ほろほろ鳥の『笑み卵』…
ーコウ視点ー
ポロンポロン。
ほろほろ鳥のヤツってば、簡単に卵を産みながら歩きまわっているよ。
鳥って歩きながらこんなに沢山の卵を産むんだろか?
しかも産んでるのは『笑み卵』!
五大食材はあっけなく見つかったけど。
(俺の両手いっぱいになってるし!)
でも。
これって食べられるのかなぁ。
模様がね。。
俺がジッと模様を見てたら。
「「「「あ!」」」
手から卵が零れ落ちた?
わ、割れちゃうよ!!
パカ!
ええーーー!!
わ、割れた??
しかも…卵からは、ちっさなほろほろ鳥なのか?
それも何で大勢なの??
ゾロゾロ並んで出てきたほろほろ鳥の幼鳥は割った俺の後を歩いて可愛いけど。
な、鳴き声が!
「「「あはは・あはは」」」とは。
マジか?
幼鳥までコレ?
「それよりコウ。
この幼鳥を食べる訳にはいかないだろ。
『笑み卵』には何が秘密があるのかもしれない。
でも。誰に聞けば…」とラオ。
た、確かに。
五大食材が見つかったーー!って喜んでたけどコレ食べれないよ!
鳴き声はアレだけど、つぶらな瞳はコガモだから!
絶対食べれない!!
俺、アレ見るの好きだったんだよなぁ。
コガモ。
癒されるしなぁ。
とにかく、泉の『点々の魚』に聞いてみようと尋ねたら。
『この性質の為、誰も食べないのだよ。
元々『ほろほろ鳥』は、他の手を借りて卵を割って貰い雛を帰すのだ。
食べるには、特別な何かがいるはず。
ただ、私には分からないよ』と。
なんと。
しかし鳥って変わってよな。
前世のカッコウの産卵を思い出したし。
でも。
誰に聞けばいいのか。
『笑み卵』の食べ方なんて。
皆んなで『笑み卵』を眺めながら唸ってるがいい案も出ない。
しばらくジッと見つめるばかりいたら。
「あのさ。
この模様がちょっと気になるんだよ」とルスタフ。
やたら卵を見比べてたルスタフが模様の違いについて説明した。
「模様には、2通りあるんだ」
言われて卵の模様を改めて見てみれば。
なるほど。
一つ目は毒々しいヤツだな。
カラフル過ぎるから、食べなくないヤツ。
もう一つは何やら絵画のようになってるなぁ。
俺は、最初誰か落書きしたかと思ったから。
「カラフルの卵からのみ、幼鳥は出てくるみたいなんだ。
さっき、コウが落とした卵は何個かあったけど、もう一種類の模様の卵は落としても割れなかった。
これってヒントにならないか?」
ルスタフ!!
すげーよ。
俺は感激して叫んだら、
「「「あはは・あはは・あはは」」」
懐いた幼鳥も笑って参加したし。
地味に疲れる。
お母さん鳥は、間違いなく俺決定だな。
一々真似してるしな。
さて。
ひとつヒントは貰ったけどその先が続かない。
絵画のような模様を全員で必死に見るけど、ひとつひとつ違ってるだけで共通点がないんだよ。
俺、前世でも謎解きとか、だまし絵とか苦手でさ。
チカチカする!!(目が疲れた…)
こんな時は、ブルーベリーだな。
アントシアニンだっけ?
目に効くーー!のは?
俺はブルーベリーのパイを袋から出して
「お茶にしよう。
根を詰めても目が疲れるよ!」
紅茶を入れて、と。
俺が袋からガサガサと出そうとしたら、幼鳥がな。
真似をしようと側に来てウロウロし始めて。
気が散るんだよ。
え?
失敗の言い訳??
そ、そ、そんな事ないし!!
紅茶を卵にかけたりしてないから!
紅茶色に染まって、更に模様が増えてちゃったよ。コレ。
濃淡が濃くなった卵の絵がさ。
ほら、
何でも顔に見えるってあるだろ?
アレ。
ふふふ。
俺には、ボルタの狐に見えたし。
え?
アーリアさん何、喜んでるの?
それだよ?ってどれの事?
えっ、狐か?
「間違いありません。
この卵の解決方法は、恐らくボルタの狐様にお伺いするのが良いかと」
アーリア様の一言で。
卵を持ってボルタへと向かう事になった。
(大丈夫かなぁ。紅茶の染みじゃないよな?)
但し、二手に分かれて。
ラクさんは、アーリア様とラオと一緒にムルゼアへ戻るんだ。
ラクさん曰く。
「『働かざる者食うべからず』ですよ。
まぁ、やるべき事も出来たしな」と。
アーリアさんも、神殿にそろそろ戻らなきゃと。
護衛にラオ。
俺達は、卵と幼鳥とボルタへ向かう。
って思ったけど。幼鳥もいるし。
遠いから、準備をしなきゃと一旦『田中食堂』へ帰る事にした。
点々の魚や、甕の爺さんに『また来るから!』と約束して『ムーラ』を後にした。
した。
したはず…。
めっちゃ、木々が混み合っていた森は、『昼下がりの散歩道』と命名したいようなのんびりした風景に変わってたんだ。
だから、安心して森へと入った。
(先にラクさん達が通り抜けてたし)
なのに。
見えてるはずの出口は、いつまでつかないし。
見えてるのにだよ!
まさかのだまし絵?
違うか。
戻っても『ムーラ』に着かず、進んでも見えてる出口に着かない。
詰んだよ俺達…。
だって!!
レイバンも上空へ飛び立てない。
魔法も?
(ルスタフもバリーも首を横に振るばかりで)
この風景。綺麗だけどまるで絵の中にいるみたいだな。
俺は、思わずそう呟いた。
だって。
美しい風景そのままで。
何処にも行けないなんて、『絵』でしょ!
そんな事を俺が呟いたら、スタンさんが急に大声を出した!
「それは!!」
び、びっくりした!!
スタンの顔色が悪いし、何か良くない事なのかなぁ?
「ボルタには、一つの伝説があります。
その伝説で、ボルタの地を治める主様が特別な力を使います。
それは、『絵を使って、道を繋ぐ』と言うものなのです。
主様の描く『絵』は、遠い場所と場所を繋ぐ事が出来る。ただ、その『絵』から出るには主様の他は出来ない…と」
ま、不味いじゃん!
それ。
じゃあ、もしこの森が主様の『絵』だとしたら
俺達出れないじゃん!!
唸る俺の横で相変わらず幼鳥が。
「あはは・あはは」と繰り返していた。