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先祖返りとは?

ーコウ視点ー


火のない生活なんて…。

ショックを受けていたら、突然ゼンさんの身体が傾いだ。


「ゼンさん!」


呼び方も虚しくゼンさんはそのまま倒れ込んだ。

その姿は、完全に意識を失っている人間のものだ。


カリナが急いで治癒をする姿は、真剣そのもので。


どうしたのだろう。

一向に、カリナがゼンさんの容態について話をしないが。


あ、振り向いた。

顔が、なんか暗いような…。まさか…。


「申し訳ありません。私の治癒能力では彼を助ける事が出来ません。

恐らく…」


何?恐らくなんだよ!


何がゼンさんにあったんだ??


「彼は先祖返りかと思います。しかもかなり色濃く現れているようで」


「「えっ!!」」



何?先祖返りって何か不味いのか?

ゼンさんの容態と関係あるの??


「コウ殿。

先祖返りとは、太古の昔にいた精霊の血を引く者達の事です。

太古の昔、火・土・風・水・空の5種類の精霊が人々と混じり合って暮らしておりました。

その中には、人間と結ばれる者もおりました。

ところが、人間は突出した能力を持つ精霊を恐れて彼等を忌避したのです。


その後、精霊の姿はこの世界から消え失せました。そんな人々に恐れをなし、混じり合った人間は迫害を恐れて隠れ住むうちに絶えたとの言われております。


ですが、そんな人の世界にも時折先祖返りと呼ばれる精霊と混じり合った人間と同様の特徴を持つ者が現れます。


彼ら特出した能力を持つ事で知られています」


へぇー。

精霊ねぇ。見てみたいるような気がするけど、無理なんだな。

あれ?

でも、じゃあどうしてゼンさんが倒れているんだ?特出した能力とか、いい事があるだけだろ?



「それが、そうでは無いのです。

彼等は、自分を保つ為に加護のない場所では生きられないのです。

ゼン殿は、恐らく『火の精霊』の加護を受けているはず。

ここは、火を封じられている場所のようです。

ですからこのままでは…」


このままでは…って!!

何を言ってるんだよ。ゼンさんに限ってそんな事ある訳ないじゃないか!


ほら、今すぐに起きるよ。な!


ゼンさん…


何でそんなに真っ白な顔色で寝てるんだよ。

起きてくれよ。


いつもの優しい笑顔で、


「大丈夫ですよ。コウ殿」って言ってくれよ!



そんなの。

そんなのヤダよ。


「どうにもなりません。封じられた我々に出来る事なんてな」


俺はカリナを遮って怒鳴る。


「いやだね!俺は絶対諦めない。きっと何か良い方法があるはずで…」


同情してような表情でカリナが俺の肩に手を掛けた。

でも、俺はそんなカリナを振り払って袋の中に頭を突っ込んだ。


何か、あるはずだよ。


何か。


焦る俺は、袋を無闇にガサガサとひっくり返す。

あー、こんな時整理整頓の重要性が身にしみる。


何か、何かあるはず…ハ、ハ、ハックション!!

ズズー。


し、しまった!


仕舞ってあったハーブが鼻に入った為に、クシャミが。

コロコロと、色んなものがーー!

あぁ。


必死に搔き集める俺に後ろから声が掛かった。


「コウ!

あれを、あれを見てくれ!!」


バリーか?

何?指差す方を見ればゼンさんの周りが赤いような…あれは何だ?


近づけば、ゼンさんの側に大量の火石が集まっていた。

恐らく袋から飛び出したんだと思うけど。

あの量は?


んー。あんなにあったっけなぁ。


ジッと見つめてたら、ゼンさんの真っ白な顔に微かに赤みがさしているような。

カリナが気づいていち早く駆け寄っていた。


「なんと。火石のお蔭で微かにではありますが、ゼン殿は命を繋いでおります。ただ、いつまで保つかは分かりませんが」



とにかく、ひと時の猶予は得た。

この隙に何か…。


「コウ殿。二手に別れましょう。

バリーと私は村の周りを調査して参ります。

カリナ殿とコウ殿には、ゼン殿をお任せしたい。

恐らく、猶予はあまり無いかと」


スタンさんの指示に全員が頷いた。

バリーとスタンさんは、物凄いスピードで走り去ったよ。


んー。いつもは俺のせいでゆっくり走ってたのか…すげー。


「コウ殿。ゼン殿のお力になれず面目もありません。何かアイデアはありませんか?」


「えっと。ゼンさんには火が必要なんだよな?」


と、尋ねたら頷いた。

だとすれば前世の記憶を頼りにアレにチャレンジしてみるか。


この世界の歴史の本にも、アレをしていた記録は無いし。

よーし!


俺は、土の上に絵を描こうとしてハッとした。

そうだ。ルスタフがいないしカリナは不器用っぽいし。


自分で作るか。


『火起こしの道具』


擦る。単純だからこそ良いかなぁと。

とにかく、やってみる。

絶対無理と言うか心の声は、無視!



出来上がったソレを必死で擦る。

上手く棒は回るんだけど、力不足はやむなしで。

藁を近くに置いて、すぐ火の付く準備も万端なのに上手く回らないよ。


だ、ダメか?


ん?

カリナがにっこり笑って「理解しました。お任せ下さい」って道具を奪っていったよ。


おいおい。

女の人よりは、俺の方が力があるに決まってい………。


何?その凄い勢いの棒の回転。

もう、付くよね。こりゃ間違いない。


火が出ないのが不思議なくらい勢いがあるし。

んー。無理なのか?

あ!そうだよ。酸素、酸素。


ふー。ふー。と息を吹きかけ。アッ、アチッ!!


火が、火が付いたーー!!必死に藁を少しずつ足してと。

久々に見る火は綺麗で。


ボーってなった俺に代わってカリナはテキパキとゼンさんの治癒に当たる。当然火を近づけて。


火石にも火が付いて、焚き火ほどの大きさに火が育った。

びっくり。


焚き火の横に寝かされたゼンさんの顔色がようやく人間のソレになる。

くっそー。

目から汗かくぜ!


火だから、だな。

カリナ!!わ、笑うなよ。


その後、調査してたスタンさんとバリーが帰って来た。

火とゼンさんを見て固まるも、笑顔が溢れてた。


ゼン殿良かった。


二人の心の声は、ちゃんと聞こえた。


安心した顔の二人から報告があった。



村の周りは完全に封印され、人の気配もまるで無いらしい。家の中にも人の気配は無く恐らく封印される前に無人の村だったと結論付けた。


家の中へ入り竃に火を移そうと試すも全く付かない。それどころか火はそのまま消えた。

この家はおかしいとなり、広場にテントを張りその中にゼンさんを寝かした。


テントの中には、常に火石が燃えていてゼンさんを暖める。カリナが言うには明日な朝には目を覚ますだろうと。

良かったよ。


俺は、藁の片づけをしてたら灰が目に入った。

綺麗な灰なんだぁ。


そうだ。

今日は、山菜蕎麦でも作ろうかなぁ。


灰はアク抜きに使うから、な!


蕎麦作りをしながら、余った灰を見つめてたらひとつ思いついた。

よーし、ちょっとうろ覚えだけど作っちゃおうかなぁ。『赤酒』。

灰を使って麹菌と発酵させるはず…よし、と!


ん?

火の中に何か見えたような??


アレ何?


ひぃーー。


で。出て来たーー!!


ウゴウゴ…


モジャモジャと列をなして何か来る!!


なにーー!

火なんだよ?燃えないのか?


ソレは、火から溢れ出した『燃える蜘蛛』だった。

俺は完璧にドン引きして後ずさる。

怖すぎる。


燃えてるんだよ!

無理でしょ。



「大丈夫ですよ。ソレは火の精霊の仮の姿ですから」


えっ。


振り返った俺の目に、 赤い髪のイケメンが立っているのが見えた。


どなたでしょう。


「ふふふ。ゼンですよ。コウ殿、分かりませんか?髪の色と目の色が変わっただけですから」


いやいやいや。

何?

髪の色変わっただけじゃイケメンにならないでしょ!

糸目は、どこやったの?


あーー!


「ゼンさん、大丈夫なの?」

ちょっと声が震えちゃったよ。


「コウ殿のお陰で命拾いしました。ありがとうございます。もう大丈夫ですよ」


笑みが、男前でつい見入ってたらみんなも駆けつけた。みんなは家の中の調査してたから。


燃える蜘蛛の姿は既に無かった。

見間違いかなぁ?


「コウ殿。ここですよ」

ゼンさんの差し出した手の甲に、あの『燃える蜘蛛』の刺青みたいなものがあったよ。



もしかして、アレってイケメンの元?

俺にも、何か来てイケメンに変身したりして。


妄想してた俺は、話し合うん皆んなの声は聞こえなかった。


だから、


スタンさんの脱出方法が無いって言う深刻な声に気づかないままだった…。





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