表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/191

迷子が増加中

 ーコウ視点ー


 ふう。

『コウの宿屋』は無事で、俺は場違い感いっぱいのゴージャスな感じ部屋に一人でいる。


 復旧作業に、街中総出で働いてるのに『怪我人』のレッテルを張られて。


 あー。元怪我人だっての!

 もう、レイバンの許可も降りたのにルスタフのヤツめ。


「ダメです」の一点張りでさ。

 看護婦長さんか!!


 まぁ。怪我した俺が悪いんだけどさ。

 だって、ルスタフの窶れ具合はこっちが不安になるほどで。

 勿論、ラオ達や冒険者さん達もな。


 だけど、元通りにならない人もいるんだから。

 我儘はダメだな。


 考え事がうっかり口から出てたその時、勢いよく部屋の扉がバタンと大きな音を立てて開いた。


 そして…


「そうね!その通りよ。コウ殿」と第一声!


 ええーー?

 アーリアさん?

 何か日焼けして逞しくなってるような?



「お久しぶりね。コウ殿の怪我の後を私がみてみましょうね」と言うとグッと近づいて手を翳した。


 なんとマイペースな。

 日焼けしても変わらないか。アーリアさんは。


「全然、問題無し!さぁ皆んなのところへ行きましょう。

 コウ殿は、気になっている事があるのよね?」


 亀の甲より年の功とは、本当だな。

 バレバレですか。


 でも、例え神殿の力を持つアーリアさんでも無理なんじゃないか?

 欠損した身体を治すなんて。


「ええ。私には出来ませんよ。

 でも。コウ殿なら可能なの。ほら行くわよ!」


 安静のはずが、ベットから抜け出して街中へとアーリアさんと駆け出した。

 すげー。

 行く先をもう把握済みとは。


 え?


「だから。コウ殿が知ってるかと思って。

 こっちじゃないの?」


 まさかの、闇雲か?

 ここ…何処だ?


 確か、安静が必要な怪我人は領主様が静養場所を確保したとか聞いたけど。

 俺も場所知らないよ?


「あら。困ったわね。

 皆んな復旧作業で大門の辺りにいるから街中なのに人影も無いし。」


 ふぅ。

 アーリアさんって凄いんだけど、どこか浮世離れしてるんだよな。

 まあ、そこが面白いんだけど。



 立ち往生してたら、小さな男の子がポテポテ歩いて来た。

 あの子じゃちょっと小さ過ぎて道案内は無理だよな。


「あのそこを行く男の子。

 道をお尋ねします」


 ええーー!

 アーリアさん。遂に幼子に道聞くか?

(しかも、口調が変だし…)


「おばちゃん誰?僕急いでるんだ」


 困り顔の幼子にアーリアさんが理由を尋ねると


「ママが居ないんだ。」


 あぁ。なんと迷子が増加したのか?

 ど、どうする?


「私達も一緒に探しましょう!」


 やっぱり。か。


 言うと思ったけどね。本当に俺達で役に立つのか?疑問だけどな。


 カインと言う名前の幼子は、避難の途中でママと逸れたらしい。


 避難途中と言えば、もう一週間も前じゃん!

 不味いぞ。


 ママは血眼間違い無し!!


 目的地が完全に変更された俺達の必死の捜索は、街外れまで来てしまった。


 もう、この先森ですけど。


 ヤバイよ。

 方向間違えたんだよ。


 キヌルの王都への道だよ。コッチは。


「大丈夫です。コウ殿。

 方向は間違いないですよ。それより休憩して昼ごはんにしましょうよ」


 森の入り口で。なぜかピクニック状態とは。

 なんでだ?


「おいなりさんを食べたいわ。

 ありますか?」


 おおー。珍しく指定とは?


 俺の自慢のおいなりさんだな。


 ジャーン!

 おいなりさんと御結びをシートの上に広げて。

 どっかの運動会みたいだな。


「コレ。美味しいね。

 お兄さん。誰なの?」


 え?今さらなの?


「おほん。お兄さんの名前はコウです。

 コウお兄さんと呼んで下さい」


 アレ?俺までアーリアさんに釣られて変な口調になっちゃったぞ?


「ふーん。貴方がコウかぁ。

 ママが噂してたよ。」


 え?

 ママ達のアイドルになったのか?


 料理人も捨てたもんじゃないなぁ。

 でも、この子のママは心配してるだろうなぁ。

 一週間も前から探しているなんて。


 うーん。

 こんな幼子が一週間も…アレ?


 ギ・ギ・ギーー。

 首が音を立てている感じにギクシャクした俺が、今一度カインを見た。


 目が。

 目が笑ってない??


 幼子なのに?

 まさか!まさかの俺の超苦手なヤツですか?


 ひぃーー。

 アーリアさん。なんで笑ってる?


「大丈夫ですよ。

 ほら、お母さんがお迎えに来たから」


 森へと目をやりながら、アーリアさんがそう言った途端。


 ぼぉ。


 小さな音が隣から聞こえて振り向いたら、そこに居たのは…。


 蛇?


 サイズが手のひらサイズですけどね。

 ちっさ!


『コウもひとの事言えない背なのに。

 でも、美味しい昼ごはんだからママが見つけられたよ。ありがとう』


 背のことを言われて、ちょっとムッとしてる間に蛇は母親の元へと。


 大蛇サイズのママは、こちらに来なくて大丈夫です!!

 ぜひそうして下さい!!



 あー。

 側に…。


『これは我が一族に伝わるもの。

 遣うと良い』


 大蛇ママは、尻尾に引っ掛けていた壺をぽいっとくれたよ。


 これも手のひらサイズ。


 ちっさな蛇は、尻尾を振りながら大蛇ママと森の奥へと消えていったよ。


 残ったのは、壺?


「良いものを貰いましたね。

 これは、水の精霊の一族に伝わる秘薬。これならコウ殿の望みが叶いますよ」


 も、もしかして。

 そうか。蛇…ありがとう。


 俺とアーリアさんが喜んでいると地の底から聞こえる地獄の使者の声がした!!


「コウ〜!!

 お前なぁ…勝手に居なくなってどれだけ心配したか!」


 やっぱりだ。

 地獄の使者じゃないか!

 ルスタフと言う名前のな!


「ごめん。でもさ、アーリアさんに完治だと確約して貰えたから。その上、水の精霊に秘薬を貰ったんだよ!だから、連れて行ってくれよ!」


 肩を落とすルスタフの背中を慰めるようにレイバンが叩いてるよ。


 まぁ。心配かけたか。

 ちょっぴり反省かなぁ。


 その後、傷薬に秘薬を数滴混ぜたら俺の望みが叶ったよ。

 マジすげーよ。秘薬!


 アーリアさん曰く。

 一滴でも、効くらしいよ。


 蛇…すげー。



 俺は、翌朝早起きしてこっそり宿屋を抜け出した。

 向かった先は


 森の入り口で。


 山積みにしたおいなりさんと御結び。


 しばらく頭を下げてクルリと振り向いて宿屋へ一直線だ!

 地獄の使者は気配を読むからな。

 これ以上、心配もかけられないしなぁ。



 急いでいた俺は、木の陰から沢山の目が見つめていた事に気づく事は無い…まま。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ