎の顔は少し怪訝なもので。

でも、きっと…。



泡だらけの納豆に太郎が息吹き込む。

その横で俺は必死にかき混ぜる。


泡を更に大きくするために。



二人の奇行に皆んなの注目が集まって、焦れたルスタフが「何してるんだ?料理か?」と聞いてきた。



「泡をさ。大きくしてドームの代わりに使うんだ。だから、太郎に息を吹き込んで貰ってる!」

俺の返事にルスタフの目が見開かれた。

少し疑心暗鬼な皆んなの顔。

でも、納豆を信じてる!!俺は必死に搔きまわす!!


。。。


だけど。

どんなに頑張っても、泡をドームほど大きく出来るはずもなく。


皆んなの温かい同情の眼差しに、疲労感いっぱいになった。

疲れを癒やそうと水でも飲もうかと袋に手を入れて、ん?

硬いものを間違って掴んで出したけど…コレ何?


青い石?

どっかで見た気がしたような。


うーん。



あ!!

翡翠じゃないか?

(確かリョクとかいう名前の…)


息を吹き込み続けていた太郎が、それを見て叫んだ!


『それだ!!

ソレをこの泡の中へ放り込め!』



食べ物に、石か?

んー。


分かったよ。睨むなよ…。



ポイッと。



。。。




泡!!

いや、もう既に泡のとか名乗れないよな?


すげー。

確かに言い出したけど、その姿のインパクトはめっちゃ凄くて。



泡は既に空高く広がっていて、太郎はソレを口で咥えてドームの方まで行くと放り投げた。


ええーー!



俺達と、ドームの双方を包み込む納豆ドーム?がその瞬間!完成したよ。



パン!!


何!!

爆発か?

どこだーー!!



え?ドームなの?


じゃあ…毒の雨が……アレ?

降ってない??


見上げると、確かに毒々しい濁った雨が真上に降っていた。


そう…納豆ドームへ、だ。


納豆ドームに触れた途端に、霧散するのはあの毒の雨で。

信じられない。

信じられないけど、これは現実。


雨粒は納豆ドームにぶつかる度に、虹色に変わって霧散して行く。

まるで奇跡のような風景に、ただ戸惑う。


「待ってくれ!俺達は怪しいものじゃない!!」


ん?

レイバン??


誰に…。


アレ?

あのちびっこい鳥か?


鷲に似てる気がするけど…ちっさ!!

もしかして、あのピィピィと言う声は獣人語?


レイバンは理解出来るよな?確か…。



あーー!


段々増える怒りんぼのちびっこは、矛先をこちらに変えて来たーー!!


不味いよ。

攻撃する訳にはいかないし。


どうする?

地味に痛いし。


(つつ)くのやめてくれよ!!

痛いって!


あ!!

懐から、コガモ軍団が元の大きさに戻って俺の前に立ちはだかるよ。


おい。お前たちまで喧嘩すんなよ!


ピィピィ!!

ピィーー!

ピィピィーー!!


はぁー。

どっちが喋ってるかも分からんとは。


どっちも『ピィ』だし。


アレ?

レイバンがニヤニヤし出したぞ?

なんでだ?


あ!そうだよ。

レイバンは言葉が理解出来るんだった。


皆んなの視線がレイバンに集まると。




レイバン曰く。

『コウの名付けたコガモ軍団が、ここに住む獣人達に物凄い勢いでコウの自慢をしてるんだよ。


それが面白くて。

あまりの真剣さに獣人達も段々と聞き入ってるから。」


な、なにーー!!


コガモ軍団よ。

いったい何を…。

(親バカでなく、子バカとか…。

イタイよ。ソレ。人に自慢とか…でも、ちょっぴり嬉しいかも…)




『いいか。

コイツは、底抜けの鈍感なんだぞー!!


馬鹿が一回りして、お人好しの権化なんだ。

付加料理を作っても、その価値に全く気づかないし!

美味しいか?その一点のみで…。


別空間も、なんのその。

深刻な状況も、なんのその。

無限収納の意味も知らないのに、誰より使いこなしてて。


その上、ちっこい事を気にして牛乳飲んでは腹痛なんだ!

どうだ!!』



聞こえない事は幸いだ。

レイバンはその会話を聞きながらも笑いを必死に堪えて、この奇跡の風景を眺めた。


納豆ドームは、今美しく七色に輝いていた…。



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