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向こう岸へ

ーコウ視点ー


「おーい、こいこい」


可愛なぁ。

パン屑に必死に食いつくとこは、前世の鯉に似てるなぁ。


え?

現実逃避??


はい!!

そうですよ。その通り!!


だってさ。


浮島に置いてけぼりの俺たちの脱出方法がまるで思いつかない。



船はダメ。

泳げない。


そして橋も当然無い!!


行き詰まった俺は、食い気に走ってます。

で。

失敗作のサンドイッチのパン屑を湖にな。

暇に任せて撒いていたら、だいぶ集まったなぁ。


アレ?

木彫りで撒いた数よりめっちゃ多いような…。


早!


だけど…まあいいか。



あ!!

俺…いい事思いついたぞ。


「ルスタフ。餌やりしたら数が増えたんだよ!

だから、この魚に乗ってさ。


向こうへ」


言いかけた所、「「コウ」」

と二ヶ所から声がかかったぞ。


なんか疲れた表情のルスタフと。

にっこり笑ったスタンさん。


「コウ殿。

この魚が果たして我々を乗せることが出来るでしょうか?」


きたーー!!

ド正論。


正面から来たよ。


これだから俺はスタンさんには勝てない。


「でも。餌やりで数をここまで増やせるのはコウ殿のみです。ありがとうございます」


はあー。ここで礼って。


スタンさん最強伝説完成だな。


トントン。


肩を叩いて慰めてくれるのは、レイバンか?

え?


コガモ軍団。

と、言うよりは怪鳥に成長したヤツだな。

元に戻っても色に変化があるから分かるぞ!


なんだ?

胸張ってるような…。


ムクムクムクーー!!


おぉ?


コガモ①がまたもや、巨大化か?

(名付けを我慢してる身としては。き、記号しか…。ごめんコガモ①)


しかし。

今度の巨大化は…。



デブ化??


丸々としたヒヨコのお化けのような大きなコガモ①は確かにモフモフが最高で可愛い。


可愛いけど。


え?

乗れって??


うーん。


あぁ。またその目か。

弱いんだよなぁ、つぶらな瞳。


俺がよじ登ろうとしたら。


その様子を見ていたレイバンから冷静な判断ツッコミが。



「コガモよ。まずは己自身で飛びが上がってみてからだ。コウに危険があるのは嫌だろ?

さあ。期待に応えてくれよ」


おー。

コメントがハンサム。

(ハンサム=無敵なのか…)


ムッとしたコガモ①は、ピッと構えると羽を動かしてみる。


可愛い。

必死の羽の動きに、コガモ①の身体が浮き上がったぞ!!


まぁ…数センチ浮き上がっただけ。

悔しそうなコガモ①を慰めているうちに。


今度こそ名案が。

ただ。これは他人に酷く(ひどく)酷い(むごい)ことを頼む事になる気がする…


いいのだろうか。

珍しく迷っていると、レイバンが目敏くそんな俺の様子に気がついて声をかけてきた。


「コウ。もしかしたら何か思いついたな?」と。


珍しく言い淀んでる俺にスタンさんの一言が。


「今は藁にも縋りたい時。皆で案を出し合うしか無いのです。無理ならば私が止めましょう」


真っ直ぐな瞳に、俺は僅かに恥じ入る心が。

(失敗を恐れちゃダメだよな)

確かに、無理ならやめればいいだけだ。

よし!


「これは、俺が魔法を知らないから提案するんだ。無理なら言ってくれよ。


バリーの水魔法を氷の魔法に変えて橋を架ける。

水魔法に風魔法のルスタフが手を加えれば氷に変わる筈で。


どうだろう?」



おー。見事に沈黙だ。


まぁ。そうなるな。


橋を架ける程の魔法となると、莫大な魔力が必死だから。


やっぱり…無理か…



「やります。

きっとその為に力を貰ったんです。


あの時…」


そう言ったバリーの目に燃えるような力が漲るのが分かった。


「しかし。その力を持ってしても今回の挑戦は無謀なものだ。私はこのままでは賛成出来ない。

だが…もしレイバン殿に魔力吸収の技があれば或いは…」


魔力吸収?


なんだ?レイバンだけ使えるのか??


「コウ。その通りだ。

これは獣人が以前使えたと言い伝えに残っているもので他の者の魔力を吸収して、その魔力を今度はまた別の者へと移せるものだ。

要するに、魔力の移動だ。

まさか、スタン殿がその事をご存知とは…さすが王族でいらっしゃる。

とにかく、その技は確かに習得済みだ。

やってはみるが、受け取り側のバリー殿に最も負荷がかかる。それを承知でもやる気はあるか?」



「やります!どうしても挑戦したい!!」

即答か?


おー。バリーどうしたんだ?

めっちゃやる気が漲ってるな。


じゃあ。俺も俺の出来る事を!



「これ『枇杷の果実酒』!!もしかして役に立つかも…。

確か魔力が増える筈だったと思うけど…」


思い出したんだ!

ドルゼ村の特産品だった枇杷。

確かに効き目があった気がするんだよ。


「お願いします」

直角に頭を下げるバリーに、首を傾げたよ。

だってさ。

頭を下げるのはコッチだからね!



とにかく、やってみようとなって。



「では。まずはスタン殿とルスタフ殿の魔力を吸収するぞ。

バリー殿に大きく負担がかかるからまずはコウの『枇杷の果実酒』を飲んで」

とレイバンから指示が飛ぶ。


いよいよだな。



バリーが一気に飲み干してた!



「では。いくぞ!」

レイバンが構えるとスタン殿の止めが入る!


何で?


アレ?

バリー??


『枇杷の果実酒』を飲んだバリーがしゃがみこんでる??


もしかして…『枇杷の果実酒』不味かったか?

うーん。。



え?


『水よ。零下の風を纏いその姿を現せ!

そして、その道を示せ』


急に立ち上がるとバリーが突然魔法を放った!!


はぁ?なんで!

一人でもう、始めちゃったよ?

レイバンやルスタフの助けは?



とか、俺が思ってる隙に。。



バリバリバリーー!!!



浮島から向こう岸へ、まるで手を伸ばした氷の手のように一気に到達して。



『氷の橋』はその姿を現した。



それは、あまりにもあっけなくて。

我々は、呆気に取られたままで。



ひとり。

バリーだけが。


「さあ。早く!解けないうちに!!」と落ち着いた指示を飛ばした。


慌てた我々が向こう岸に着いた途端。


バリバリバリーー!!


再び同じ音を立てて、『氷の橋』は崩れ去りその姿を消した。


未だ唖然とする我々の中でバリーだけがひとり。


笑顔だった。




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