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狐の頼み事

ーコウ視点ー


「だから、理由を言ってくれよ!」


俺が覗いた湖は、底の方までくっきり見える美しい透明な水だった。

確かに魚の影は見えなかったけどな。


『お前の作った『琥水の泉』は、この空間にある様々なものを癒した。

だが、湖だけはまだ命が戻らぬ。

その理由は今も分からぬままでな』


おぉ。珍しく狐の弱り顔とは!

(まぁ、毛だらけの狐の表情はあんま良く分かんないだけどね…何となくだよ!)


しかし、原因不明となると俺の秘策も今は出せないなぁ。

暴走とかするタイプじゃないし、まずは物事を良く見なくちゃな!


あぁー!

何だよ、その顔は?

しかも、ルスタフだけじゃないじゃん!!


バリーまでかよ。


拗ねる俺に常識人の声がかかる。


「とにかく、真っ暗な中では何事も捗りません。

翌朝という事でよろしいでしょうか?」


スタンさんが狐に丁寧に尋ねたるし!

(なんて真面目なんだ!!狐に丁寧語って…ちょっと笑っちゃいそうだよ…俺)


『お主が尊敬の念が足りぬだけだ。

まあ、良い。翌朝の事としてテントへ戻るか』

何?狐はテントで寝る気か?



はぁ?

何で俺のテントなんだよ!


あーー。

ほら、見ろよ。

コガモ軍団が許す訳ないだろ。俺の布団に入るのを!


もう。

睨み合いとか。


同じテントで寝てるレイバンが入りにくそうじゃないか。


「やめやめ。

もう、どっちも入ればいいだろう。めんどくさいなぁ。

とにかく、俺は眠いからもう寝る!」


無視して布団に入ると、後からコガモ軍団がいつもの様に俺の横に。足元の方に狐が丸まる。


ふぅ。お母さん役とは言え大変だぜ。

俺はそのまま寝たから、後から来たレイバンが呟いた言葉までは聞こえかなったが。


「ここで寝るとかシンド過ぎる。ほろほろ鳥の幼鳥すら最近変化し始めて大変なのに…」



翌朝。


俺は盛大に寝坊した。


いや、だってさ!

ふかふかしたアイツらと一緒に寝ると起きれないんだって!


言い訳を誰も聞いてないので、既に周辺の調査を終えた皆んなの報告を聞いた 。

ま、結論から言って進展なし。


狐のヤツが『だから、そう申したのだ!』とか怒ってたけど。


基本調査が終わったんなら、やっぱ俺の出番だろ?


ふふふ。

こんな場合に何をするかは理解してますよ。


偵察だろ?

船を出して…え?ダメ??

(小さな船を袋に入れてあるんだ。でも船より…船がすっぽり入る袋の方が気になるけど)


狐のヤツが却下したぞ。

むう。


ちょっと困ったよ。

素潜りとか無理だしなぁ。


何?

ルスタフ、引っ張るなよ。


はぁ?



振り返って俺が見たものは…一列に並んでだ亀とコガモ?


なになに?

偵察隊になりたいのか?


んー。でも危険じゃないのか?

やる気だな。

凄いアピール合戦に驚いていたら。


不安を口にすると、コガモがまたもや膨らみ始めたし。

まぁ、数じゃ亀に負けるからな。


対抗心満タンとか。

うちの子供は、意外にワンパクだわ。



「よーし。じゃあ位置について…よーい、ドン!」


せっかくだから、俺も盛り上げた。


よしよし。

うちの子供が頑張ってるんだ。


俺だって、秘策を試してみるしかないだろう。


俺が再び袋から取り出したのは『木彫り』


いやぁ、前からルスタフに作って貰った『魚の木彫り』が増えちゃってさ。


最近、袋が増産の趣味があるのか見るたびに『木彫り』も、食料も薬とかも。増えてるんだよ。


え?

木彫りをどうするって?


前に『木彫りの龍』を光るキノコにあげたら『水に入れるんだ』とか言ってたのこっそり聞いちゃったんだよ。俺…


だから、分かったんだ。

水に入れると、木彫りは生き返るって!

ん?

生き返るは変か?じゃあ…生まれる!かな。


俺が湖にバラバラ木彫りを撒いていると、ルスタフがため息と共に


「やめなよ、コウ」と止めてきた。

マジ声とかよせよ。

思わずビクッとしたじゃん。


「見てみろ。

木彫りは所詮木彫りなんだよ。ぷかぷか浮いてるだけだろ?

なぁ。もうよせ」



ルスタフに言われて、湖を見ると確かにおもちゃが浮かんでるだけの風景だった。

木彫りに何ら変化はなく、ぷかぷか浮いてるのは本当だった。


そんなはずは…。


ルスタフが木彫りへ手を伸ばして回収してる。

やめろよの声も出ないまま。


俺は、拾い集めるルスタフの背中を眺めていた。


そこへ一列に並んでだ亀とコガモ軍団が共に帰ったきた。


何だろう。

亀もコガモ軍団も疲れてるみたいだ。


沈黙が流れる。


せっかくのルスタフの作品を無駄にしただけなのか?

今にも泳ぎだしそうな姿なのに。


光るキノコでなきゃダメなのか…。

項垂れる俺の横にコガモが一匹やって来た。


つぶらな瞳で俺を見上げてる。

励ましてくれてるのか?


お前。

こんなに疲れた姿で。


俺は今度こそ袋の中から大切なのものを取り出した。


『笑み卵』の殻。


お前たちが生まれた証拠に、俺が手を加えた。

鳥って、殻食べるって言うし前世では卵の殻を肥料にしたって聞いたから。


食べるかなぁと、差し出すと。


コツコツ。


パタ?



ええーー!!


コガモ!!コガモーーー!!



俺は、必死に倒れたコガモを抱きしめた。

コガモ。


個々の名前は、わざと付けてない。

野生に帰る日を思って。


なのに。

なのにー!!!


トントン。


トントン…う、煩いーー!


肩を叩かなよ。こんな時に。


肩を叩いたルスタフの方を振り向き文句を言おうと顔を見て固まった。


胸に抱いたコガモがモゾモゾと動き出したからだ。


コガモ?

まさか…コガモ!!



コガモは、息を吹き返した。

と、同時にコガモ軍団とは姿を異にした。


何?

白鳥に変身とかそんな甘いものではない!!


オオガモ?


でも、親の背を抜くなんて。

馬も抜いて、これじゃ怪鳥の仲間入りよ?


「コウ、コウ!!こっちも見てくれよ。」

情け無いルスタフの声に湖の方を見ると。


マジか。



魚の姿が?

いつの間に??


「俺が集めてた木彫りにお前の粉がかかって。

突然、全ての木彫りに命が宿った」


動揺覚めやらぬルスタフの報告に俺の脳みそがついていかないよ。


じゃあ、俺の秘策は成功したのか??


『何ともお前には驚かされるわ。だが助かったのも事実。では『笑み卵』は預かるとするかの』


狐は、それだけ言うと『笑み卵』を受け取ってそのまま消えた。


ホッとする俺に次なる課題がーー!!



浮島から脱出する方法を教えてくれーー!!

狐ーー!!


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