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前線へ…

ーコウ視点ー


国境の街と言うだけあって、高い塀で囲まれている『ルーゼン』は、例え闇影獣と言えど安易には手が出ない。


新領主のルザーニヤ様は、いち早く戦闘力のない住人を避難させようとしていた。

住人達もそれは、手慣れた様子であっという間に避難が始まった。



当然…俺も避難をと領主様は迫って来た。

何でも、キヌルのシュワイヒ王から直々に俺が来たら無茶しない様に見張って欲しいと伝言があったとか。


変だな。

俺って、料理以外は大して役に立たたない自覚があるから。ジッとしてるのになぁ。


でも。


今回ばかりはその忠告も聞かないよ。

あのラオの顔。


テーレントでボロボロになった姿が思い出されるから。スタンさんとラオこそ、無茶な戦いをする筆頭だよ!



しかも、今回はカリナもアーリアさんもいない。

治療班として、俺頑張る!!


引き止める領主様を振り切って、門の近くに到着した。

ピリピリとした雰囲気の中、場違いな俺がいる事を訝しむ冒険者に睨まれつつ。


作戦本部の置かれている門番の宿舎へと入った。


「「コウ(殿)!!」」


あ、不味い。

もう、ラオ達に見つかったよ…。


「あのなぁ。この戦いはちょっと見通しが立たないからって、俺言ったよな?

お前さん。『分かってる!』とか言ってなかったっけ?」


冷や汗が背中を!!


生返事とか言ったら怒るだろうし。

でも。

俺の薬草が今こそ役に立つ時だから。


絶対。必要になると思う。ホントはヤダけどな。


「はぁ。お前さんと来たら…。

じゃあ、約束してくれ!ルスタフとここに居て必ず前線へは来ない事。いいな!」


ラオの顔を見て、今嫌だと言えるほど俺のハートは強くない。

真剣な眼差しに、タジタジしながら頷いた。



「コウ殿。

我々も全力で戦いますので、どうか信じて後方待機でお願いします」


頭を下げるスタンさんに、何も言えない。

命懸けだと、薄々分かっているだけに。だ。


頷いた俺に、しぶしぶ納得したラオ達は前線へと向かった。

スタンさんが全体の指揮を取るらしい。


さすが元無双騎士団の団長だけはあるよ。

貫禄も充分だし、戦力配置もしっかりしてるらしい(ルスタフからの受け売りだけど…)



ドオーーン!!



スタンさん達が、部屋を出て直ぐに地鳴りのような音がした。

ルスタフが「始まったな」と呟いていた。


貴重な光魔法の戦力をこんなとこにと、ラオに抗議したら


「だからだ!!」と反対に怒鳴られたよ。


薬草の用意だけはしておこう!


傷薬

(結構沁みるらしいから、三段階にしたある)


気つけ薬

(コレ出したら、ルスタフが『ラオ殿。これは強力な武器になります!』とか言ってたし!何でだ??)



強壮剤

(体力・気力・魔力の全回復)



まだ、他にも体力回復にと片手で食べられる物を大量に用意した。


コレを届ける役目は、宿屋の元冒険者達が買って出てくれた。


でも。

ズズン!とか


ガタガタとこの小屋自体が揺れたりとか。


叫び声なんて、何回も聞こえるんだ。

その度に、ラオだったらとか。皆んなの無事が気になって…。


だけど、事態は全く良くならない。


いや、良くないどころかむしろ悪化してるかもしれない。


何故なら…

闇影獣の攻撃は、昼夜関係なく続いているからだ。




あれから二日経つ。




交代制といは言え。

戻ってきた皆の疲労はかなりのもので。


まるで、ヤケクソの様に強壮剤を飲んでドアを飛び出して行くのを見てるしかなくて。


その夜、俺も夜更けになりウトウトしかけたその時!


「た、大変です!

敵が増強しています!大型が多数現れて…」


飛び込んで来た伝令の腕は、片方もぎ取られていて…そのまま、倒れた。


慌てた俺が駆け寄り薬草やら強壮剤を飲ませると、容態は安定したが。

腕は…。


落ち込む俺に


「コイツの命が助かったのは、この薬のお陰だ。

腕より生きていれば何とかなるさ!」


ルスタフの言葉に頷くも。

このままでは、ジリ貧だと俺にもルスタフにも分かっている。


「コウ!頼むから変な事を考えるなよ!!」

ルスタフの焦った声に。


「俺はここから動かない。

だから、ルスタフが皆んなの様子を見て来てくれないか?」


危険を承知の頼みだ。

無理ならと言いかけたところで。


「絶対、動かないと誓えるか?」

かなり悩んでから、ルスタフが低い声で念を押した。


俺は、真剣に頷いた。

流石に理解してる。俺が動けば皆の足手まといだと。


ルスタフが剣を取り出すと、部屋を出た。

「絶対動くなよ!」と念を押して。


薬草部屋となったこの場所に、先程までは怪我人が溢れてた。

だけど。


今は戦える者はフラフラになりながらも、前線へ。


そして、戦えない者は避難場所へと去って行き、残るは俺一人になった。



袋から、薬草や料理を補充する以外する事もないまま。


ガタン!


心配で外の物音に耳を澄ましていたら、誰か帰ってきたみたいだ!!


「ルスタフか?

皆んなは?だいじょ…」


固まった。


何故ならドアを開けたのが『新種』だったからだ。



『見つけたぞ。お前さえ。

お前さえいなければ、この世界なぞ俺のものだ!!』



え?


何故?



ここまで来るなんて。

このまま、捕まったら。


逃げようとよそ見をしたその途端!


痛!!


新種が俺を横抱きにした為、爪がお腹に刺さった。

血が出る程の痛みに、頭が回らない。


動けは、激痛で逃げ道すら探せない。

俺を囮にする気かと思えど、こんな痛みとか今まで感じた事もない俺では痛みに耐える以外何も出来なくて。



「うぅ。」


呻き声が上がってしまった時、


「「「コウ!!!」」」


叫び声が、確かに聞こえた。


では、もう外なのか?

でも「大丈夫」とすら声も出ないままで。


『コヤツの息の根を止めさせたくなければ、武器を捨てよ!!』



万事休す…。

俺は、段々とボヤけてゆく意識の中で後悔が押し寄せる。


やっぱり。避難しているべきだったか。

頼むから、武器を捨てないでくれ!!


そう願うも、ラオ達の返事は聞こえないままで…。



??


あれ?幻聴か…

(とうとうダメなのか?)



「遅くなったな。今助けるぞ!!」


確かに聞こえた。


その懐かしいその声は……、




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