秘密の場所にあったものは?
ーコウ視点ー
見渡す限りの荒地。
土や岩が剥き出しの大地は、草木一つ無い。
アーリアさん曰く。
「この大地に命が芽吹くには、かなり難しいかと。更に所々に、強い毒性を含んだ岩などが見えます」
荒地を耕すとかじゃダメなんだろうな。
んー。
考えてもいい案は出ないまま、前に進む。
いや。実は何か光の反射してるものがある気がするんだ。
って言ったら、めっちゃミゲルが食いついてきたし。どうやら誰も感じないらしい。
太郎?お前もか?
『ふん、ここでの我など役になど立たんわ!この大地は全く違う場所なのだ』
お?
太郎のヤツが大人しいとは…。
やっぱ、毒が不味いんだな。
なんとかしなきゃ…。
思い悩んでいた俺の目に、キラッ!!!
攻撃か?
こんな眩しいの無理!!
サングラスーー!!
(無いか…もしかしてルスタフなら…)
誰も感じない?
何だ?じゃあアレも見えないのか?
ほら。
あのドーム型の光を乱反射させてる元凶だよ!
アレ!!
「コウ殿。
アレは魔法やら気やらを重ね掛けして作られた偶然の産物。
そして、その中には命の気配がします」
お?
確かに…。
でも、誰も見えないって。
どうして分かったんだ??
ええーーーー!!!!
ゼンさん?
どっから来たの?
「呼ばれたのですよ。
まぁ、それよりこのドーム。
偶然の産物は、毒を防ぎ闇影獣も防いでいます。
だからでしょう。
この場所で生き延びた者がいたのは」
ゼンさんの説明に、ミゲル達が反応した。
トラッデの仲間の中には泣き出す者も。
「このトラッデは、獣人を身内や友人に持った者達が作った物。
忌避する者達から守り、生き延びる世界を作ろうと。俺のように獣人として生まれた者、突然異変を起こして獣人になる者。
そんな者達の生きる唯一の場所なんだ。
だから、この地に封印された過去のテーレントの仲間たちに特別な思いを抱いていたんだ」
レイバンの説明の間にも、啜り泣きが聞こえる。
あんなに勇敢で雄々しいトラッデの人達が泣いている…。
それほどの。
「安心されるのは、まだ早いです。
あのドームを壊した途端に中に毒が流れ込みます。
ドームの上空に渦巻く猛烈な毒が雨のように降り注ぎます。
だから、ドームを安易には壊さない」
ゼンさんのような魔法使いでも…か?
悲痛な表情から見ると、その猛烈な毒はかなりのものなんだな。
とにかく、周りから浄化するしか。
土地を…。再び元気に…。
そうだ!
もしかしてこの方法なら。
今なら可能かも。
(ゼンさん登場したから…な!!)
「ゼンさん。焼き畑農業だよ!
それしか無い。うんうん。」
自分でもいい事思い出したよ。
最近、必要な時に記憶の一部が甦るんだよな…不思議だけど便利!
あれ?
誰も賛成無し?
アレは美味しい作物出来る良い方法だよ。
今回の炎は、何せゼンさん!!
いける。
俺が拳を振り上げてると、ゼンから説明を求められた。
あやふやな記憶をやっとこさ説明すると…。
「それです!!
ゼン殿の火魔法はあの時から、別物になりましたから。
浄化の炎としてこれほど相応しいものはありません!!」
お!びっくりしたー。
何故かめっちゃ興奮したアーリアさんから返事とか。
でも、全員の賛成を勝ち取った俺は、ゼンさんにどのくらい離れたらしいいいかを聞いたら。
「このままで大丈夫です。
今回の魔法は、特殊なものですから」
な、なんと!!
マジですか?天才だねゼンさん!!
全員が固唾を呑んで見守る中。
『我が力を糧としてその力を現せ。
全てを炎で焼き尽くせ。今こそ真なる力を見せよ』
ええーー!
焼き尽くせとか。
マジか?
あ!ゼンさんの手の甲。
ピカッて。
アレ…蜘蛛か?
そんな事を考えているうちに、ゼンさんの足元から炎が溢れ出して目の前全てが炎に包まれる。
それは、
俺も。
レイバン達も。
太郎も。
そして地も岩も全て…。
炎の中にいるはずなのに、一切熱くない。
でも、踊るような炎は天高く上り詰めそして、最後はゼンさんの手の甲へ吸い込まれたみたい?
あ!!
ニコッと笑ったゼンさんがふらっと倒れ込んだ。
予想していたらしい男前?のカリナが受け止めて治癒を施していた。
何かレベルアップすげーよ。
カリナ…。大食いなだけじゃ無いんだな…。
「ゼン殿は大丈夫です。
ただ、普段から抑えている魔力を全開にした経験がないので気を失っただけ。
しばらくしたら、目が覚めると思います」
明らかにホッとしたため息を零したレイバンの顔に少し穏やかさが見えた。
それもそのはず。
だって。
目の前に。
小さな花が咲いているんだから!
風に揺れてる…。
『土地が目を覚ました。
我にも感じるようになった…人間よ。
我からも礼を申す』
太郎が頭を下げてる?
珍しい光景だな…レイバン達も嬉しそうだ。
でも。
課題はまだ残ってる。
それも特大なヤツが!
ピカピカ光るドームに傷一つついてない。
そして上空の猛烈な毒も何故か浄化されず、今までドームの真上にあった。