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ゼンの秘密…

ーゼン視点ー


『見えない島』


お伽話だと思ってた。

まさか本当だとは…しかも自分がそこへ同行するなんて思ってもみなかった。


『光貝』を手にして、始めて実感が湧いた。

祖父母から聞かされていた謎の島の話。

ヨーゼストでは、知らない者もいない。


ところが。

波はかなり高くてあっという間にコウ殿が船酔いでダウンしたのだ。

コウ殿の言う『シンキロウ』は全く理解出来なかった。

だからこそ、コウ殿だけが頼りなのに、だ。



しかし…この様子では2日3日くらいしか持たないだろう。

だとすれば今、引き返す決断をする時だ。


それにしても、スタン殿が同行され助かった。

あの冷静な判断力。

彼の前職(無双騎士団隊長)を思えば当然だが。

彼の目配せに頷き返せば、改めて帰還の話を始めたようだ。

船を操る責任者の俺は、前方から目が離せない。

風魔法も同時に使っているので後方の話し合いは聴こえてこない。


何だ?


スタン殿の叫び声とは…まさか…


振り返った俺の目に飛び込んできたものは…


何だあれは?

異様な街の姿?なのか??


目の前の景色に無言になる。

もしや、これが謎の島の姿なのか?


異様な大きな箱なようものが乱立する変な街。

あれは何だ?

鳥のようなものが空を飛んでいるが、見たこともない姿だ。

本当に生き物なのだろうか?


その時、景色の一部が宙に浮いてのに気づいて、コウ殿の話を思い出していた。


『シンキロウはさ、本当にある景色とは違うんだよ。なんて言うかさ、幻の景色で。

でも、確か何処かの景色が逆さまになったり浮き上がったりするんだよ。

うーん。説明が難しいなぁ。』


これが『シンキロウ』なのだとすれば…


「カリナ殿!急いで『光貝』を!

これが『シンキロウ』に違いありません!」


慌てる我々の前に、先程から突然高くなった波が襲う。

バリー殿の風魔法が船を安定させるが、十分ではないようで、苦手の風魔法で何とか『光貝』を当てる。


あ、当たったのか?


見たこともない風景が、二つに割れ始めたその時突如割れた風景そのものが我々に迫ってきたのだ。

あの箱のようなものが、巨大な何かだと気づくが迫る風景に逃げ道を探した。

どこに、何処へ逃げれば?


咄嗟に頭を庇う自分の耳に、


ピーピーと


おかしな音がした。

何だと疑問に思う間も無く


ドボン!と。まさか水音か?


もしや、誰かこの風景に恐怖して海に落下したのか?


すぐさま、次のドボン!との水音がした。


急ぎ船を停止して、海を覗き込む。

誰だ!誰が落ちたんだ??


コウ殿?バリー殿か!


コウ殿だ!!


だが、既にスタン殿がロープを投げ込んでバリー殿が片手で掴んでいる。恐らく、バリー殿が助けに飛び込んだのだな。

その胸にはコウ殿がいる。

抱えられたコウ殿の意識は無いように見えるが。


甲板の上に二人を引き上げて直ぐにカリナが診たが異常は無いようだ。

ホッと息をつくも、驚くべき事態が起きたのだ。



それは、コウ殿の『顔』だ。


それは18歳のあどけなさの抜けた大人のものでまるで見た事もない表情だ。


しかも。


『ココハ?』とカタコトで話す有様で。


バリーの顔色が真っ白になる。

知らない人間でも見るように自分(バリー自身)を見つめるコウ殿にショックを受けているのだろう。


記憶か?まさか…。


カリナ殿は、首を横に振っているから海に投げ出された時の怪我では無いようだ。

ホッとした。


では…と見れば。


「タナカコウイチ」と、全く違う名前を名乗ったりする。

しかしコウ殿が違う名前を名乗っだ途端に頭を抱えて座り込む。

頭痛のようだ。

カリナ殿が急いで治癒にあたるも、苦しげな表情は変わらない。


波が船を揺らす様に、ここはカリナ殿に任せて船の操縦に戻る。


見れば、目の前に島が迫っているではないか!


そう。


あれが『見えない島』なのだろうな。恐らくは。



後方で、バリーがおかしな臭いのモノを投げ捨てようとした時、突然コウ殿の意識が戻った。

胸に臭いモノを抱えてこちらを見てキョトンとしていた。


いつものコウ殿だ。


宝物を抱えたように、笑顔になったコウ殿をバリーが近くで観察していた。


不安は理解出来る。

あの眼でまた…と思えば無理もない。


が、コウ殿は相変わらずで。


船から見える島は、近づけど接岸するには潮の流れが難しい。

このままでは、上陸は出来ない。


ところがだ。


甲板に突然現れた道具でコウ殿が接岸するではないか。

コウ殿の起こす奇跡には慣れているとはいえ、先程の見知らぬ顔のコウ殿を見た後では気になる。


あの道具。


そう、あの幻から現れたのではと、疑っているのだ。


では、何故使い方を知っているのか?


コウ殿は…一体。


今は疑問を胸の奥底に封じ込めてテントを張る。

もう夜が迫っているからだ。


すると、スタン殿が、小声で。


「何かある。 あの幻の景色もこの島も何処かおかしい。十分注意してくれ」と。


翌朝、スタン殿の予想通りあっという間に満ち潮になり海岸が消え去る。

潮の満ち引きが早すぎる!!

この異様な森に入る準備も整わないままに歩き出す我ら。


案の定、迷いの森だったようでグルグルと歩き回るだけで何処にも行き着けない。


悩む我々に出したコウ殿の道具に湧き上がる疑問を再び封じ、ゆっくりと進む事に成功した。


何という道具だろう。

『ホウイジシャク』の凄さに舌を巻いたその時、コウ殿がある物を見つけた。


そ、それは!!!



『神の門』と呼ばれるもので。

滅多に人の目に触れる事もないが、触れると別の空間へ移動するらしいと。


中には戻れない者もあると聞いた事がある。


遅かった。

既に進む以外道はない。

やがて見えてきた風景は、ありきたりな村のもので明らかに怪しい。


だが、村の広場でコウ殿が座り込む。

疲れているのだろう。

ここはバリー殿に任せて探索へと向かった。


実は、確認したい事があったからだ。


それは火魔法。

どうしても、確認がいるのだ。


『我に従いその姿を現せ!』


手のひらに本来なら火が姿を現わすのだが…。


呪文が効かない…な。

やはり、か。


傾いでいく身体を引き立って、広場に戻ると事実を告げた。


驚く仲間に告白出来なかった。


自分は、普通の人間では無いと。

昔、この世界に存在していた火の精霊を先祖を持つ者。


だから、火魔法を封じられると長く持たない。と。


火こそ命なのだ。


しかし、痩せ我慢は長く続かない。

話し合いの最中…

俺の身体が、地面へと崩れ落ちた。



身体から力が抜けるのを感じながら…。

コウ殿の叫びが聞こえた気がした。



が、返事をする事は既に無理だった…






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