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親父の甲斐性は?

少し戦闘シーンがあります。


「お父さんと呼んでくれないのか?」


尋ねる度に、少し悲しそうな顔をする息子の姿にまたもや、早まったかと思う。


出会ってから2年が経ち、懐いてくれる可愛い息子は自分の想定外中の想定外で。

出自から辛い思いをさせるなら、と。

自分の過去に囚われ結婚も子供も諦めていた俺の目の前に現れた突然の宝物。


親バカと言う言葉の意味をしみじみと実感する俺の望みが高望み過ぎるのか…それとも…。


「コウ。こんなのはほっておいていつものオヤツ作りを手伝ってくれ」


ガイの割り込みに息子の顔に笑顔が戻った。

まだ、10歳くらいだろうに何故だか料理が好きでガイの宿屋に来る度に台所へと潜り込む。


正直…面白くない。

首都は、様々な店があるのだ。

偶に来た時くらい、ねだって貰いたい。


「醜い。これが我が主人とは。

コウが絡むと途端にポンコツになる」


いつも通り、呆れた顔のスレッドに突っ込まれたよ。


でも。いつかは。


遠い先でいい。

失った過去を忘れて「父さん」と言ってくれる日を俺は諦めない。


いつか……






バン!

バンバンバン!!!



はっ!

俺の肩を叩くガイに、一瞬眠っていたと気づいた。

馬上で寝るなんて久しぶりだ。

こんなに追い込まれるのは、初めてだが。


「おい。馬上で寝るなら少し休憩をと…」

「休憩は無しだ。

必ず、奴らはその裏をかいて小さな村を狙う。

最近では、守り石すら掻い潜る術を身につけているらしいではないか」


会話に割り込むと、馬を先へと走らせる。

闇影獣はかなり戦略を変えてきたのだ。


物量作戦はもう過去の事。

小型の闇影獣を使って、村や町をまず撹乱してからトドメを刺す。


対応している我々の動きを見張る部隊すら存在するとスレッドは言い切った。

知能の高い新種の影響と。


キヌルとヨーゼストから闇影獣が消えた影響だろう。

鉄壁の防御のテーレント。

無双騎士団のボルタに比べて、マルス帝国のなんと手薄な事だ。


そこを更に狙われているのか。


マルス帝国は面積も大きく、我々のみではカバーしきれない。

この国の貴族には戦う力もなく、騎士団は首都の攻防で手一杯。


最後の希望は…


思い耽っていたら!!



闇影獣!



「右!!

おい、前方からライデンだ。

気をつけろ!!」


ガイの言葉に、隊員は扇状の形態に広がる。

ピンポイント攻撃が得意なライデンに対抗する為だ。


攻撃をガイが仕掛ける。

俺は、後方で待機だ。


ほんの数時間前にライデン15体を倒したばかりで魔力不足が否めない。

焦りは禁物。

戦いにあっては、これが鉄則なのだ。



ガイも疲労が溜まっているようで、クラスタがガイの前へと躍り出る。

彼は後方型の戦闘スタイルなのだが、ガイにだけは別らしい。


あの事件をまだ引きずっているのか。


5体のライデンを二人が倒して、あと1体となったところで、ヤツが出た。


新種。


不味いぞ。

ヤツは闇影獣を増やす能力があるのだ。

ここで増員されては。


俺が前に躍り出た。

ガイのヤツが騒いでいるが関係ない。

元々王族とか、隊長とか関係ないのだ。


ただ、コウが笑って暮らせるマルスにしたかった。逃げてることに向き合える覚悟をくれたコウの尊敬出来る父でいたかったのだ。

(親父とは単純な生き物なのだ)


身体の魔力を手に集める。

魔力量では、ピピランテのゼンに次いで多いのだ。


まだ、あと少しいけるはず。


来た!!!


素早く動く小型が大量に溢れ出た。

厄介な。

ライデンはとにかく倒したが、小型を刀で斬って捨ててもワラワラと増えるとは。


息が。

息が上がり出す。


本格的な魔力不足だ。

でも、今の状況では休む訳にはいかない。


ガイの方にも、またもやライデンが現れていたからだ。


味方に怪我人が増える。


「下がれ!!

怪我した者を後ろ下げて、戦うぞ!!」


新種がニヤリと笑ってみえた、その時!!!!



「喰らえーー!!」


突然、思いもかけない方から何かが飛んできた?


ドドドドーーー!


え?

なに?

小型が倒れてゆくのがみえた

いったい…

何が投げ込まれたんだ??


なるほど。

スレッドの姿がみえたので、納得した。


コウのところから戻ったのだな。

と、なるとコウが何か作ったな。

それにしても…

スレッド。

大剣を繰り出して、斬って捨てまくってる。

ありゃ、怒ってるな。


あとで説教か?

はぁ。

でも、正直心強い。

安心は、疲れを連れてくる。

ふらっとした身体を剣で支えてやっと立っていたら、


なんとまたもや増員が!



新たな敵の数はあり得ないもので。

しかも、何故だか動物までいるような?


新種の新たな作戦に顔から血の気が引く。

もう、ここまでか。


「いけー、ゼラブ部隊よ。敵を倒せ!!」

あの声は?


ロイス?

まさか、これは味方なのか?

ゼラブ部隊とは、コウがテーレントでやってのけたと聞いているあのゼラブなのか?




それから、数分で勝負はついた。

何故なら、新種はそうそうに撤退したからだ。

ヤツは、負け戦はしないからな。



スレッドと合流した俺達に、ロイス達がテントを張り食べ物を用意した。

久しぶりの馬上以外での食事だ。


これは…?



「梅干しと貝柱の炊き込みご飯のお握りです。

こちら梅酒です。

見張りは先程のゼラブ部隊に任せたので大丈夫です!」


ロイスから感じる自信は、恐らくコウから伝授されたゼラブ部隊の実力故だろう。


美味い。

身体に染み渡る感じから、体力・魔力全回復。その上、全ての怪我すら完治ときたか。


また規格外を。

コウのやつ。。。


「そうですよ。父親の癖に息子に心配させるような戦い方をするからです。

正気とは思えない。

あの時、魔力は枯渇寸前で。

もう一度使ったら…」


(こう言う時は、聞こえないフリが一番だ。とにかくコウのご飯が先だ!)


次のお握りの中身はなんと魚とは。

煮込んだものか?


「佃煮ですよ。これがまた、お握りにあうのです。ほら、こちらは海藻の佃煮で」



美味い、

食べたことのない味ばかりだが、途端にファンになる。

全員がものすごい勢いで食べていると。


突然笛の音が!!


ロイスか?


「あれこそ、コウの発明品ですよ。

貝笛・草笛・竹笛など。ゼラブ部隊はあの音に反応するのです。

コウ殿特製『ミックスナッツ』があれば完璧です」


「スレッド様。

それはちょっと語弊が。

あの訓練に耐えなければならないのですから!」


訓練?

コウが考えたのか?


だったら…


「あのですね、コウは何もキツイ訓練を考えた訳ではありません。

それよりも、言っている事自体が意味不明で。

恐らく感覚的なものらしく。

。。。

理解するまで大変でした」



俺も、ガイも、いやいやクラスタさえ大きく頷いた。

ま、コウだからな。



「あの投げたのは何だ?」と、俺。


「あれはですね」と、

スレッドの語ったものは、意外なもので。

何でも『見えない島』から持ち帰った『カザンバイ』を加工したらしい。


コウ曰く『目潰し』と言う事だが、効果は先程確認した。


どうも、口から入った瞬間に倒れるとか。

しかも、人間には被害なしだとか。


また、コウらしさを発揮したのだな。

嬉しいような、誇らしいような。



だが、本当はただひたすら料理を作る事を楽しむだけの日々であって欲しい。



そう。

いつかまた『田中食堂』で、だ。



その為にもやるべき事をするまでだな。

いよいよ時は近づいているような気がする。


義姉上の予測さらたその時が…。



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