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開かれた森…。

ーコウ視点ー


笑ってくれよ。

俺の夢って、なんでこんなにファンタジーなんだ?


沢山のシャボン玉。

可愛い動物達。


そして、美しい牧歌的風景。



いやぁ。

そんなに欲求不満だったのか?俺…。


極め付けは!!


美人のお姉さんが俺の顔を覗き込んでて、目が合ったら笑ってくれた事だよ!!


モテない男の夢さ!

いいだろ!夢なんだから。



なんとなく、ルスタフやラオの声が聞こえる気がするけど気のせいなんだし。


あ!

皆んなも参加の夢か?


痛!


夢の中でも、ラオに頭叩かれたし!


「だから、いい加減戻ってこい。

現実逃避は良いから!」


現実って?


だってさ。


縮んだはずだし!

土の中に居たよな?


それにだ!

あの密集地帯はどこ何処行ったんだよ。


ミィミィミィ!!


ん?


この声。

聞き覚えがある様な?



「コイツらが『あるもの』の番人さ。

ほら、穴の中で襲ってきただろ?」

ルスタフよ。


こんな愛らしい姿じゃなかったじゃん。

目が悪いんだから。


「はぁ。だ・か・ら!!

縮んでたからそう見えたんだよ!」


このプレーリードッグみたいなのが?

物凄く懐いて、俺の周りで鳴いてるけど。コレ?


「封印を解いた礼をしているのだ。

お前が、あのシャボン玉を割ったからな」

え?お姉さん…

ちょっと、喋り方が…残念系か?


でも、いい!!

こんな美人の知り合いになるチャンス。絶対逃さないし!


よーし!カッコよくこの美人のお姉さんに自己紹介しなくちゃ。

コホン!


「えーとですね。俺の名前は…」


え?遮られた??

知ってるって。俺の名前か?


。。。


ふふふ。


ようやく。モテ期が来たんだな。


料理人は、モテると前世から言われた気がする(も、モテた記憶も無いが…)



あーー。

神様。ありがとうーーー!!


「聞いてるか?」


あ!不味いぞ。

完全に浮かれ上がってたよ。


も一度やり直して、と。



「初めまして。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


よっしゃ!

噛まずにやれたぞ。


「初めてまして?


まぁ良い。私も真似をしてやろうか。

子猿と申します。以後よろしくお願しく!」



。。。



ええーーーー!!!!


こ、子猿??


に、人間になったのか?


「煩いなぁ、お前は。

あれもこれも、仮の姿よ。

まあ良い。


お前の割ったシャボン玉はな。

『ムーラ』の精霊の眠れる姿よ」


えー。子猿とか。

あんまりだよ!!


せっかくのモテ期が。


あ!

待てよ。それどころじゃない情報が混じってたよな。

精霊の眠れる姿?


俺が首をひねって考えていると美人のお姉さんが(クッソー。子猿とか…ざ、残念過ぎる!!)説明し出した。


でも。その内容はかなりの衝撃的なものだった。



「『ムーラ』の最後は悲惨なものだったのだ。

強欲な人間達が、商人の姿を借り『ムーラ』へ入り込むと我ら精霊を攫い始めたのが始まりよ。


奴らはな。

『精霊は豊かな自然と共にある。』

その言葉の意味を勘違いしたのだ。


精霊がいれば豊かになると。な。


ふふふ。

結果。

この世界の精霊殆どが姿を隠す事になり豊かさは更に失われたのだ」



そんな事が…。


「攫われる精霊を助けようとした『ムーラ』の民は攻撃などの手段を持たぬ者らだ。

あっという間に殲滅された。

せめて、残った者らを助ける為と森がこの国を閉じたのだ。残った民を外へと逃してな。


そして精霊は最後まで残ったムーラの民によって、シャボン玉の中へ封印されたのだ。

ムーラの中の特別な力を持つ者達によってな。

だが、その者達までも命を落としたのだ。


そして、精霊はシャボン玉に封印されたまま月日が流れたのだ」


うーん。

かなりの内容で消化が追いつかないけどさ。

箸で割れるのに、何で誰も割らなかったのかな?


「箸で…それは想像外だったな。流石に…。

封印を解ける者はお前しかおらんのだ。

シャボン玉全てから、精霊を解放してくれ」


箸使いが上手いって事?

まぁ、元日本人だからな!!


よっしゃ!

では、と。


俺がやる気を出していたら、プレーリードッグがシャボン玉を差し出してきたし。

やるなープレーリードッグよ。


パン!

パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン!


フワフワしたいたシャボン玉全てを割った俺はやり遂げたとニヤリと笑って子猿?お姉さんへと振り返った。


まぁ。

中身が子猿でも褒められるのが美人のお姉さんなら。な!


えぇーー!!


子猿?お姉さん??


薄っすらと霞んでいるその姿に俺はギョッとした。


何か消えてゆくように見えたから。


「この森も、精霊も元へ戻ったのだ。

我の仕事も終わった。


このまま…消えゆくのみよ…」


ええ?


き、消える??


「村長!!

待ってください。お願いです。


このまま消えるなんて…」


ん?

ラクさん??


村長だったのか。この美人…。

じゃあ、人間だったのか??


「村長は、精霊と人間のハーフです。

特別な力を持つ一族の長であり『ムーラ』の長でもありました」


すげーよ。

美人の村長とか。

いい村じゃん!


「ふふふ。

最後にこんなに楽しい気持ちなるとはな。


ラクゥドよ。

我の身は、既に無いのだ。


精神体のみでこの森を守ってきたが、それももう限界。

森は開かれたのだ。



後を頼むぞ…」


最後の方は殆ど聞こえなかった。

でも、笑顔だったのは確かだ。


ラクさんも、「はい」と応えてたから。

分かったんだと思う。


美しい自然は、変わらないけど。

光が眩しいんだよ!!


だから、目から水分が出るんだな。

きっと…。



プレーリードッグが、一列に並んでお辞儀をすると穴の中へと消えていった。



「おーい。コウよ!

ルスタフよ!!」

遠くから呼ぶ声に、顔を上げると、


向こうの方に手を振る人影が!!


見覚えのある大木のその下にいる姿に気づいた俺は手を振りながら。



「ラクさん!!

甕の爺さんが待ってるよ。

さぁ、行こう!」とラクさんの肩を叩いた。


ラクさんはしばらくジッと佇んで、顔を上げると

「そうだな。」と答えて一緒に爺さんの元へと歩き始めた。



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