ヨーゼストに帰り着いて…
ーコウ視点ー
いつの間にヨーゼスト到着?
島は?船は?
。。。
ま、酔わないからいいか。
とにかく、気がつけばもうヨーゼストの客室のベッドの上だったんだ。
しかも、がぶり寄りでパナヤ陛下が覗いているから、マジびびったよ。
心配掛けたみたいだな。
んー。でも、あの島に渡ったところからの記憶がないんだよ。
最近、こういう事が多いよな。
。。。
ま、いいか。
俺の無事を確認してパナヤ陛下が見せたいものがあると言うのでついて行くと城の後ろに巨大な何かを発見した。
て、これなんだ?
こんなのあったっけ??
「いいえ。コウ殿が戻られて『火タコ』を頂いてお渡ししたら、ある朝突然建っていたのです。
ですが、我々もこの中には入れません」
あのタコ名前付いたんだ。
うーん。俺も付けようと思ってたんだけどな。
その名も『赤タコ』
でもさ、今それをバリーに言ったら「『火タコ』で決まりましたから!」ってさ。
慌ててるし…。
ま、いいか。
それにしても、この巨大な壁。
うーん…壁の向こうは一切見えないよ。
だって、空高く聳え立っているからな。
壁にはたった一つ扉があるだけ。
それ、小さくね?
いやぁ。俺だって屈まなきゃ入れないよ?
真っ白な扉。青い壁。
どっかの観光地っぽいけど。
大っきすぎで。
「コウ殿。扉を開けて下さい」
パナヤ陛下が頭を下げた。
え?
なんで俺?
無理無理無理!!
開けられる訳ないっしょ!
何言ってるやら。
この国の王様が無理なのに、なんで単なる料理屋が?
え?タコ取ったから?
あのね、俺ってば漁師じゃないよ。
偶々で。
パナヤ陛下……目をキラキラさせて見つめるのやめてくれー。
はぁ。
負けたましたよ。
でも、ガッカリさせるの辛いなぁ。
「大丈夫ですよ。コウ殿なら出来ます」っゼンさん。
ゼンさんてば、赤い髪でイケメンに変身してから笑顔が増えたよな。
いい事だけど、何もここで使用しなくても。
ひ、引き下がれない。
よし!
俺も男だ!やるぞ…ガチャ。
。。。
か、簡単にノブが回ったんだけど?
本当にコレ開かなかったのかなぁ。
んーいいのか?
このまま開けてとキョロキョロしてたら、ゼンさんの笑顔に再会!
(行けって事なのね…イケメンってちょっと卑怯だよな。笑顔で押し通せるんだから…)
俺がもう少しと扉を僅かに開いた途端に、身体が吸い込まれるような感覚があった。
ん?クラクラするぞ。
頭を振って、身体をシャキッとさせる。
グニャグニャする感覚が、取れないし。
暫く下を向いて、と。
はぁ、やっと戻ったぞ。
あれ?
ここは、何処?
大迫力の目の前の風景は、見たことも無い巨大な螺旋階段。
階段の左右に広がる部屋には、ビッシリと詰まった本棚・本棚・本棚!!
図書館と言うには、あまりにも巨大なコレ何?
その上…皆んな居ないじゃん!!
付いて来る予定だったよな?
え?
いや、ドア何処だ?
まさかの…脱出口消滅か?
『ようこそ。時の番人の図書館へ。
ここには、この世界の全てが詰まってる。
その為に、お主ひとりを招き入れたのだ。
さあ、知りたい事は何だ?』
キョロキョロしてたら、頭の中から声がした。
お?黒猫。お前も招かれたのか?
足元をウロウロしてた黒猫を抱き上げて、ちょっと考えてから答えた。
知り合いがいて(猫だけどな)ホッとする。
知りたいこと…ね…。
「特にないな」と、俺。
いやぁ。だって何かを悩むタイプじゃないから急に聞かれてもな。
『ない?。。。。お前ならそうか。
ソワソワしてどうしたのだ?』
「いや、外の皆んなが気になるから出てもいい?」パナヤ陛下の顔がチラつくし。
『ふははは。扉を開くと良い。
お主の望む図書館が理解出来た。誰にでもいつでも開かれているもの、か。
なんと、幸せな図書館だ…』
あー!頭を覗いたなぁ。
コレ見て、思い出していたんだよ!
前世の東京にあった素敵な図書館を、な。
ふわふわソファとかあって。
キチンと並んだ本棚は見やすくて。
明るく光があちこちからさして。
外には、桜が満開で。
あ!それどころじゃない!
扉がせっかく復活したんだ。
開かなきゃ…
「コウ!!」
アレ?ぼんやりしてたらしく考え込んでいた俺の目線に飛び込んで来たバリーの顔見てびっくりした!!
おおー。
皆んなも来たね。
いやいや。
驚いた本当の理由は、ですね。
皆んなが急にいた事じゃなくて。
コレ。
風景がですね。
改めて「ええーー?」と叫びたいよ。
ナニコレ??
あの螺旋階段はどこ行ったんだよ!!
あのスゲーやつ。
それに、重厚な本棚無いし!!
それだけじゃないよ!
全面改装とかいつの間に?
グルリと見回すその風景は、俺の記憶の図書館に何処か似てるような…。
突然の図書館の変身にちょっとついて行けず、身体の震えが!
と、思ったら。
腕の中の黒猫が『ニャー』と鳴いた。
腕の中の温もりに、気を取り直してパナヤ陛下の方を向いた。
優しい瞳がこちらを見ていた。
(お母さんみたいな目線だな…有り難いけど…)
「陛下。ここは時の番人の図書館で、この世界のあらゆるものがあるそうです。
でも…読んでいいかは…」
と濁して説明をしたら。
「皆様、ようこそ。
ここは生まれ変わった『世界図書館』です。
いつでも、どなたでもご覧になれます。
但し、一部閲覧禁止の所もあります。その場所のドアはカギがかかって開きません」
誰?
あの声は確かさっき、頭の中から響いていたものだよな。
前方から来たような?
アレか?
あの真っ白なマントとか羽織った仮面の人?
明らかに変ですよ。
間違いなく何かを間違えたパホォーマンスだ、な。
え?ええっーーー!
パナヤ陛下が跪いたのを見てここにいる全員が跪いるし!!
まさかの偉い人なの??
あ・の・格好でか??
『その様な事は必要ありません。
私は、この図書館の番人です。みなさんを受け入れます』
驚きの表情のパナヤ陛下が御礼を言う。
「感謝申し上げます。我が国だけでなく、全ての国の者に代わって今一度御礼を申し上げます」
仮面は、そのまま奥に消えていった。
陛下はその背中に頭を下げていた。
そして、振り向いて「さあ、みなさん。番人様のご好意を無にせずたくさん本を読んで下さい」と声を掛けた。
暫くすると歓声が上がり本棚へと次々と人々が散っていく。
ヨーゼストの人。
ピピランテの人。
それにバリーやオリドさんもいた。
皆んなのワイワイとした声が響いている図書館に俺もクスリと笑いがこみ上げた。
俺も探そうっとワクワクしてたら…?
ん?
あれは…。
「お久しぶりです。コウ様。お願いしたい事があり参りました」
ス、スレッド??
その後ろはロイス達だよな?
大人びた雰囲気のロイスに、ようっと、手を挙げると。
深々頭を下げられた?
「お久しぶりです。コウ」
大人過ぎる。友達が突然、大人の仲間入りとか。
ショック。
ちょっとスレッドの声は聞こえなかったし。
後ろにいるビゼー達も同じとか。
あの時、大人になる本を頼めばよかった…かな…