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甕の中は?

ーコウ視点ー


「大丈夫よ。恐らく本人の体力など頓着せずにここまで引きずって来られたんでしょ」


アーリアさん。

あのー。言葉に棘が見えますけど。


もしかして、目線の先は青い魚ですよね…多分。


『ほお。何か臭うと思ったら、女神セレーネ臭いオバハンがいたぞ。

こんなオバハンほっておいて、サッサと出発するぞ!

時間がないんだ!』


御屋敷の医療部屋に寝かそうと、オリドさんがトックスさんを担いで来た。

勿論、俺も急いで後からついて来て。


心配だったから。

突然、スイッチを切ったかの様に崩れ落ちたから。

そしたら、なんとこの非常識な甕はピョンピョンと後をついて来るんだ。

その上…アーリアさんと喧嘩とは…。

以外に強いよ。アーリアさんって。


バリー達なんかちょっと距離を置いて、見守ってるもんな。


「コウ殿。

病人の側に甕なんて置いてはダメですよ。

この甕、生魚までいるでしょ。

不衛生ですよ!」


『な、なにーー!

何という生意気なオバハンだ。

だから、シワシワな顔になるんだ!』


「ふふふ。

魚には、表情なんてないから必要ないのね。

皺こそ、人生の歩みの証し。

そんな事も分からないから、操っている人間の体力を見極め損なうんですよ。

ラクゥ…トックスさん。

かなり体力が消耗しています。

暫く静養させると良いでしょう」



おー。やっと巻き込まれ感の強いこの修羅場から去るキッカケ発見!


「じゃ俺は、精の付く料理を作って来ます!」


後ろから何か聞こえた気がするが、知らんぷり!



さてと。

俺は中華粥を作る事にする。


薬膳になる粥にしよう。

沢山の木の実や、干し貝柱も入れてお粥を煮る。

勿論、薬草入りで。


もう一つは、桃や林檎を使って生ジュース。

搾りたては、栄養いっぱい!


お盆に乗せ、医療部屋へと向かおうとして甕が台所の入り口にいるのが見えた!


び、びっくりしたよ。

ついて来たのか。


ん?

反省してるっぽい気がする。


『急いでいたのだ。

言い訳だが、あやつの事はオバハン…いや人に任せて我と来てくれ!

どうしても、お前が必要なんだ!』



えーー!

俺。ちょっと怒ってるんだ。

トックスさんを巻き込んで…、


あ、あれは…。


「コウ。

出来たら、行ってやってくれ!

コイツの急いでるホントだと思う。

俺自身の中にコイツか入ってた時、色々なコイツの気持ちが俺にも見えてさ」


扉に寄りかかりながらも、起き上がったトックスさんは前と同じニヤリと笑ってた。


良かった。


ホッとしたのも束の間。

俺の足元にびちゃびちゃ と、音がして振り返ると…。


か、甕から水が溢れていた?


『さあ。行くぞ!』


水は、生き物のように伸び上がって、俺の真上に!!


俺を掴むと、甕の中へポイっと、な。


ああ!!

俺…えら呼吸まだ、習得してないんだぞ!


無理だから!!


水の中へ行くには肺呼吸は、向いてないから!!



意識を失う寸前に、ちょっぴり目を開けるて見たものは甕の底がない。

甕の中は、どこまでも深い。


まるで泉のように。




ーアーリア視点ー


「気が済んだかしら?

ラクゥドさん」


肩で荒い息をしながらも、未だ倒れてないとはその精神力の凄さに、噂は本当だと実感したわ。


「三文芝居もアーリア様にかかれば、化けの皮も剥がれますね。

しかし、何故止めなかったのです?」


真っ青な顔に脂汗のラクゥドさんの質問に、首を横に振る。


「貴方と同じ理由ですよ。

でも、商売の鬼と呼ばれた貴方とも思えない判断でしたね。

身体を貸すのは、命の危険があると理解してましたか?」


後ろから近づいたオリドさんがラクゥドさんを抱きとめ、ベットへと運ぶ。


側テーブルには、コウの作った『中華粥』がある。

心配は要らないわね。


「彼は、これでいて頼まれると嫌とは言えないんです。ましてや、からの故郷の頼み事。

しかし、コウ殿お一人では大丈夫でしょうか?」


そう。

故郷…。


「ちゃんと巻き込まれ体質の人が一緒に行ったから大丈夫だと思いますよ」


オリドさんにしては、珍しくキョトンとした顔をしていた。



頼みましたよ。


ルスタフさん。



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