『ムーラ』への道
ーコウ視点ー
『ムーラ』の入り口へは、自称ラクゥドさんの案内で向かった。
向かったけど…。
この有様は?
木ってさ。あんなに密集して生えてるものだっけ??
獣道とか何処行ったんだよ。
アリンコ1匹這い出る隙間もないじゃん。
話し合いとか。会議とかしてるみたいだな…。
何でだろう…俺呼ばれないんだよ。
。。。ま、いいか。
俺はご飯担当だからだと(無理矢理)納得して今、昼ごはん作成中。
森のランチは、
『ハンバーガー!!』
いやぁ。懐かしいでしょ!
この響き〜。
パンに野菜とハンバーグを挟む。
この単純な作りは、様々な可能性を秘めてるんだ。コロッケや魚のフライ。
フルーツと生クリームでもいける!!
片手で食べれる手軽さは更にピクニック心を擽るよな。
ちょっと盛り過ぎておちょぼ口の人には辛いかもですが、自信作です!!
お?
大人の話し合いは解決したのか?
あー。ダメだったな。あの顔。
珍しく不安げな顔の自称ラクゥドさんが、何となく笑える。
とにかく腹は減っては。で皆んながかぶりついてます。
特にレイバンは、
「久しぶりのコウの料理の味は格別だ!
ふう!身体中に力が漲るー!」
と、叫びながら食べるのはそろそろやめない?
ちょっと照れるし。
それにだ!
これ以上力を増強したら、歩いただけで破壊活動しちゃうよ。いや、大袈裟じゃないから!
マジだよ。
しかし、森っていい香りがするよな。
思わず深呼吸したくなる。
ん?
木の陰に何か見えた?
俺が密集地帯へと近づくと。
顔を出したのは、小型の動物達で。
おお。
可愛いじゃん。
ムササビとか、栗鼠とか。
ワラワラと出て来て俺の頭や肩に乗って来たよ。
手のひらに乗った子猿は特に可愛いよ。
「おー。お前どっから来たんだよ。
こんなに密集してる木だから、道がないじゃん」
首を傾げる。
くっー。あざとい。
だが、負けを認めよう。かなり癒される。
悶えたのがいけなかったんだ。
子猿は、ぴょんと手のひらから降りると密集地帯の奥へと消えて行ったし。
それと同時に皆んな、散って行ったよ。
ざ、残念。
楽しい食後だと、振り返ってビックリ。
皆んなの姿が!!
また、迷子?何にもしてないのに!!
ガサガサ!!
大きな影がいくつも近づいて来る!!
まさか…闇影獣か!!
化け物みたいに大きい不気味なやつらが近づいて来た。
あ、危ない!!
逃げようと必死の俺に比べてアイツらはデカすぎるよ。
とうとう捕まった…。
1匹の大型の化け物が、俺を摘みあげたぞ。
ど、どうする?
誰もいないし。
レイバン!!
ルスタフ!!
ラオーー!!
思わず叫んだ。でも、誰の返事もない。
レイバン…護衛だと言ってくれたのに。
『これ、コウだよ』
耳が。耳が破壊されます。
デカイ声が俺の名前を呼んだ気がしたけど?
何言ったのか分からないよ!
化け物にも有名なの?俺…?
『まさか?ほ、本当に…間違いない。コウだ』
目玉が覗き込む。
囁く声にしたのか、耳がちゃんとしたよ。
相変わらず何言ったのか分からないけど。
よし、化け物め。
目玉なら弱点のはず…油断してるな。
俺は、目玉を手で殴ったよ。
ふふふ。やるときゃやるのさ!
と、思ったら痛がった化け物は俺を投げ飛ばしやがった。
あ、危ないーー!
な、投げるなー!
もうダメかと思った俺だったけど、また別の化け物がキャッチした。
た、助かった。
もしかして、この化け物はいい奴かも。
手のひらに乗った俺が見上げると、今度の化け物は背中に羽が生えていた。
まるでレイバンみたいだな。コイツ。
髪の色も似てるし。
来てる服っぽいのも。
。。。
ええーー!!!
まさかの化け物=レイバン??
じゃあ。さっきの化け物は?
あ!目を押さえて痛がってのはルスタフか?
なんで皆んな巨大化したんだよ!!
俺の不平不満がマックスに到達したその時!!
俺の目の前に、大きく変化した子猿が!!
『コウよ。お前が縮んだのだ。
『ムーラ』に入るには、この方法しかない。
コイツらは信じられないから、お前だけ入れてやる』
まさかの森の番人=子猿?
俺一人じゃダメだよ。
それに。
この間、心配かけたばっかりだし。
(もう、あんな顔して欲しくないんだ)
もし、俺だけなら諦めるしかない…か…。
ぐるぐると考え事して固まっていたら。
『お前を信じて、コイツらにも『ムーラ』への扉を開こう。忘れるな、我々はお前達を見ていると言う事を』
子猿。ありがとう。
俺が感謝でいっぱいでいると、
あーー!
急に縮んだレイバンに、手のひらの俺は急直下ーー!
もう、ダメだ。
地面に落ちたら助からないよ!!
あー。痛いよな。
うーん。地面は意外に遠いなぁ。
これがまさかの走馬灯なのか?
なかなか地面につかないし…。
「コウ。浸ってるところ悪いが、俺が受け止めたよ。ほら!」
薄眼でチラッと見たら。
また、毛がいっぱい?
レイバンの背中でキャッチ!
鷲の姿になって受け止めてくれたのか。
すげー運動神経!!
皆んなも無事縮んだみたいだ。
とにかく、縮んだ皆んなに再会した俺はホッとした。
目の前の密集地帯は、縮んだ俺達には姿を変えていた。
真っ直ぐ伸びる道。
空まで伸びているように感じる森の大きさ。
そして、沢山の森の動物達。
まるで違う姿の森が目の前に現れた。
あまりの展開に無言になる仲間の中で、アーリアさんだけが。
「綺麗ねぇ。
道も出来たし、さあ出発しましょう!」
と、相変わらずのマイペースでズンズン進んでるよ。
慌てて追いかける俺達を…
子猿が木の上で、見守っていた。