トンネルの中で。
ーコウ視点ー
トンネルって。
ちょっと怖いイメージだった…
でも、ここって変なんだよ。
だってさ!!カラフルだよね。
ココ。
まるでスポットライトみたいな光が、あっちこっちにあって。
赤・緑・青(なんで三色?)
付いたり消えたり忙しいから、余計に眩しいし。
ほら、クラブとかのアレみたいなヤツ。
ここって…トンネルだよね?
全く何なんだよ、ここ。
細く小さくなる予定だったじゃん!
なのに前の方を見ても、ぜーんぜん細くも小さくもなってない。
虫用じゃないの?
(ハンミョウもう何処にも居ないしさ!)
このトンネル。
いったいどうなってるんだよ!!
って呟いてたら…
「恐らく主様の御意志」とスタンさん。
ゴイシ?
。。
碁石?
。
あ!違うよね!
し、知ってたし……。
ふぅ。
そ、それにしてもこの灯り、ちょっと鬱陶しいよな!ってルスタフに言ったら。
え?無言の業なの?
口を横に結んで首を横に振るばかりで。
アレ?
見るとスタンさんとバリーの様子もおかしくない?
これって…。
「レイバン。
なんで皆んなにスポットライトが狙い撃ちなんだ?
それもさ!
わざわざ色指定で狙い撃ちって。
どうなってるんだ?」
変な風景な訳。
だって、
スタンさんには『赤』
バリーには『青』
そしてルスタフにも…『緑』
それぞれに色毎のスポットライトが集まって。
眩しいよ。
え?
まさかの…踊るとか?
あーー。
俺は無理だから。
右と左の足がいっぺんに出るタイプだから!
「スポットライト?
。。。
まあ、恐らくこの灯りの話だよな。
だとすれば、この灯りにはそれぞれ特別な力を働いているようだ。
『赤』なら火魔法。
『青』は水魔法。
『緑』は風魔法という風にな。
まぁ、攻撃ではないがあの顔色はな。
だいぶ苦しそうだが、心配は無いと思うぞ」
レイバンの言葉に、改めてそれぞれを見れば納得。
我慢してる表情のように見えるけど、まあレイバンの言葉を聞いてちょっと安心。
でも…。
ちょっと。
気になるなぁ。アレ!
スポットライトから出てる灯りの側にコガモ軍団の姿が!!
三つのチームに分かれて、日向ぼっこのように嬉しそうなんだけど?
アレはいいの?
あ!!
一斉に灯りが消えたぞ!
いや、スポットライトだけじゃ無い!
もう。全体の灯りも全部消える事ないじゃん!!
トンネルに暗闇とか…
や、や、やめろよな!!
俺がちょーっぴりビビってると。
『灯れ。我が名に随て』イケメン声がした。
誰?誰の声なんだ??と思う間も無くひとつの灯りが灯ったよ!!
小さいけど。暖かな灯りの方をジッと見れば。
ん?
手のひらの上の火の玉乗せ?
あ、熱くないの?
ねぇ、スタンさん?!
(いつの間にそんな芸を!?)
「コウ殿。私の側にいて下さい。灯りを今、飛ばします」
何かイケメン力爆発中のスタンさんが
『飛べ』
とイケメン声で言えば…
ババババババ!!
灯りがトンネル内を飛び回り、あっという間に昼間のように明るくなった。
(スタンさん…イケメン声まで手に入れるなんて…
差別だーー!う、羨ましい…)
俺の心の声なんてまるで気づかないスタンさんが灯りを点け俺に微笑む。
くぅー。負けないし!!(成長期なんだよ俺。きっと…)
しかし、あの火魔法のやり方はゼンさんの魔法に似てるような?
あれ?
よく見ればバリーやルスタフの様子もちょっと違うような気がするけど。
「さすがコウ殿。
確かにレイバン殿の言われるように、このトンネルの色の付いたそれぞれの灯りには意味があります。
まさに、魔法力です。
そう。魔法の真髄そのものがあの灯りに込められている。と言えば分かりやすいでしょうか。
元々あった魔力の底上げなどと言うチャチなものではなく。
まるで別物の魔法力。
それを我々は今、授かりました。
ただ、少々受け入れに難がありましたが」
え?
あの苦しそうな顔はそのせいなのか?
た、確かに皆んなの様子を見ると、余裕のある大人みたい雰囲気なんだよな。
(なんで俺とレイバンだけ除け者なんだよ!!)
「コウ。
元々魔法が使えなければ意味がないからだよ。それにレイバン殿は全く別の力をお持ちで必要でないからだ。
決して、除け者なんかじゃないよ」
くっーー。
ル、ルスタフのくせに!!
よ、余裕の表情で心の中を読むなよ。
ちょっと、落ち込むだろ。
あーー。
俺にも大人になる灯りが欲しいー!!
(出来れば背もお願いします。。)
そんな願い事をしていた、その時!!
タタタタタ。
何?
何か聞こえるよ。
灯りに夢中の俺達に、後ろから何者かが走って来る音が聞こえて来た!!
それも…
ひとりじゃない。
レイバンが何処からか大きな槍を構えた。
「ここは狭い。
魔法を使うのも、気を使うのも合わない」
なるほど。
そう言えば全員が武器構えてるな。
緊張感が増す中で音はどんどん近づいて来る。
コガモ軍団も俺(お母さん?)の身体に登って準備万端だ(灯りが消えたらサッサと俺の側に戻って来てました!)
タタタタタタ!!!!
音が近づいて。。き、来たー!!
え?
何?
何かが一列に並んで走ってる??
俺は自分の目に自信が持てなくて、皆んなの顔を見回した。
良かった。
全員の口が開いたままで。。。
アレは…
亀?
かめ?
カメ??
どの字を書いても『亀』で。
ちっさなミドリガメっぽいヤツが一列に並んで物凄いスピードで走ってるように見えるけど…
脇目も振らずだよ?
ありえねぇだろ。コレ!!
亀って、
走るの?
チーターじゃないんだよ!!
亀なんだよ!!
亀…。
長い列は、まだまだ続いてる。
トンネルの出口に向かって走る姿に唖然としてると。
あ!
やると思ったよ。
コガモ軍団め。
またもや、くっついて走り出したよ。
ま、待てーーー!
亀→コガモ軍団→俺→レイバン→ルスタフ→バリー→スタン。
なんの列なん?コレ。
とにかく、怒涛の猛烈ダッシュで出口まで後少し。
よっしゃーー!陽の光が見えるぞ!!
俺達の出たところは…。
まさかの絶壁??
ええーーー!!
行き止まり??
(亀よ、どこ行ったんだ?)