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スタン視点

ースタン視点ー


あの日から、コウ殿一筋と決めてついてきた。

無論、後悔などあるはずも無く親衛隊隊長となった日から充実した日々。


怒涛の日々の中でコウ殿に付いて行くのが如何に大変かつくづく感じる日が多い。


が…今日ほどそれを感じた日はない。


「大丈夫だよ。オオガメが約束したから。

案内役だって、大丈夫って言ってるから!」



と、コウ殿の指差した方に見えるのは『橋』


この緊急事態を打開する素晴らしいもの…と言いたいがコレは…。


崖の上から沢山の亀が並んでいる。

要するに、橋は亀で出来ている。


いや。自分で言っていても馬鹿馬鹿しい。

そう、言いたい。


だが目の前の風景はそれを許さない。


まさに『亀の橋』である。


あ!

安全を確認しようとレイバン殿が手を伸ばした途端!コウ殿が橋を下りだした。

(飛び出した!と言うべきだな。はぁ…コウ殿…)


良かった。ルスタフ殿が真後ろでコウ殿を支えてるようだ。


最近のルスタフ殿は何か違う。

以前は、言わばバリー殿の意に従うのみだった。今は自ら積極的に動いている。


やはり、あの時か?

あの国境の街でレイバン殿に抱かれ気を失ったコウ殿を見つめる瞳には激しい後悔が見えた。

あの日からか…。


一人にした事の後悔。

自分の力が届かない悔しさ。


それは私にも覚えがあるもので。

あの日の従兄弟の姿を思い出す。

石になった足を引きずる彼の姿を…。


どう見ても不安定な橋を滑るように駆け下りるコウ殿に我らも続く。

あの『湖』を目指して。



私はこの場所にひとつの確信がある。

それは、この場所が『ボルタの主様』の湖であると。

そして、それをコウ殿に告げる事は許されないと。


あの荒れた天候。

コウ殿は山ゆえの天気の変化と思っているようだが、そうではない。

あの荒れた天候で確信したのだ。


間違いなく、主様の御意志だ。


考え事をしている間にも、不安定に思えた『亀の橋』を全員が降りた。

その場所は先程突然、湖に浮かんだ浮島で。


全員が降りた途端に、亀は消え去る。

唖然とするばかりの我々を余所に、コウ殿は何も無い方向に向かって手を振っている。


「おう!ありがとなーー!」と声を掛けて。


不思議なこんな風景にも慣れた。

何故なら、よくある事だからだ。

コウ殿は、何者なのか?


その答えを考えた事もある。

だが、結局何者かなど関係ないというか思いしか残らない。


振り返ったコウ殿は、ここでキャンプをしようと言い出した。

この浮島は、かなりの大きさがある。

充分可能だが。


躊躇いなど吹き飛ばす勢いで料理をされるコウ殿。


『味噌煮込みうどん』


夜になり冷え込んで来たのでそれは身体の芯から温まるもの。


全員が生き返って頬張っていると、


湖の上に、ポツリポツリと火が浮かんでいるのをレイバン殿が見つけ大騒ぎになる。



中でも一番騒いでいるのはコウ殿。

何やらヒノタマがどうしたとか。

(何かを恐れているが、我々からすれば『亀の橋』の方が余程恐ろしい)


主様のお越しの合図だと予想する。

予想を裏切る事もなく湖の上をゆっくり進んで来る主様のお姿を見つけた。


「な、な、なんだよ。

狐じゃないか。もう!脅かすなよ…」

かなり弱った風情でコウ殿が主様に怒っている。


普段はお姿を拝見する機会すら滅多にない主様。


全く気にしないコウ殿は、更に親しげに。


「ははーん。美味いものの匂いにつられたか?

良いよ。まだあるから食べてくれよ」


主様の前に置かれたうどん。

(まあ、一瞬で完食か…)



『コウよ。

久しいの。


お前の頼みは分かっておる。

『笑み卵』の事だな。


では。

吾からもその方達に頼みがある。

湖を頼む。


何も住まないこの湖を…』



うどんを頬張ったコウ殿はニコッと笑って頷いた。

(自信満々とはこの様子を言うのでは?)


コウ殿の様子に更に不安が募る。

だ、大丈夫だろうか。

いくら、コウ殿でも難しいのでは?と。



「いいよ。

俺に任せて!!」


コウ殿が胸を叩く音と、ルスタフ殿のため息が重なって聞こえた…。




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