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ラオ視点

ーラオ視点ー


[闇影獣に異変あり。充分注意されたし!]


クラスタからの手紙は、いつもキナ臭い。

しかし、今は状況が悪い。


この有様だから。


「だから、僕はコウの後をこっそりつけようって言ったんだ!!

見つかって怒られたのは、兄上のせいだろ。」


怒れるブルスタッドは、殊の外珍しい。

ましてや、兄であるラシェットに怒りの矛先を向けるなんて…良い兆候だな。


出掛けにラドフオード殿下の言われた言葉通りになってくるとは…やはり狸親父だな。あの人も…。



『いいか。あの子達には決定的に足りないものがある。自分の中に眠る意思や未来に対する展望とか。まぁ言葉にするとちょっと陳腐だが希望だな。

うちの息子はその点、最高の子なんだよ!!

あの子の側にいれば必ず己を見つけ出せる。俺がそうだったように、な。

特にブルスタッドは兄離れをする良い機会になるだろう。

苦労をかけるが頼んだぞ。』



コウが絡むとあの二人は時折喧嘩をしてみせる。

それを見たコウが何を思ったか、飴をやたらと二人に渡すのはよく分からないが…。

まあコウのやる事はだいたい良く分からないからな。


コウに後からつけていたのを叱られて、ようやく帰途に着く気になった二人を連れてマルス帝国の領土に入った。


そして、驚くべき風景を目にする事になる。

小さな村がいくつも壊滅していたのだ。


そう…あのクラスタからの手紙の通りだったのだ。


マルス帝国では小さな村を狙って闇影獣が襲っていると。

隙を突いての攻撃は、後手後手に回っていると。

クラスタからの手紙には、溢れる悔しさがあった。



キヌルには今や闇影獣が出ない。


この驚くべき事実は世界中に広まった。

恐らくは、『ナナルの真山』の禁足地の解放の為だろう。

王太子のお二方もその事で、考えるべき事があったようだ。


先を急ぎながら進んでゼラフ村へと着いた。

ちょうどムルゼアまで半分の距離となったところだった。

まだ、無事であった為暖かい歓迎を受けて、夕食を食べる。

有り難い。

野営が続いていた我々はホッと息をついた。


「村長。こんなにして頂いて申し訳ない」

と、俺が頭を下げると。



「やめて下さい。この国の騎士様達は命がけで我々を守って下さる。

騎士様達なら大歓迎ですよ」と。


騎士を名乗っての旅に少し罪悪感を感じる。

二人のご身分を明かす訳にはいかず、スレッドからの指示で騎士を名乗っているのに。


親父達が、ハーフを集め闇影獣との戦いをしていると聞いている。

もちろん先頭に立つのは、ラドフオード殿下だ。

その事が広まっているんだと予想した。


翌朝、弁当まで貰って旅立ちとなる。

おや、ラシェット殿下が村長に進みでた?


何を…?


「村長。世話になった。

これは、特別な食べ物だ。『飴』と言って栄養のあるものだ。

何かの時に食べると良い』



何と…あの『飴』を人に渡すとは。



挨拶を済ませて、再び街道を進んでいたその時、怪しい物音がした。


あの村の方向だ。

振り返った我々の目には煙が何本も立ち上がっているのが見えた。


もしや…あの村に…



急ぎ戻る我々の目に、映ったのは闇影獣に蹂躙されている村の様子だ。


家は壊され、更に燃えている家も多い。

では…住人は?


村長は!!



闇影獣を王太子お二方の光魔法で一瞬で倒すと、我々は村人を捜索した。

だが、何処にも姿が無い。


「ここだ!!」

ブルスタッド殿下の声に慌てて駆けつけると、蔵があるだけだった。


蔵にいるのか?


「違う。ここだよ!ほら」


指をさしたところには、床が歪んで見えた。

何?

ブルスタッド殿下が土を払うようにすると、土の中から取手が現れた。

もしや、地下への入り口なのか?


取手を持って開けようとすると、ブルスタッド殿下が「か、固い」と。


殿下に代わって俺が取手を引っ張る。

うーん。こりゃ固い。


気を込めて、今一度手に力を入れた!


ガ、ガタン!!


扉が開いて中を覗くと、怖がって震えている村人達が沢山身を寄せ合っていた。


おぉ、こんな場所に。

(後から聞けば、スレッドさんからの指示らしい。どの村でも避難場所を確保してるとか。

さすが…やっぱり最強宰相は伊達でないなぁ)


村人を見つけて、胸をなでおろす。

良かった。命だけは無事だったよ。


まぁ、村はメチャクチャなんだけど…


俺たちに気づいた村長が「大丈夫だ。騎士様達だぞ!た、助かったんだよ!」と村人に声を掛けた途端に大歓声が上がる。


地下から出てきた村人が村の様子に絶句していた。

村の半分は、破壊されているのだ。

村の様子に肩を落とす村人達に村長は『命あっての物種』と慰めていた。



王太子お二方が、何やらボソボソ話している。

もしかして、留まるおつもりだろうか?


ん?

あれは何だ?


「村長。これは我々の作った『守り石』だ。

これを村の四隅に置きなさい。闇影獣から村を守ってくれるから」


え?


なんと、いつの間にそんな凄いものを…。


我々の手伝いを断った村長に別れを告げ再び王都を目指して出発した。


村長曰く。


「騎士様達が来てくだされねば、村は全壊したおりました。皆無事なのです。

ですから、こんな事に負けませんよ!」


強いなぁ。忘れていたよ。

ギルドで学んだことを。


俺はお二方に『守り石』について尋ねると驚く答えが返ってきた。


「あれは、元は『光石』だよ。

村の様子を見て、『守りたい。この村を守りたい』って強く願ったら『守り石』に変化していたんだ。

たぶん、これが母上の言われた我々の生まれた意味なのかもね」


ええーー!!


サラッと、爆弾発言を。


前を行くお二方の背中が少し大きくなった気がした。


その後、村の再建の最中、村長の配った『飴』のおかげであっという間に村が元に戻ったらしいと噂に聞いた。





『飴』最強伝説の完成だった。





ところが、その後オヤジの元へ戻った俺が蜂蜜と蓬饅頭を差し出して『飴』を要求され…

「無い」と返事をしてゲンコツを食らった。



やっぱり…ツイテない…



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