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コウのおねだり?

ーコウ視点ー


おねだり…良い響きだーー!


スレッドやロイスに会って、義父さんに渡す物を用意してたら珍しくスレッドが改まって礼を述べてきたから、びっくり!!


「何か望みがあれば、私の持てる力全てで応えよう。何かあるか?」


珍しいスレッドの言葉にいっとき、固まったよ。

いや、小さい頃は結構無表情のスレッドが怖かったからな。


では…と。


俺は今悩んでる事があるんだ。


そ・れ・は!



納豆!!!



袋の中じゃ、あんまり増えないんだよ。

納豆菌にとって、幸せな場所じゃないんだよ。

きっと。


で。


スレッドの返事は?


「いいでしょう。プレストン様辺りが、最近ご無沙汰で拗ねておられるので丁度いいです。

あの方なら短期間で造れると思いますよ」


おおーー!

テンション上がるし!


俺はスレッドを見送ってから、パナヤ陛下に会いに行ったんだ。(つけあがって次のおねだり予定、さ!)


「あら。コウ殿から頼み事なんて初めてね。

何かしら?」


陛下って。。。


ウキウキのポイントが良く分からないと、いつも思うよ。

俺の頼み事でテンション上がるとか?

いい人過ぎて、詐欺に遭いそうだな。


「はい。実は船をひとつお借りしたいのです」


あ、誤解してるぞ、あの顔は。


「港町に戻るのには、いつも通り定期便に乗る予定だとスタン殿から聞いたけど?」


「いえ。その先も船で帰ろうと思うのです」


珍しく眉間に皺を寄せて陛下の言葉は。


「それはダメ」だった。


海をかさ登ってキヌルやボルタの近くまで行く方法は昔はあったらしい。

今は無いその理由は、まぁ想像通りかなぁ。


「陛下。俺は川で渡し船をしようと考えているんです。ヨーゼストには沢山の名産品がある。

特に鮮魚系が流通する為には、交通経路の確保が必要なので」


お。

ちょっと盛り過ぎ?


本当は…寿司だよ。

魚料理を食べたいからに決まってるだろ!!


前世の俺はとにかく回る寿司に行きまくってたし。煮魚や鮭フライなんかも外せない。


あ、しまった。

陛下を置き去りに妄想が。


「くくく。もう頭の中では予定が出来てるみたいね。

では、川を船で行くなんて冒険に耐えられる船を貸しましょう。

船頭付きでね!


ただし!!

無理だとスタン殿や船頭が判断したらその場で船を降りる事。約束出来るかしら?」


俺は大きく頷いた。

けど。

陛下のきっぱりとした言い方に、お付きの人が慌ててる。

まぁ、常識から言ったらあり得ないからな。


俺も前世の記憶が無ければ絶対やらないし!



翌々日。

船出の前に積み込んだ荷物はかなりのもので。

船は重さがいるから丁度良いと言われたけど欲張り過ぎだよな。


オリドさんが!!!



なんでも、乗船の費用負担をしたらしく陛下も賛成したみたいで。


仕入れたねぇ。こんなに売れるのかなぁ。



「ふふん。まあ商売での勘は例えコウ殿と言えど

負けません!

それに、置いてけぼりが多くて残念過ぎます。

今回ばかりはご一緒します!!」


張り切るオリドさんに、押され気味になりながら船は出航した。



陛下の貸してくれた船は、ちょっと予想外で。

かなりの高性能らしい。


船底には5つも部屋があり、台所や食堂は下手で。


船上の見張りは、船員と、言う名のピピランテ御一行様にお願いしてます!


と、くれば船長はゼンさん。

二人ほどピピランテから来てくれたザッパさんとルルドさん。


元々船乗りの家で育った根っからの海男。

日焼けした肌がマルスでは珍しいよ。


俺と一緒に来てくれたのは、

スタンさん・ウェスさん・ナット君・オリドさん・バリー達4人。バリー達に見せるの楽しみだなぁ。



『田中食堂』!!



ゆっくり進む船が、港町の横にある川から入る時が来た。

じっとりと手に汗をかく。


今までこの世界に無かった事だから、スタンさん達も不安そうだ。

バリー達の距離がやたら俺に近いのは、万が一の時の為かな?



そんな事を考えていたら、船はあっさり川に入ったよ。


皆んなの肩から力が抜けた。


良かったよ。


そして、ここからが俺の勝負だな。

まだ、皆んなに出していない『納豆』!!

それを試食して貰う!


最終的には…

これを広める事!


それは、元日本人の俺に課せられた義務だろ。

臭いがヤダと、言う人の為にまずはネギや辛子。

生卵・とろろ芋など。

薬味をこの世界バージョンで用意したんだ。


「皆んな!昼ごはんだよー」と、叫んだ。


笑顔いっぱいの皆んなが食堂に入った途端、固まってます!!


バリー?それって脂汗?

え?ルフタフは直接的だな。鼻をつまむとか。


「あったかご飯にかけて食べてね!」


立ち止まって、席に着く人が居ないよ。

まさかの展開。


食べても貰えないのか?

こっちの世界には全く無い臭いだからなぁ。


「コウ殿。ぼ、僕は頂きます!!

コウ殿の弟子ですから!!」


ナット君が物凄く勢いをつけて席についたけど、大丈夫かなぁ。


とにかく、一口食べれば分かる。

弟子だから、きっと気にいる。


「い、い、頂きます!!」

最近、俺の真似をして『頂きます』をしてるナット君。


パクン。


モグモグモグ。


静かだなぁ。

これって、ご飯の風景じゃないよ。

それに、俺の目指す食堂の風景からはかけ離れてる。



諦めるか。


もうちょっと納豆を加工して。



「ナット殿。無理をなさらずに」

ウェスさんの声に、ハッとした。


無理…。

やめよう。


俺は、ナット殿の前に立ち笑顔で

「ありがとう。でもね、む」

「美味しい!考えられない!!こんなの無いよ。

こんな臭いのにネバネバして、気味が悪いのに!


美味しいーーー!!


信じられない。ウェス。食べてみよ。

必ず美味いから安心せよ」


あ、ありがとう。

ナット君の言葉は、胸に響くよ。


料理人になって、久しぶりの難敵だったから。

知らないものを、食べる。

これってば、難しいからな!


でも。

ナット君。

最後の方。

言葉がメチャメチャになってるよ!


あ!

それなのに、ウェスさんも席に着いたよ。


「う、美味い。マジか…」


掻き込んでるよ。

あぁ。本当に美味しいんだ。な。


次々と席に着いては「うま」とか「マジか?」とか。

賞賛と驚きの声が上がる。



俺は改めてスレッドに頼んだものに思いを巡らせた。



「『田中食堂』の横に納豆小屋を建てて欲しい。」

その他、乾燥部屋とかもねだったんだ。



船底の食堂で盛り上がっている時に、船上では見張りのザッパが倒れていた。



だが、納豆で盛り上がる食堂の面々は誰もその事に気付いてはいない…が…





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